UNDER 30

2026.08.19 18:15

「急ぐな、休むな」 TeamFirstピーター・ザインが日本で学んだ経営哲学

TeamFirst創業者・CEO ピーター・ザイン・ヴィトゲンシュタイン

TeamFirst創業者・CEO ピーター・ザイン・ヴィトゲンシュタイン

「日本は、今でも長期的な信頼が競争優位になる数少ない国のひとつです」

こう語るのは、1200人以上のバイリンガルメンバーが在籍するコミュニティを運営する「TeamFirst」創業者・CEOで、東京都の国際金融フェローを務めるピーター・ザイン・ヴィトゲンシュタインだ。

ドイツで生まれ育ち、オーストリア、アルゼンチン、インド、香港、トルコ、イギリス、アメリカで暮らしてきた彼が、なぜ東京で起業し、グローバル市場における可能性を見出したのか。

今年のForbes JAPAN「30 UNDER 30」で、アドバイザリーボードとして受賞者選出に関わったザインに、現在に至るまでの道のり、日本の可能性、そして、日本で実現したい未来について聞いた。

きっかけは、東京でのひと夏

私が東京を初めて訪れたのは20代前半のこと。きっかけは、ブエノスアイレスで知り合ったドイツ人の友人、クリストファー・アックスの誘いでした。彼は後にビアレストラン「シュマッツ」創業者のひとりとなります。

当時の私は、マドリードのIEビジネススクール卒業後、ロンドンの投資ファンドに就職。世界的企業が驚異的なスピードで成長する姿を目の当たりにするなかで、クリストファーが「日本で成功できれば、どこでもやっていける」と語ったことに惹かれての来日でした。

そして夏の東京で、シュマッツのフードトラックの挑戦を間近で体感しました。40度近い猛暑のなか、クリストファーともうひとりの創業者、マーク・リュッテンの自宅に居候をして、エアコンの室外機やソーセージ用の冷蔵庫に挟まれて眠るという、冒険のような時間を過ごしました。

私はその後一度ロンドンに戻り、2年間ファイナンスの仕事を続けました。その間に彼らは赤坂に1号店をオープン。そして2016年、私は日本に戻り、シュマッツに正式にジョインしました。資金調達や事業拡大、採用などの面でチームをサポートし、のちにパートナーに昇格しました。

日本で働くのは初めてのことだったので、ビジネスマナーについて100ページほどの専門書を読み込みました。席次やエレベーターでの上座・下座など、一見すると不思議に思えるものもありますが、背景にある歴史や文化を理解すると、どれも驚くほど合理的。当時読んだ内容はまとめて資料にして、現在一緒に働くメンバーや来日するクライアントにも共有しています。

今思えば、幼少期からの経験や父の教えが、私の「とことん調べる」という姿勢につながっているのかもしれません。私は、ドイツのラインラント地方の小さな村で7人兄弟の末っ子として育ちました。15歳になる頃には、兄や姉たちは皆家を離れていたため、子どもの頃から60代、70代の大人たちと長く時間を過ごしました。

父の教えは、「退屈を感じたら質問しなさい」というもの。東京での生活は退屈とは無縁でしたが、言葉の壁や文化の違いには不安を抱きながらも、「そこには問う価値がある」と考えて向き合ってきました。

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文=守屋美佳 写真=苅部太郎 編集=鈴木奈央

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