宇宙

2026.08.14 18:00

宇宙から見た皆既日食、欧州を横切る月の影

欧州気象衛星開発機構(EUMETSAT)の気象衛星メテオサット12号が2026年8月12日に撮影した皆既日食(EUMETSAT)

欧州気象衛星開発機構(EUMETSAT)の気象衛星メテオサット12号が2026年8月12日に撮影した皆既日食(EUMETSAT)

2026年8月12日(日本時間13日未明)、グリーンランド、アイスランド、スペインを横切る皆既日食が起こった。太陽が月にすっかり覆い隠される様子をとらえた地上からの写真に続き、月が地球上に投げかけた黒い影の軌跡を示す衛星画像が公開されつつある。

一連の画像からは、月に太陽が完全に隠される「皆既帯」が実際にどれほど狭いのか、また、月の影がどれほどのスピードで移動したかがひと目でわかる。撮影者が誰で、どのように撮影されたのか、そしてなぜこれらが科学的に重要なのかを解説しよう。今年屈指の天体ショーの見どころを、まったく新しい視点からとらえることができる。

主な事実

8月12日の皆既食(中心食)は最長で2分18秒間にわたって続いたが、その現象を見ることができたのは、ロシア北極圏、グリーンランド、アイスランド、スペイン、ポルトガルのごく一部という狭い範囲に限られていた。地球に落ちた月の影の最も濃い部分である「本影」が通ったこの範囲は、皆既帯と呼ばれる。

今回の皆既日食における皆既帯の幅はわずか約290kmだった。その外側には、はるかに広い半影帯があり、この範囲では部分日食が観測された。

月の影は、場所によっては時速約1600kmを超える高速で地球上を通り過ぎていった。宇宙からは、暗い影が地球上を徐々に移動していく様子が見られた。

宇宙から眺めた欧州

米国の太陽・地球観測衛星「DSCOVR:Deep Space Climate Observatory(ディスカバー)」が地球全体をとらえた象徴的な画像を提供する一方、欧州の気象衛星「Meteosat(メテオサット)」が撮影した画像は、驚くべき月の影の「動き」を明らかにした。

赤道上空の高度3万5786kmの静止軌道に位置するメテオサットは、欧州とアフリカを継続的に観測している。12日の皆既日食の間、メテオサットは月の影がグリーンランドを横切り、アイスランドやスペイン北部に到達する様子をとらえ、地表を滑るように本影が移動するタイムラプス映像を生み出した。

なぜ月の影はとても小さく見えるのか

日食の衛星画像を見たときの最大の驚きのひとつは、月の影の小ささだろう。月そのものの直径は約3475kmもあるにもかかわらず、暗い本影が落ちる範囲の幅は通常290kmほどしかない。

このように細い皆既帯が形成されるのは、月が太陽の光を遮ってつくり出す本影が円錐形をしていて、地球に到達するにつれて先細りになるためだ。地表に届いた先端の小さな円の外側一帯は半影となり、そこでは部分日食しか見ることができないのである。

日食が起こるしくみ(国立天文台)
日食が起こるしくみ(国立天文台)

影の動きはなぜこれほど速いのか

地上から観測する皆既日食は、しばしば一瞬で過ぎ去ってしまうように感じられる。軌道上から見ると、その理由が明らかになる。

月は時速約3700kmで地球の周りを公転している。一方、月の影が落ちる地球も自転している。日食の形状と相まって、影は時速1600km超のスピードで地球の表面を駆け抜ける。ただし、正確な速度は日食の経路に沿って変化する。日の出や日没時に地球を斜めに横切る際が最も速く、経路の中央付近では最も遅くなる。

宇宙から見た日食

静止気象衛星と地球観測衛星の組み合わせにより、科学者たちは日食をかつてないほど包括的に観測することが可能になった。メテオサットとDSCOVR、さらに米気象衛星「GOES(ゴーズ)」の3基が連携して、3つの全く異なる軌道上の視点から、自然界で最も正確なタイミングで発生する天文現象のひとつである皆既日食のほぼ連続した記録が作成できた。

地上から撮影した写真とは異なり、これらの画像は日食を惑星規模の現象としてとらえている。月の影がわずか1時間半余りで山々や海洋、海岸線を横断していった様子がわかるほか、地球の大きさと比較して、皆既帯がいかに小さいかも示している。

2026年8月12日の皆既日食。スペインのサン・ミラン・デ・ロス・カバジェロスで撮影(NASA/Bill Ingalls)
2026年8月12日の皆既日食。スペインのサン・ミラン・デ・ロス・カバジェロスで撮影(NASA/Bill Ingalls)

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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