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2026.08.15 00:47

大規模モデルと現実の制約――エンタープライズAIを真に機能させるものとは

2025年3月24日、カリフォルニア州ラファイエットで、iPhoneを手に持ち、人工知能と大規模言語モデル(LLM)を活用してGoogle検索クエリを処理する実験的モード「Google AI Mode」を使用する人物の手元のクローズアップ。(Photo by Smith Collection/Gado/Getty Images) Gado via Getty Images アジア太平洋地域全体で、AI競争はおなじみの軸に沿って加速している。

その軸とは「スケール(規模)」である。Tencent(テンセント)のHy3 PreviewからDeepSeek(ディープシーク)のV4に至るまで、近年発表された多くのモデルは、サイズ、計算量、ベンチマーク性能の観点で進歩を示している。業界の勢いは、より大きなモデルがAIの次なる段階を定義するという信念にしっかりと根ざしているように見える。 しかし企業の内部では、異なる問いが浮上している。それは、モデルがどれほど強力になるかというよりも、現実の制約のなかで安全に、コンプライアンスを守りながら、意義深く展開できるかどうかに関するものだ。

IBMアジア太平洋担当ゼネラルマネージャーのハンス・デッカーズ氏との対話から、より地に足の着いた懸念が浮かび上がる。それが「データ主権」である。 「アジアにおいてAIブームを見る際、データ主権はモデルそのものよりも重要な指標となっています」と彼は語る。 課題:AIモデルが企業の現実に直面するとき そのズレは、企業がどのように運営されているかから始まる。市場が汎用的な知能を称賛する一方で、企業は極めて具体的なワークフロー、規制要件、専有データセットを中心に構築されている。単一のモデルでは、その複雑さにきれいに対応できないことが多い。

デッカーズ氏はこれを、技術的な限界というより構造的なミスマッチとして捉えている。「AI時代を勝ち抜くには、ツールだけでは足りない」と彼は言う。「新しいマインドセット、新しいスキル、そして新しいオペレーティングモデルが必要だ」 あなたにおすすめ そのオペレーティングモデルが単一のシステムを中心に成り立つことはまれだ。むしろ企業は、グローバル、地域別、社内の異なるモデルが共存しながらもほとんど統合されていない、断片化したAI環境を進むことを余儀なくされている。単一のモデルがエンタープライズAIの基盤になり得るという前提は、地域ごとのコンプライアンスをめぐる現実の導入の重みによって、崩れ始めている。

データ主権:企業のAIポテンシャルを引き出す鍵 第1の課題が構造的なものだとすれば、第2の課題は規制である。アジア太平洋全域で、データ主権はAIの活用方法を形づくる運用上の制約となっている。 ThePrompt 「企業データの99%は、依然としてAIの手が届いていません」とデッカーズ氏は指摘する。彼が挙げるのは技術的な障壁ではなく、データを外部に開示することへの躊躇だ。大手モデルプロバイダーに社内データを開示するよう求められたとき、多くの企業はしばしば不本意ながら「ノー」という答えにたどり着く。 この躊躇は、地域内で規制環境が分断されていることでさらに強まっている。データローカライゼーション法やコンプライアンス要件は、市場ごとに大きく異なる。効率のために集中化するか、コンプライアンスのためにローカライズするかという従来のトレードオフは、ますます維持しがたいものになっている。 「そのモデルはもはや通用しないと考えています」とデッカーズ氏は言う。

「選択肢はコンプライアンスかイノベーションかの二者択一ではありません。デジタルアーキテクチャ全体にわたって、コントロールを維持し続けることなのです」 この文脈では、モデルの価値は純粋な性能だけで測られるものではない。企業が越えるわけにはいかない境界の内側で運用できるかどうかによって測られる。 ドメイン特化型システムの台頭 単一の汎用モデルに頼るのではなく、企業はより小規模でドメイン特化型の複数システムを構築・展開する方向に動いている。 デッカーズ氏の見解はこの点で明快だ。「将来的にはあらゆるクライアントが100〜200のこうしたモデルを持つことになると信じている」と彼は述べ、銀行のような機関では、こうしたシステムが融資、トレーディング、人事、財務にまたがって展開されると指摘する。それぞれが高度に専門化され、すべて企業データで訓練される。 これらのモデルは、特定のワークフローにより適合し、狭い領域で精度を発揮するよう設計される。

例えばメディア企業であれば、リサーチ、編集、配信のそれぞれに個別のモデルを運用し、タスクを横断的に汎用化させるのではなく、各機能に最適化させることができる。 これは、AIを中央集権的な能力として捉える考え方から、組織全体に埋め込まれた分散型レイヤーとして捉える考え方への転換を示している。「これらのモデルには100%正確であってほしい」とデッカーズ氏は付け加える。「自社のデータで訓練されていてほしい。ビジネスに無関係なものではなく」 真の勝負どころ:インテリジェンスのオーケストレーション 企業が異なる環境で複数のモデルを運用し始めると、さらなる課題が浮上する。 どのようにして適切なタスクに適切なモデルが使われるようにするのか。データが自由に国境を越えられない状況で、どのようにコンプライアンスを維持するのか。汎用AIの出力を専門的なワークフローにどのように統合するのか。

競争の焦点はここへ移りつつある。DeepSeek V4やTencentのHy3 Previewモデルのような大規模モデルがIBMのビジョンにどう位置付けられるかを問われると、デッカーズ氏は「AIイノベーションはますます分散化・多極化している」と答えた。これに対応するため、IBMは信頼できるエンタープライズグレードのオーケストレーション・プラットフォームとしての立場を確立しようとしている。 そのコンセプトは、「Bring Your Own Model(自社モデルの持ち込み)」が可能な環境である。企業は、グローバルプロバイダー、TencentやAlibaba(アリババ)といった地域プレーヤー、あるいは社内チームによるものなど、さまざまなモデルを、単一のガバナンスの効いたシステム内で展開できる。

「クライアントには仕事に最適なツールを使ってもらう」と彼は言う。「すべてがセキュアかつガバナンスの効いた環境で管理される」。この枠組みにおいて、オーケストレーションは究極の効率性を実現するための中心レイヤーとなる。断片化したインテリジェンスをつなぎ、ガバナンスを執行し、企業がコントロールを失うことなくAIをスケールさせることを可能にするシステムなのだ。 未来:人間のルールの下で動くOS 今後について、デッカーズ氏は企業の未来のオペレーティングシステムを「人間のルールの下で、組織全体にわたって考え、決定し、行動できるもの」と表現する。その根底にある方向性は具体的だ。 ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)をなお追いかけている地域において、とりわけ国境を越えて事業を展開する企業にとって、より差し迫った課題は、AIをいかに安全に、コンプライアンスを遵守し、かつ大規模に導入するかである。そして、こうした企業を真に力づけることができるサービスは、このギャップを埋められるもの――最先端のAI能力を、企業が自社データへのコントロールを維持し、規制の境界を越えて適応し、長期的なビジネス拡大に資する形でインテリジェンスをオーケストレーションできるシステムへと翻訳できるサービス――になるだろう。

forbes.com 原文

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