それでは、何故ウォールストリート は、テスラ株について、これほどまでに不安で、用心しているのだろうか。
「テスラの革新的な電気自動車のストーリーは新鮮で、業界トップの電気のみによる走行距離と高い安全性評価もあって、魅力的です。また、その独特のビジネスモデルと技術的優位は、他社から一歩抜きんでています。」
S&P Capital IQ アナリストであるエフレイン・レビーは、以前の同社についてのレポートの中で、テスラの業績について、このように説明している。
しかしながら、2015年11月4日、レビーは、同社株の格付を「保有」から「売却」にダウングレードし、現在1株230ドルで取引されている同社株の12ヵ月目標価格を225ドルから215ドルに引き下げた。同社株は、今年初め、12週間ぶりに286.65ドルの高値を記録している。
レビーは、以下のような理由を挙げる。「最近の自動車開発のニュースをポジティブに受け止めていますが、現在の安心感からと思われる上昇の後で、変動の大きな株式としてのリスクがある一方で、短期における上昇のきっかけに乏しいのです。」彼は、2015年の予測損失を1株当り48セント拡大して1.15ドルとし、2016年の収益を1株当り60セント引き下げて1.90ドルとした。ただし、2017年については、レビーは、1株当り4.25ドルの収益と打ち出した。昨年、テスラは、1株当り2.26ドルの損失を計上している。
テスラは、連邦基準適合の電気自動車テスラ・ロードスターを商業的に初めて製造しており、1回の充電当りの走行距離は、販売されている中で1番長い。加えて、同社が言うように、魅力的なデザイン、パワフルな性能、パフォーマンス、排気管からの排気が無いということもある。テスラは、2番目の車であるモデルSセダンのエンジニアリング・プラットフォームを使って、モデルX SUVを開発している。
ゴールマンサックスのアナリスト、パトリック・ アルシャンボールも同社に対して慎重な見方をしている。第3四半期決算発表時のモデルSとモデルXに関する「ポジティブなコメント」には好感を持ったと述べたが、「まだ相当な不確実性が残っている」と、依然として考えている。彼は、投資家は辛抱強く、同社株を買うなら「低価格になるのを待つべきだ」と助言している。アルシャンボールは、同社株に対する「中立」の格付を維持しているが、価格目標を1株当り234ドルから230ドルに引き下げた。
今は株を買う時ではないと、アルシャンボールは強調する。同社の最近の数字はそれほど良くないと言うのである。彼は、本年の粗利益見通しを引き下げ、テスラの納車数は、50,000台から52,000台という納車ガイダンスの低いレンジに近いものになるだろうと予測している。
アルシャンボールは、短期においては、テスラは、生産プロセスを最適化し、後部座席の供給を十分確保する課題に依然として直面していると警告している。彼のモデルXに対するコメントは、「過去と比べて、より自信があるように思われ」、また、モデルSに関するコメントもポジティブであり、中国での需要にも一部支えられて、全世界での注文が対前年比で50%増加していると述べている。
しかしながら、同アナリストは、最近自動車業界に対して問われている「信頼性問題」が販売にどのような影響を与えるのか、引き続き懸念している。「株価の変動を見ながら、より良い購入価格を引き続き見極めたい」と、アルシャンボールは述べている。
UBSは、テスラの株に対して「売り」の格付を維持している1社であり、価格目標は、1株当り190ドルである。同社の第4四半期の納車ガイダンスは前向きに思えるが、「収益ガイダンスは、期待外れである」と、UBSアナリストのコリン・ランガンは語る。彼は、モデルXに対する需要が伸びるに従って、収益は改善することが予想されるとしているが、次のバージョンはより低い価格にされることから、生産ミックスが潜在的な逆風であると言っている。
彼はまた、同等のBMW7シリーズの年間販売台数がおよそ65,000台であることから、モデルSとXの長期的な需要予測(両車とも年間100,000台)に疑問を呈する。ランガンは、2015年の収益予測を1株当り70セントの損失から、1.10ドルの損失へ修正した。2016年については、収益予想を1株当り2ドルから1.50ドルに引き下げた。2017年については、収益予測を1株当り1ドルから、75セントに下方修正している。
言うまでもなく、ウォールストリートの全てのアナリストが、テスラに対する見方を下げているわけではない。「幾つかの不明な点」があるとしながらも、引き続き強気の見方をしている一人が、モルガンスタンレーのアダム・ジョナスである。彼は、同社株を「オーバーウエート」と格付けしており、価格目標は、何と1株当り450ドルである。同アナリストは、テスラは、第3四半期に自動車の粗利益率で予測を上回り、第4四半期についても、予想以上の販売台数ガイダンスを出していると指摘する。そして、テスラは、「モデルXの生産開始に関する短期的な課題はあるものの」、第4四半期と2016年のガイダンスに関して、受注、生産、納車についてポジティブな見通しを出していると、同氏は付け加える。
しかしながら、ジョナスもまた、キャシュの減り方が速いことを懸念しており、「同社が、自動車とエネルギー貯蔵における野心的な成長戦略を引き続き追求し、これらの分野で拡大するために必要な事前のキャッシュ費用を負担する能力をどうやって維持するかという問題はあるかもしれない。」としている。
実際、テスラは、ジョナスが言う幾つかの問題に答える必要がある。彼は、間違いなくテスラに関して強気の見方を続けているが、ジョナスが言うには、テスラが自動車産業において新たなビジネス・チャンスに取り組むやり方は、「現時点では、投資家サイドに明確に理解されていない。」ジョナスは、それを含めてウォールストリートが提起している問題について、テスラが答える必要があるとしている。