ゼロクリック攻撃でiPhoneに侵入し、WhatsAppやSignalなど暗号化アプリの中身まで筒抜け
スパイウェアの代表例が、イスラエル企業NSO Groupが開発したPegasusだ。サウジアラビア政府に批判的な論調で知られ、2018年にトルコのサウジアラビア総領事館で殺害された記者ジャマル・カショギをめぐっては、その家族を含む周辺の人物がこの製品で標的にされてきた。
スパイウェアは通常、利用者が一切操作しなくても成立する「ゼロクリック攻撃」という形で送り込まれる。多くの場合は、例えばiMessageやWhatsApp経由で画像付きメッセージがiPhoneに届く。攻撃者は敵対する国家であることが多く、ソフトウェアに存在する1つ以上の欠陥を突いて攻撃を組み立てる。
スパイウェアが危険なのは、いったんiPhoneに入り込まれると、利用者がすることをすべて攻撃者に見られたり、聞かれたりするからだ。WhatsAppやSignalのような暗号化されたアプリを使っていても、この状態は変わらない。
一般的なユーザーに危険はないが、経営幹部や重要な交渉の関与者は標的
110カ国に及ぶ通知は「不安をあおるように聞こえる」ものの、一般的なiPhone利用者にとってリスクではない。アップル製品の管理とセキュリティを手がけるJamf(ジャムフ)で法人向け戦略担当シニアマネージャーを務めるアダム・ボイントンは、そう話す。
「金銭目当てのスパイウェアは精密に作られた道具であり、人が標的になる理由は、その人物が何者で、何を知っていて、誰と話しているかにある。こうしたツールがゼロデイ脆弱性に頼るのは、iPhone側の防御が固く、攻撃者にとってより安上がりな侵入口が残されていないからだ」。
ロックダウンモードを有効にした端末が侵害された事例は、アップルが把握する範囲では確認されていない。ボイントンは、これこそアップルによる通知と利用者側の対応がともに機能している証拠だとみる。
一方でボイントンは、狙われる相手がジャーナリストや活動家だけにとどまらないとも警告する。「金銭目当てのスパイウェアは費用対効果で動くため、標的一覧には経営幹部や重要な交渉に関わる人物、特権的なアクセス権を持つ人物が次第に加わっている。こうした通知が業務用端末に届いた場合は、その瞬間から直ちに、届いてから数秒間にはセキュリティインシデントとして扱うべきだ。端末は初期化せずに保全し、ロックダウンモードを有効にした上で、専門家に助けを求める必要がある」。
iPhoneのロックダウンモードを有効にし、iOSを直ちに更新する
iPhoneを狙うスパイウェアに対しては、予防こそ最良の防御線となる。自分が標的になりうると考えるなら、iPhoneでロックダウンモードを有効にしておくとよく、この設定を使えばマルウェアが端末に到達することはほぼ不可能になる。
同時に、iOSのアップデートは公開され次第すぐに適用することが重要で、更新を放置すれば、敵対者がその隙を突いてスパイウェアを仕込む余地が生まれる。
すでに標的にされたと思う場合は、iPhoneをいったん電源から落として入れ直すことで、スパイウェアの動きを止められることもあるが、それで完全に取り除けるわけではない。端末に入り込まれているなら、iPhoneそのものを手放すのが最善の手段だ。


