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2026.08.25 20:00

「エージェント型AIをROIに変換する」Appier CEOが語る、エージェント型AI時代の勝ち筋

2012年の創業初日からエージェント型AIを設計思想の核に据えてきた東証プライム上場企業のAppier (エイピア)。CEOチハン・ユーが語る、エージェント型AI時代をマーケティングで制する勝ち筋とは。


「AIはもう、アドバイスをするだけの存在ではない」。 Appier Group CEOのチハン・ユー(写真。以下、チハン)はそう言い切る。

米ハーバード大学でAIの博士号を取得し、20年以上AI研究に携わってきたチハンは、エージェント型AIへの移行が業務環境を大きく変えると指摘する。

「AIは提案止まりで、最終的に行動するのは人―。そんな、生成AI時代の人とAIとの関係は根本的に変わりつつあります。エージェント型AIの登場は、まるでひとりの同僚に仕事を任せるように、AIに業務を割り当てることを可能にしました。ただ、AIには感情やモチベーションといった人間らしい性質はありません。これからの新しい時代のリーダーには、人とAIが協働するハイブリッドな組織をマネジメントする能力が求められるでしょう」

その先にあるのが、AIとの新しい役割分担だ。

「成功の定義とKPIさえ明確にすれば、エージェント型AIは自律的に高い精度で目標達成に向かいます。AIが実行を担い、人間はビジョンと目標を定義する。それが、これからの新しい役割分担なのです」

計算の限界が生んだ、協調という発想

2012年の創業以来、「AIネイティブ企業」として最先端のAIマーケティング技術を提供してきたAppier。掲げるミッションは「Turning Agentic AI into ROI」。

R&Dチームは修士号・博士号をもつメンバーが70%を占め、400件以上の学術論文発表実績を有する。チハン自身も23年前に自動運転とロボティクスの研究を始め、ロボットカーの自動運転を世界に先駆けて実現させた研究者だ。「AIとともに生き、事業を行ってきた」背景には、研究で得た確信があった。

「ハーバード大学の研究室時代、AIの実用化には計算能力そのものが大きな制約になっていました。一つひとつのAIの能力は限られている。であれば、複数のエージェントが協調して動くことで強力なシステムを構築できるのではと考えたのです。2010年の論文は年間最優秀論文賞の候補にもなり、現在のマルチエージェント・フレームワークの基礎になっています」

当時の研究室には世界トップレベルの研究者が集結し、のちにOpenAIを創業するサム・アルトマンもインターンとして在籍していた。

「信じられないほど優秀な人たちが、努力を重ねていた姿を間近で見て、一日一日、一秒たりとも無駄にできないと感じるようになりました。この価値観は、今もAppierのチーム全体を動かす原動力です」

一方で、優れたAI研究の多くが研究室のなかだけにとどまり、人々の生活にほとんど還元されていない現実にもどかしさを感じていた。AIを現実社会で活用できるものにしたい―。そう考えたチハンが行き着いた先が、マーケティングという領域だった。

「デジタルマーケティングはデータが豊富で効率化の余地が大きく、“企業の成長を支援する”という明確なゴールに向かっていけます。AI活用の枠組みに最も適した分野だと確信しました」

ああ
Appier Group 共同創業者兼代表取締役CEO チハン・ユー

強みを支えるのは、量より質のデータ

「データはエンジンにとっての燃料のようなもの」。チハンはそう表現する。Appierの強みは、10年以上蓄積してきたファーストパーティデータだ。高いコンプライアンス水準で安全性を担保してきたからこそ、幅広いクライアント企業からアクセスを許され、日々のデータ量は数十億〜数兆件規模に及ぶ。

しかしチハンは、「量がそのまま力になるわけではない」と釘を刺す。

「不要なデータを大量に学習させれば、むしろモデルの性能は下がってしまいます。必要なデータだけを選び出し学習させることで、最先端のAIモデルをマーケティングの専門家へと育て上げる―。これが私たちの得意分野です。複雑でわかりにくい先生より、大事なポイントを伝えてくれる先生のほうが、生徒の理解は進みます。同じ考え方でAIモデルを学習させています」

こうして磨き上げたAIモデルは、8つのAIエージェントとして製品に実装されている。その根底には、業界に長く横たわる、ある課題への問題意識がある。

「広告費を投じれば成果は得られるものの、そのうち約半分は無駄になっていることはわかっています。しかし、どの半分が無駄なのかはわからない」。

マーケティング業界で長年語られてきたこの課題に、「可視性」と「明確さ」をもたらす―。それが、Appierの8つのAIエージェントが目指すものだ。

広告配信からパーソナライゼーション、データ活用まで、Appierの製品群には8種類のAIエージェントが組み込まれている。それらの連携により、購買行動や売り上げなどのデータから、集客エージェントが“高い収益を生み出す顧客像”を特定。クリエイティブエージェントが広告を自動生成し、離脱の兆しを検知したエージェントが関心を呼び戻す、「専属のマーケティングチームが24時間働き続けている」ようなフローを作り出している。

「例えば、欧州の大手交通比較予約サービスであるOMIOに対しては、広告費が実際の予約につながるよう支援するだけでなく、欧州各国向けの異なるクリエイティブを自動生成することで、各国拠点が個別に制作する手間もなくしました。事業成長のみならず、グローバル展開のハードルを大きく下げています」

実際、Appierが公表しているほかの事例でも成果は表れている。グローバルに協業するTrip.comでは、AIによる高価値ユーザーの特定と広告最適化により、Appier経由の売上高が前年比で大幅伸長、アプリ利用者層も倍速で拡大している。

そして、こうした実績は、第三者機関でも裏付けられている。2026年にはガートナー社から「AIネイティブ・アプリケーション&ソリューション」部門の代表ベンダーに選ばれた。

「AIネイティブとは、単にAIを使うことではありません。知識を組織の中心に据え、それを取り囲むようにAIエージェントが協働していく。例えば、マーケティング担当者には広告運用を支援するAIエージェントがパートナーとして寄り添う。人間が全体を監督し、最終的に業務を遂行する。ナレッジベースと自律型AIエージェント、人間の知識や経験を組み合わせ、生産性が高く調和の取れた組織を実現しようとしているのです」

さらに、北東アジア、米国、欧州でも高い成長を続けている。

2025年12月期通期決算では、最大市場の北東アジアが前年比36%、米国・EMEAも同36%の成長を記録。25年にはパリ拠点のクリエイティブ・プラットフォーム企業を買収し、欧州での存在感を強化した。

日本市場については、「トップレベルのAI研究者の数をGDPで割ると、とてもアンバランスな地域。だからこそAIで日本企業の競争力を高めることが私たちの重要な使命」と言い切る。

「今後、あらゆるビジネスがオンラインコマースにつながり、あらゆる組織がエージェント型AIによって変革されていくでしょう。AIをROIに変える考え方こそ、組織を共通の目標に向かわせる確実な道だと考えています」

Appier
https://www.appier.com/ja-jp/


チハン・ユー◎Appier Groupの共同創業者兼代表取締役CEO。スタンフォード大学でAIの修士号、ハーバード大学で博士号を取得。自律ロボットや自動運転の研究開発に携わり、AI領域で数々の学会論文を発表。世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダー」に選出。

Promoted by Appier | text by Rumi Tanaka | photographs by Shuji Goto | edited by Mao Takeda