米国の防衛・宇宙装備の生産量は、ロナルド・レーガン政権の軍備拡張の最中だった1988年1月にピークをつけている。その後の13年間、米政府が冷戦終結などに伴う「平和の配当」を享受するなかで、生産能力は43%も低下した。そこから生産量が回復するには26年を要し、現在の生産量はと言えば、1988年の水準を3.6%上回っているにすぎない。
また、2001年の9・11同時多発攻撃後を含め、冷戦後にみられた生産急増はすべて、1988年に記録した水準あたりを天井に頭打ちになり、減少に転じる。だが現在、米防衛産業は、5カ月にわたる紛争で消耗した備蓄分を補充するだけでなく、太平洋地域で中国を抑止するための装備を用意することも求められている。
サプライチェーンの非対称性が生む構造的制約
もとより、ロッキードが単独でパトリオットを製造しているのではない。何百社にものぼる中小企業から調達した部品を、同社が組み立てているのだ。
米政府がミサイルの増産を求めた場合、シフトを増やし、機械を買い、コンクリートを打たないといけないのは、これらのサプライヤーだ。だが、たいていの企業はそれができない。
なぜか。CSISのシニアアドバイザーであるマーク・キャンシアンは、あるインタビューでサプライヤー側を代弁して、簡潔にこう述べている。「金を見せてくれ(show me the money)ということです」。企業側としては、いつ稼働しなくなるかわからないような工場を、おいそれと建設するわけにはいかないのだ。
ブルームバーグのサプライチェーン(供給網)データを見ると、こうした懸念を払拭するのがなぜかくも難しいのか想像できる。たとえばCPIエアロストラクチャーズは、売上高の38%をRTXから得ている。一方、RTXがCPIエアロストラクチャーズに支払っているのは、RTXの総費用の0.04%にすぎない。ソリトロン・デバイシズの場合、売上高の31%をRTXからの注文分が占めるが、RTX側から見れば同社に払うコストは0.01%足らずだ。


