一見すると、建設に関わる機械・電気・配管(MEP)エンジニアリング業務は、人工知能(AI)によるディスラプション(破壊的創造)の主要なターゲットには思えないかもしれない。だが、スウェーデンの小規模なスタートアップであるEndraの考えは異なる。同社が開発したプラットフォームは、すでに世界最大級のエンジニアリングコンサルティング企業の一部が導入を決めている。
Endraは、共同創業者のアントン・ジュリックとニクラス・リンドグレンのアイデアから生まれた。2人は以前、商業ビルへのセキュリティシステム設置事業を立ち上げ、最終的に売却した経験を持つ。「ずっと引っかかっていたことがあった」とジュリックは振り返る。「セキュリティシステムの設計図を扱うチームと仕事をしていたのだが、彼らが使っているソフトウェアが驚くほど時代遅れだったのだ」
やがて2人は、同じことがMEPエンジニアリング領域全体に当てはまると気づいた。この領域には、時間のかかるプロセスが多く、現在も手作業で進められており、多くの場合、複数の異なるソフトウェア製品が使われている。
エンジニアは建物をマッピングし、負荷や流量を計算したうえで、機器、ケーブル、ダクト、配管をどこに配置すれば最も効率的、効果的で美観にも優れるかを計画しなければならない。建物内の別の場所で小さな設計変更が1つ生じるだけで、この作業の多くを最初からやり直す必要が生じることも少なくない。
ジュリックとリンドグレンは、現代のテクノロジーが役立つはずだと考え、ストックホルムでゴールドマン・サックスの低遅延取引インフラの開発に共に取り組んでいたデベロッパーのデビッド・リュードベリとグスタフ・ハンマルンドに声をかけた。こうしてチームはEndraを構築し、2023年に会社を設立した。
「Endraは、エンジニアリングコンサルティング企業向けに作られた、MEPエンジニアリング専用のAIプラットフォームだ」とジュリックは説明する。「このプラットフォームは、標準的な建物モデルファイルを取り込み、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ツールと連携して、詳細な3D環境で建物を再構築する。そこから、システム設計、機器配置、ルート選定、モデル生成、コンプライアンス対応ドキュメント作成といった主要なエンジニアリングワークフローを自動化し、2Dと3Dの両方の成果物を作成する」
事業は急速に立ち上がった。Endraは現在、AtkinsRéalis(アトキンズ・リアリス)、Ramboll(ランボル)、Buro Happold(ビューロ・ハッポルド)、WSP、Hoare Lea(ホア・リー)、AFRYといった著名企業を含む30社のエンタープライズ顧客を抱える。先月、同社はアンドリーセン・ホロウィッツが主導する5000万ドル(約79億5000万円)のシリーズAラウンドという最新の資金調達を発表し、これによりこれまでに確保した投資総額は約7500万ドル(約119億円)となった。
ジュリックとリンドグレンは、これまで主にスウェーデン国内の顧客に注力してきたが、新たな市場を見据えている。今週、同社は米国と英国の双方で新オフィスを開設すると発表する予定で、ジュリックはこの拡大を統括するためニューヨークに移る。
とりわけ北米には、Endraのような企業にとって大きな可能性がある。多くのエンジニアリング企業が、従来と同じ方法で業務を進めるために十分な人員を採用することに苦戦しているためだ。米国のMEPエンジニアリング企業シスカ・ヘネシーのCTOであるロバート・イオアンナは、次のように述べる。「AIにMEPを支援させるには、まだ多くの取り組みが必要だ。しかし、特に電気エンジニアの深刻な人材不足に対処する助けになる選択肢であれば、あらゆるものを支持したい」
Endraの追加資金は国際展開の計画を支えることになるが、創業者たちは研究開発への投資にも意欲的だ。これまでに開発された技術は主に電気設計に焦点を当てているが、Endraは現在、機械設備と配管の業務向けにも同様のツールを展開する方針を掲げている。
このスタートアップが成長を維持するためには、それが重要になるだろう。Endraは今年初めに商用製品をローンチし、わずか数カ月で年間経常収益(ARR)をゼロから7桁にまで成長させた。しかし、この分野の競争は激化している。例えば、カナダのAugmentaは昨年、MEPの同セグメントで拡大するために1000万ドル(約15億9000万円)の新たな資金調達を行ったほか、ナスダックに上場しているAutodesk(オートデスク)もライバルの1社だ。
それでも、狙うべきビジネスチャンスは豊富にある。Research & Marketsの調査によると、世界のMEPサービス市場は年間1500億ドル(約23兆9000億円)以上の価値があると推定されており、建築家やエンジニアがより持続可能な開発を行うことを求められるなか、市場は急速に成長している。
「政府や民間企業がより環境に配慮した建物を推進するにつれて、エネルギー使用を最適化し、環境への影響を低減するMEPの設計やサービスに対する需要が高まっている」と同調査は報告している。「これには、エネルギー効率の高いHVAC(暖房・換気・空調)システム、節水型の給排水設備、そしてエネルギー消費をより効果的に管理できる高度な電気システムの統合が含まれる」
さらに、通常、MEPエンジニアリングは建設されるすべての建物の総プロジェクトコストの最大5%を占めており、デベロッパーや建築家にとって、この業務をより効率的に管理するための強力な動機(インセンティブ)となっている。
「MEPは、地球上で最大級の産業の中で大きな部分を占めている。しかも、あらゆる建物のクリティカルパス上に位置するため、MEP設計がボトルネックになれば、建設スケジュール全体が遅れる」とジュリックは付け加える。「そのボトルネックの悪影響を実際に経験してきた者として言えば、それを解決することは極めて大きな機会である」



