北米

2026.08.15 07:00

米国はすぐにパトリオット防空ミサイルを増産できない その単純な理由

ルーマニア陸軍のパトリオット地対空ミサイルシステム。同国内の防空訓練施設で(MoiraM - stock.adobe.com)

ルーマニア陸軍のパトリオット地対空ミサイルシステム。同国内の防空訓練施設で(MoiraM - stock.adobe.com)

580億ドル(約9兆2000億円)──。

米国防総省がこのほど、ロッキード・マーティンに発注したパトリオットPAC-3迎撃ミサイルの契約額である。PAC-3は過去5カ月、イランの弾道ミサイルなどを空から撃ち落としてきた。今回の発注は米国の弾薬調達契約としては史上最大級のものだ。

とはいえ、これらのPAC-3がすぐに手に入ると思ってはいけない。退役陸軍大佐のロバート・ハミルトンによると、この契約で生産される最初のミサイルが納入されるのは2029年初めになるという。契約が完了するのは2032年である。

筆者は6月、米国は兵器備蓄を再建しなくてはならず、問題は誰がそれを生産するかだけだと論じた。それから6週間、問題の焦点が変わったと考えている。問われているのは、たんに誰が生産するのかではなく、どれだけ速く生産できるかだ。

先週時点で、国防総省も同じ問題に取り組んでいる。

底をつきかける兵器在庫、国防総省は補充に躍起

米国はイランに対する「壮絶な怒り(エピック・フューリー)作戦」を始める前、パトリオットを2330発前後保有していた。ハミルトンによれば、足元では800発程度に減っている。米戦略国際問題研究所(CSIS)もパトリオットの在庫は1000発を下回り、THAAD(終末高高度防衛)ミサイルの在庫も250発程度に減少したと推定している。さらにロイター通信は、米陸軍が貴重な長射程精密ミサイルを「ほとんど」使い切ったと報じている。これらの精密ミサイルは1発100万ドル(約1億5900万円)以上するものだ。

米政府は迅速に対応している。国防総省はロッキードへの今回の発注に加え、同社とノースロップ・グラマンとの間で、パトリオットの生産数を3倍、THAADの生産数を4倍にするための枠組み合意を結んだ。ロッキードはこれより前、PAC-3の年産数を2000発に増やすと発表している。また、レイセオンの親会社RTXとも同様の合意が交わされ、トマホーク巡航ミサイルの年産数を現在の60発から一気に1000発に引き上げることが目指されている。2027会計年度(2026年10月〜2027年9月)予算には弾薬向けだけで950億ドル(約15兆1000億円)が計上されている。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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