食&酒

2026.08.22 16:30

15歳で料理の道へ 三つ星シェフ小林圭は「今の自分を超え続ける」

シェフ 小林圭

三つ星は「通過点」

2011年に自身の店「Restaurant KEI」を開く。リーマンショックの直後、パリで日本人のオーナーシェフが店を出す。無謀とも思える挑戦だったが、自信はあった。自分の料理を、自分の空間で、自分のチームでつくる。そのためには巨額の借り入れも厭わなかった。

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翌年には一つ星を獲得。「なんで二つ星ではないのか、とまったく喜べなかったですね」と振り返る。どの店もまずは一つ星からスタートすると知らなかったのだが。そこから星が増えない時期が続いた。面白いこと、変わったこと、モダンなことを試してもダメ。5年が経ち、一周回って素直に料理をしたら、17年に二つ星に。知ったのは、自然体でいることの強さだった。

そして20年、42歳にして、アジア人として初めてフランス・ミシュランで三つ星を手にした。「平均してオープンから15年かかるもので、9年は早い方かと。これでようやく自分の世界観を本格的につくり始められると思いました」。パリでは10軒と限られた三つ星の枠は、誰もが狙うもの。それを7年保持し続けるのは並大抵のことではない。

東京 虎ノ門にある「KEI Collection PARIS」
東京 虎ノ門にある「KEI Collection PARIS」

今その小林が手がけるのはレストランの枠に留まらない。「KEI」をブランドとして、世界で通用する存在にしていくことを目指している。「五感に関わることに興味があるので、食に限らず、ライフスタイル全体へと広がるブランドにしていきたい。料理は、お腹を満たすものではなく、心を満たすもの。アートや芸術と同列に位置づけていきたい」と展望を語る。

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急がず、毎日進み続ける

すでに小林は、日本でも御殿場の「Maison KEI」、銀座の「ESPRIT C. KEI GINZA」、虎ノ門ヒルズの「KEI Collection PARIS」など複数のレストランを手がける。映画『グランメゾン・パリ』で料理の監修をするなど活動の幅を広げ、国をまたいで多数のスタッフを率いる立場でもある。

そんな小林が、次世代を担う若手にメッセージを伝えるならば、「ブレずに、今の自分を超え続けること」と明言する。周囲と比べる必要はない。技術の習得とは、過去の自分より前に進めているかどうか。自由な時間が増えたなら、その時間をどう自己投資につなげるかを考えればいい。

また、現代の若手と向き合う上の世代には、時代の空気感にあったコミュニケーションが必要だとアドバイスをする。

「昔は自発性や意欲を期待できたと思いますが、今、熱血や根性論を押しつけるのは難しい。自分の仕事が、チームの大きな物語のどこにつながっているのか、透明性をもって目標を共有し、その手応えを持てるようにすることが大事です」

では、20代の自分にかけるなら、どんな言葉か。

「分岐点は必ず訪れるし、いろいろな誘惑もある。でも、自分が何のためにここにいるのかを忘れなければ、道は一本。急ぐ必要はないし、ワープもできない。ひたすら毎日進み続ける。それしかない」

文=国府田 淳 写真=若原瑞昌 編集=鈴木奈央

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