同社の技術は、突き詰めれば「さび」を利用したものだ。多孔質の鉄板を、水を主成分とする電解液に浸す。するとフォームが「可逆的な」さびと呼ぶ電気化学的なサイクルが起きる。放電するときには、バッテリーが空気中から酸素を取り込み、金属の鉄をさびに変える。充電するときには、流れ込む電流がさびを鉄に戻し、バッテリーは酸素を放出する。この過程で鉄そのものが失われることはなく、そのためバッテリーは非常に長持ちする。
フォームを率いるのは、テスラでバッテリー部門の幹部を務めた共同創業者のマテオ・ハラミロだ。同社によれば、すでに80ギガワット時を超えるバッテリーの受注を得ており、これは6000万世帯分の電力をまかなえる規模だという。案件にはミネソタ州とテキサス州のデータセンターが含まれ、顧客にはXcel Energy(エクセル・エナジー)やCrusoe(クルーソー)が名を連ねる。アイルランドでは、FuturEnergy Ireland(フューチャーエナジー・アイルランド)と組んだ送電網向けのプロジェクトも進む。ハラミロは、非上場である同社が来年に株式を公開する可能性があると述べている。
アントラのバッテリー技術は、フォームのものよりもさらに単純だ。製鉄所で使われるような工業用の炭素ブロックを数十個積み重ね、大型トレーラーほどの大きさの金属製容器に収める。容器の中は窒素などの不活性ガスで満たされている。たとえば太陽光発電所から電気が流れ込むと、その電力で発熱コイルが働き、炭素ブロックを摂氏2400度まで熱する。蓄えられた熱は、その後何日もかけて蒸気として取り出され、データセンターや工業プロセスを動かす。
最初の大型案件は、サウスダコタ州ビッグストーンシティ近郊にあるPOET(ポエット)のバイオ燃料工場に設置された5ギガワット時のシステムだ。このバッテリーは風力発電所とつながっており、トウモロコシをエタノールに変える工程に必要な蒸気熱を供給する。
アントラはこのシステムの目標コストを明らかにしていないが、COO兼共同創業者のジャスティン・ブリッグスは、長時間の蓄電手段としては最も安くなると話す。
「熱によるエネルギー貯蔵には、非常に大きな強みがあります。地球上でもっとも安い部類の材料、私たちの場合は固形の炭素ブロックを使い、それをただ熱するだけでいい。それくらい単純なのです」と、ブリッグスはフォーブスに語った。「複数の取引先と商談中のため正確なコストは開示できませんが、この技術が地球上でもっとも安く、もっとも早く、もっとも大きく展開できるエネルギーを目指して設計されたことは申し上げられます」
アントラのバッテリーシステムをつくるカリフォルニア州サンノゼの工場は、広さが約10万平方フィート(約9300平方メートル)ほどしかない。540万平方フィート(約50万平方メートル)あるテスラのネバダ州ギガファクトリーと比べれば、ごく小さな規模だ。それでもすでに「2桁ギガワット時」の炭素ブロックパックを生産できるとブリッグスは言う。
「何もない建物から出発して、1年足らずで、全米でも有数の規模を誇るバッテリーのギガファクトリーに変えました」


