ココザスが提供する共同所有型別荘サービス「COCO VILLA Owners」は、自然のなかで過ごす時間を通じて、忙しい現代人に新たなウェルビーイングを提案するサービスだ。同社代表取締役CEO安藤義人に事業に込める思いを聞いた。
幼いころ、家族に連れられて訪れた山中湖の別荘。ウッドデッキに座り、雄大な富士山を背に湖面がきらきらと光る景色を眺めながら家族で語り合った時間は、今も記憶のなかに鮮明に残っている。
「この豊かな時間を多くの人に届けたい」その原体験は、ココザス代表取締役CEO安藤義人(写真。以下、安藤)の事業の原点となっている。
一般に貸し出すことで維持管理費を軽減
2016年の創業以来、ココザスは資産形成や転職支援など人々のライフプランを支援する事業を展開してきた。経済的な豊かさを実現するためのサービスを提供し、多くの実績を積み重ねてきた一方で、安藤には漠然とした葛藤が芽生えていた。
「ビジネスとしては順調でした。しかし、経済的だけでなく、精神的な豊かさも提供できなければ、本当の意味で世の中を変える会社にはなれないと思ったのです」
転機となったのはコロナ禍だった。ライフスタイルが大きく変化し、リモートワークやワーケーションが定着するなか、安藤は22年から別荘のサブスクリプションサービスを利用し、日本各地の雄大な自然に触れるようになる。東京の騒がしさを離れ、自然に癒やされながら仕事をすると、かつて山中湖で味わった記憶がよみがえってきた。やがて「自然のなかで過ごす素晴らしさを人々に届けたい」と思うようになり、24年に立ち上げたのが、別荘の共同所有サービス「COCO VILLA Owners」だ。
別荘は、高額な購入費用や維持管理の負担から、一部の富裕層だけがもてるものというイメージが根強い。COCO VILLA Ownersでは、ひとつの物件を複数人で共同所有することで、手の届きやすいかたちで別荘を保有できる仕組みを実現した。さらに、オーナーには購入金額に応じて毎年ポイントが付与され、自身が所有する物件だけでなく、全国各地の「COCO VILLA」に宿泊できる。
山、海、湖など、それぞれ異なるロケーションを楽しめることが大きな魅力だ。北海道から沖縄まで、26年8月時点で全国23拠点に27棟を展開。すべての施設には、安藤がこだわるサウナを備える。ターゲットとするのは、都心で働くビジネスパーソンとその家族だ。
「現代人は、より戦うために休む場所が必要です。COCO VILLAにはデジタル・デトックスを促す仕掛けを施しており、サウナを設置しているのもそのためです。根底にあるのは、非日常の空間で心身を整えてもらうことです。何の制約もなく、行きたいときに自然のなかに身を置き、心身を健やかに保てる。それこそが、私たちが考えるウェルビーイングです」
別荘のシェアリングサービスはすでに存在していたが、安藤が強調するのは、仕組みの違いだ。
「従来の別荘シェアリングの多くは、所有者のみが利用するだけで、毎年の管理費やランニングコストが重荷になることも少なくありませんでした。一方でCOCO VILLA Ownersは、オーナーの利用日数を1物件あたり年間120泊までに制限(*旅館業物件の場合)し、稼働していない日を、貸別荘として一般に貸し出す。この仕組みによって得られる収益を維持管理費などのランニングコストに充てることで、所有者の運営負担を軽減させる設計としています」
世界中の人々の生き方を変えるサービスを
全国の拠点に宿泊客を呼び込み、安定稼働させることは容易ではない。特に現地の清掃や施設運営は、極めて泥くさい仕事だと安藤は言う。
「私自身、現場で掃除をしたことがありますし、当社の社員が汗を流すこともあります。普通なら外注するでしょうが、当社はできるだけ現地で正社員やアルバイトスタッフを雇用します。単に清掃マニュアルを渡すだけでなく、私たちが何を目指しているのかを伝え続けています。ただの作業員ではなく、ココザスの価値を共につくる仲間として、組織風土を浸透させるためです」
COCO VILLAは、こうした雇用の創出だけでなく、建物の建設や周辺店舗への経済効果など、地域にも波及効果をもたらしている。また、ココザスは企業版ふるさと納税にも力を入れ、自治体との関係構築を通じて地方創生の一端を担っている。
「旅の醍醐味は体験や食にあるので、現地の飲食店や温泉施設などと提携をして、割引価格でご案内するなどの取り組みを各地で始めています」
こうした地域との関係構築を象徴するのが、千葉県・養老渓谷の物件だ。養老川沿いという希少な立地に立つこのヴィラは、豊かな自然と調和するデザインを目指し、施工会社や設計者と何度も議論を重ねながら完成した。
しかし、この物件にはその建物以上に印象的な物語がある。土地を購入した後、安藤のSNSに1件のメッセージが届いた。送り主は、かつてこの土地を所有していた地主の息子だった。
幼いころに訪れたことのある土地に新しいヴィラが建つことを知り、COCO VILLA Ownersのオーナーになることを希望したのだという。息子はオーナーとなり、完成した別荘へ父親を招待した。かつて家族が大切にしていた土地が、新たなかたちで再び家族の思い出の場所となったのだ。
「本来は、土地を売って取引が終わるとそこで縁も切れるものです。それが、息子さんが別荘を購入してくださり、今度は父親を招いて泊まりに来てくれる。COCO VILLA Ownersの所有権は相続の対象にもなりますから、代々そのご家族が『戻る場所』が受け継がれていくのです」
土地の記憶を未来へ。COCO VILLA Ownersは、人と土地との新しい関係を生み出す事業でもあるのだ。
ココザスは、26年末までに50拠点、27年末までに100拠点のCOCO VILLAの展開を目標としている。安藤が見据えるのは、日本最大規模のヴィラブランドを築き、「別荘のある暮らし」を文化として定着させることだ。
「将来的には上場を視野に入れ、日常生活から離れることを目的としたリトリート型ホテルなどへ領域を広げていきたいですね。そして、ウェルビーイングを世界中へ広げ、多くの人の生き方を変えるようなサービスを提供していきます」
あんどう・よしと◎2016年に個人向けライフデザイン事業を行うココザスを創業。22年にはモンゴルに現地法人を設立し不動産業のライセンスを取得。現在は資産運用型別荘「COCO VILLA」を立ち上げ、シリーズ第1弾のCOCO VILLA 八ヶ岳を皮切りに、27年末までに100拠点の開発を目指す。26年5月に3冊目となる著書『すべての人に、別荘のある暮らしを』を出版。



