映画

2026.08.23 15:15

映画は「映画のように生きよ」と誘う |「映画よ、さようなら」

(c)Action Inc.

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9万本以上のフィルムを始め、膨大な映画・映像関連の資料を収集、保存する国立映画アーカイブ(独立行政法人国立美術館運営)が、国の大幅な公費削減に伴い、目標額1億円のクラウドファウンディングに踏み切ったことが、6月に報じられて話題となった。政府からは入場料などの収益で賄うことが求められているが、人件費などの経費を削減しても限界があるという。期限は9月23日まで。8月15日現在の寄付総額は9千9百28万5千円に達している。

映画館の年間入場者数は、1958年頃をピークに減少が続き、近年は2億人前後で推移。最近で言えば『国宝』など大ヒット映画や、コンスタントに人の入る人気アニメ作品は別として、全体的には映画館での鑑賞スタイルから配信で観るスタイルに変わってきていることも、入場者数の低下に拍車をかけている。

一方、独自のセレクションで往年の名画やインディーズ系の映画などを上映するミニシアターやシネマテーク(上映の他にフィルムの収集・管理、映画に関する研究・教育やアーカイブ活動をする専門機関。国立映画アーカイブはその国内最大のもの)は、劇場全体に占める割合は少ないながら健闘を続けている。

『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)から『銀平町シネマブルース』(2023)まで、小さな映画館に集う人々を描いた映画はいくつもあるが、今回取り上げる『映画よ、さようなら』(フェデリコ・ベイロー監督、2010)は、その中でもやや異色の作品である。ウルグアイとスペインの共作で、原題の「LA VIDA ÚTIL」には「耐用年数」と「生きがいのある人生」の二つが掛けられている。これを「映画よ、さようなら」と超訳した邦題はなかなか見事だ。映画館の話なのに、一体何が起こるのかと思わせる。

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シネマテークで働く主人公ホルヘをウルグアイの映画批評家ホルヘ・ヘネリック、館長マルティネスを首都モンテビデオに実在するシネマテークの館長マヌエル・マルティネス・カリルが演じている。モノクロ、スタンダードサイズの63分という小品ながら、2010年の新ラテンアメリカ映画祭でグランプリを受賞した。

親と同居している独身45歳のホルヘは、老舗のシネマテークに勤めて25年。人生を大好きな映画上映の場所の維持に捧げてきた。膨大なフィルムの管理やプログラム作り、場内アナウンス録音、映写、映画ファン向け番組のラジオ・パーソナリティ、時には古びた客席の修理まで、老いた館長を支えながらたくさんの仕事を一手に引き受けている。大学教授のパオラに思いを寄せているが、なかなかタイミングが合わない。

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機材の老朽化による故障や観客の激減などで賃料を8カ月も滞納するほどの経営不振の中、とうとう出資元の財団から支援打ち切りを通告され、半世紀の歴史をもつシネマテークは閉鎖となる。仕事を失い、鞄一つで打ちひしがれて街に出たホルヘだが、ある決断と共に自分自身の人生へと踏み出していく。

ストーリーは非常にシンプルだ。特別センセーショナルな出来事は起こらず、事態の大逆転もなく、登場人物はそれぞれあまり強い感情を表に見せない。主人公のホルヘは、大柄で恰幅の良い体型、一見コワモテの風貌に最初はとっつきにくさを覚えるものの、次第にその真面目で愛すべきキャラクターが滲み出てくる。とりわけ、パオラにどう接するかを考えてあぐねている時の”挙動不審”がチャーミングだ。ところどころにユーモアを湛えつつしみじみとした後味は、アキ・カウリスマキやジム・ジャームッシュの作風と共通するものがある。

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