ベンチャーキャピタル投資が3年間の停滞期を経て、2025年に市場は回復し始めた。Crunchbaseによれば、資金調達額は前年比で30%増加した。ベンチャー投資家は慎重に行動しており、案件成立を急いではいないものの、実績のある持続可能な事業を求めている。
次に何が起きるのか。2026年に注目すべきベンチャーキャピタルの5つのトレンドを紹介する。
1. ゲームスタジオは一時的な賭けではなく、長期的資産として扱われている
ビデオゲーム業界では、単発のヒットに依存することはリスクが高すぎる場合がある。より大きなリターンは、複数の長期的な製品を構築し、持続可能なエコシステムを作り出す手段と支援を備えたスタジオから得られることが多い。
ゲーム会社を評価する際、多くの投資家は次の要素を考慮していることに私は気づいた。
• 事業がIPを保有しているか
• ゲームスタジオが新しい技術やビジネスモデルに適応できるか
• 企業が強固な実績と財務パフォーマンスを示しているか
• プラットフォームの多様化があるか
• 経営陣が長期的な成長を維持できるか
これらの基準を満たすスタジオは、より予測可能な収益をもたらす可能性があり、投資家からは再現性と拡張性のある資産のように扱われるのが一般的だ。
2. クロスメディアIPへの資金流入が増えている
オーディエンスを維持し拡大するために、ゲームスタジオは新規プロジェクトのリリースではなく、続編、前日譚、スピンオフを通じて既存のIPを強化することが多い。
ビデオゲームは映画やテレビの映像化から恩恵を受け、その逆も同様だ。例えば、FalloutやThe Last of Usのシリーズ配信後、原作ゲームのアクティブプレイヤー数と売上は急増した。ゲーム『スーパーマリオ』や『マインクラフト』の映画化は目覚ましい収益を上げた。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は約14億ドル(約2230億円)、『マインクラフト/ザ・ムービー』は9億5000万ドル(約1510億円)超の興行収入を記録した。
収益性の高いモバイルゲームの多くは、著名なIPをベースにしている。例えば『PUBG Mobile』『ポケモンGO』『Marvel Snap』『Monopoly GO!』『Call of Duty: Mobile』などだ。
その結果、ベンチャーキャピタルはゲームスタジオやスタートアップを、複数のフォーマットでコンテンツを生み出せる「IPハブ」として評価することが多い。クロスメディア効果は双方向に働く。IPが収益を生み出し、ゲームにオーディエンスを引き寄せるのだ。
3. ベンチャーキャピタルは新興市場に拡大している
米国は依然としてベンチャーキャピタルのリーダーだが、高い評価額と激しい競争によって、資金提供者は新興市場を模索せざるを得なくなっている。アフリカ、中南米、東南アジア、東欧、中東は、ベンチャーキャピタルの新たな関心の中心地となっている。これらの地域は、経験豊富なチーム、低い参入価格、そしてテクノロジーやクリエイティブ産業への政府支援を提供することが多い。
欧州は市場が着実に成長している。CERPによると、3年間で662億ユーロ減少した後、ベンチャーキャピタル投資は緩やかな回復を見せた。一方、中東では2025年に34億ドル(約5410億円)のベンチャーキャピタル資金が記録され、581件の案件で前年比89%増となった。ただし、同地域での最近の軍事紛争は、近年見られてきた傾向に影響を及ぼす可能性がある。
2026年には、シリコンバレーのような従来のハブ以外にも、より多くのアーリーステージの資本が現れ、国境を越えた取引が増加するだろうと私は考えている。
4. 焦点はAIツールからAI統合型ベンチャーへ移っている
OECDによると、AI企業は2025年に世界のベンチャーキャピタルの61%を獲得した。しかし2026年には、投資家の焦点は単独のAIツールだけから、価値あるIPを保有しAIを活用してそれを拡大できる企業へと移る可能性がある。
ツールは移り変わるが、IPは時間とともに積み重なる。AlixPartnersの2026年メディア&エンターテインメント業界予測レポートが予測するように、2026年末までに、強力なIPにAIをうまく統合したゲーム会社は、技術の導入が遅い競合他社の2倍から3倍の評価額を得る可能性がある。
ビデオゲームでのAI活用にも課題がある。ゲーマーがAIに反発する例が数多く見られるからだ。
• Quantic Foundryによる2025年の調査によれば、ゲーマーの85%がゲームへの生成AI導入に否定的な態度を示しており、63%が最も否定的な回答オプションを選択した。
• Game Developers Conferenceのレポート(購読が必要)によると、ゲーム開発者の84%がAI利用の倫理を懸念している。この懸念はソーシャルネットワークやメディアを通じてオーディエンスに伝わり、「倫理的に汚れた」ゲームというイメージを作り出している。
これは、ゼロから新しいIPを生み出すことに悪影響を及ぼす可能性がある。
多くのベンチャーキャピタルは、独自のデータ、特許取得済みのアルゴリズム、あるいは深く統合された顧客ワークフローを持つスタートアップを優先する可能性が高い。これらはAI単独では複製が難しいからだ。
5. 投資家は、より長い時間軸で、より少ない賭けをしている
より選択的に、より集中的に。それが2026年のベンチャーキャピタルの姿だと私は予想している。多数の企業に資本を分散するのではなく、ファンドはより確信を持てる少数の投資にリソースを集中させたいと考える可能性がある。
アーリーステージのスタートアップ(特にシードおよびシリーズAの段階にあるもの)は引き続き資金を集めやすいだろうが、レイターステージの案件はより厳しい精査を受ける可能性がある。
実際の収益と顧客の獲得は重要だが、それだけでは十分ではない。資金調達を目指す創業者は、今後数年間で事業がどこに向かうのか、投資家に明確な道筋を示さなければならない。
全体として、業界は「勝者総取り」のアプローチへと移行していると私は考える。ベンチャーキャピタルはもはやアイデアだけに資金を出さない。測定可能な結果を達成する最も効果的な方法に対して資金を出すのだ。
これは業界リーダーにとって何を意味するのか
ハードルが上がる中、ベンチャー資金を巡る競争は激化する可能性が高い。案件は減り、成立までに時間がかかり、より深いデューデリジェンスを伴う。資金調達は依然として困難だが、独自のIP、強力なAI戦略、長期的なプロジェクトを持つ成熟したスタートアップは、資金を引き付けるうえでより有利な立場にあると言える。
ベンチャーキャピタル投資家は、より選別的になり、より高い品質を求め続けると私は考える。投資を求める企業は、成長への資金調達方法においてより創意工夫を凝らし、より戦略的に行動する必要があるだろう。



