2026.08.15 08:00

出入国の新制度を導入した欧州、国境での混乱続く ETIASの開始はまたも延期か

北マケドニアからギリシャに向かう国境検問所で、欧州連合(EU)の新たな国境管理制度「出入域システム(EES)」導入に伴う混乱で発生した車両の列。2026年6月20日撮影(Nake Batev/Anadolu via Getty Images)

4月に本格始動した姉妹制度のEES

ETIASの姉妹制度であるEESは25年10月から段階的に運用が開始され、26年4月10日にシェンゲン圏全域で本格的に始動した。これにより、EU域外からの渡航者に対する国境でのパスポートへの押印が、自動化された生体認証登録に置き換えられた。理論上、この新制度は再入国手続きを迅速化し、導入前に問題となっていた不法長期滞在者の追跡に効果があるとされている。

advertisement

他方で、運用開始以来、各国の空港や航空会社は、混雑時には最大3時間の待ち時間が発生する可能性があると警告しており、実際、南欧の人気観光地近くの空港のような混雑しやすい場所では、5時間近い遅延が報告されている。英紙ガーディアンによると、こうした空港での遅延を受け、国際航空運送協会(IATA)はEESの運用を一時停止するよう求めたが、EUは同協会に対し、予定通り運用を続ける方針だと伝えた。EUは、一部の国が新制度の運用を続け、他の国が停止した場合、さらなる混乱を引き起こす可能性があるからだと説明した。

旅行誌アファーは、EESによる入国手続きが比較的迅速な空港もあれば、時間がかかる場所もあり、行き先によって待ち時間は大きく異なると報じた。EU域内には約1500カ所の国境検問所があり、そのうち「困難」とされているのはわずか20カ所だ。その理由としては、生体認証機が数台しか設置されていない小規模な空港や、夏場の1~2カ月間、特定の時間に乗客が殺到するような場所であることが考えられる。

フランス内務省は英紙インディペンデントに対し、EESによる新たな国境管理制度は既に効果を発揮していると述べた。導入以降、シェンゲン圏への出入国記録は1億1000万件に達しており、うち約4万4500人が入国を拒否された。これは、不正な渡航書類を使用していたり、過去に滞在期限を超過した履歴があることなどが原因とみられる。

advertisement

これまでは、二重国籍者が一方のパスポートで入国し、もう一方のパスポートで出国しても摘発されることはなかったが、指紋認証と顔認証が導入されたことで、こうした行為はもはや不可能となる。だが、EESには解決すべき技術的な課題が1つ残されている。米ニュースサイト「ポリティコ」によると、現時点では一卵性双生児の識別には対応していないという。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事