平均10%超の値下げを経て成約
そこで注目したいのが、成約時までの値下げ率だ。各月の成約時における値下げ率を分析すると、2025年後半以降、湾岸エリアでは売主同士の価格競争が急速に激しくなっている。

出典:福嶋総研
現在では、平均10%を超える値下げを経て成約するケースが一般化しているという。これまで強気だった売主も、価格を修正しなければ売却できない状況になっている。つまり、在庫が横ばい、あるいは微減になったのは需要が急回復したからではない。多くの売主が価格を大きく引き下げたことで、ようやく成約に至るようになったためだと調査では分析している。現在の湾岸エリアでは売り出し価格から約10%値下げした価格帯が、市場参加者に受け入れられる水準、すなわち現在の実勢価格になっているとみている。
金利上昇で変わった市場環境
では、なぜこのような変化が2024年中盤ごろから始まったのか。その大きな要因として調査元が挙げているのが、日本銀行によるゼロ金利政策の解除だ。2024年に政策金利が0.25%へ引き上げられたタイミングと、高額マンションの在庫増加が始まった時期はほぼ一致しているという。
政策金利が上昇すれば、住宅ローン金利も時間差で上昇する。1億円を超える高額マンションが多い湾岸エリアでは借入額も大きく、わずかな金利上昇でも毎月の返済額や総返済額への影響は大きい。その結果、実需層の購入可能価格が低下し、それまで購入できていた層の一部が市場から離脱する。
また、影響を受けるのは実需層だけではない。湾岸エリアは国内外の投資家からも人気を集めてきたが、金利上昇によって借入コストが上昇すれば投資利回りは低下する。将来の値上がり期待も徐々に縮小し、これまで価格を押し上げてきた投資需要も以前ほど積極的ではなくなっているという。
10%値下げは通過点なのか
調査では現在の平均約10%という値下げについて、現時点の金利環境に対応するための「第一段階の価格調整」と考えることもできるとしている。今後も政策金利が段階的に引き上げられ、住宅ローン金利がさらに上昇すれば、購入できる層が限定され、市場の流動性が一段と低下することも考えられる。その場合、市場が再び十分な流動性を取り戻すためには、現在以上の価格調整が必要になる可能性もあるという。
「平均10%超の値下げ」と聞くと、湾岸マンションの価格そのものが10%下落したようにも受け取れる。しかし今回示されているのは、売り出し価格から平均10%を超える値下げを経て成約するケースが一般化しているということだ。在庫の増減だけでなく、実際にどの程度の価格で取引が成立しているのかを見ることが、市場の実態を知るうえで重要になりそうだ。


