増産を急かしているのは米政府上層部だ。スティーブ・ファインバーグ米国防副長官は8月5日付で、ボーイングとロッキード、RTXに書簡を送り、その中で各社に対して、広域監視システム、防空センサーと迎撃弾、ミサイル追跡システムの納入を前倒しで進めるよう求めた。何年もかかる開発サイクルは受け入れられないとも記している。スケジュールを短縮し、生産能力を拡大する必要がある。
ただ、ホワイトハウスは弾薬不足という見方に公然と異議を唱えている。ドナルド・トランプ米大統領は先週、トゥルース・ソーシャルへの投稿に「米国は大量の『弾薬』を保有している。とくに一部の種類についてはそうだ」と書いた。
それはともかく、国防総省の書簡では、迎撃ミサイルや追跡システムについて納期の短縮を要請している。
つまり、資金はある。ボトルネックは別のところにある。
防衛装備の受注残は生産量の4倍のペースで増えている
ブルームバーグのデータを筆者が調べたところ、「プライム」と呼ばれる米大手防衛企業のうち4社(ロッキードとRTX、ノースロップ、ジェネラル・ダイナミクス)は過去8四半期で受注残の合計額が37%増え、現在は1500億ドル(約23兆9000億円)超に積み上がっている。
一方、同じ期間に米国の防衛・宇宙装備の実際の生産量は、米連邦準備制度理事会(FRB)の指数によれば8%しか増えていない。
言い換えれば、受注額は、製造ラインから出てくる製品の4倍以上のペースで膨れ上がっているということだ。
ロッキードのミサイル・火器管制部門の受注残は、わずか1四半期で466億ドル(約7兆4300億円)から879億ドル(約14兆円)に急増した。PAC-3の大型契約が計上された結果、ほぼ倍増した。それに対して、同じ3カ月間に国防関連装備の生産量の伸びは2.8%にとどまっている。
契約は即座に数字に表れる。しかし、ミサイルはすぐにはつくれない。
「平和の配当」のツケ
明確にしておきたいのは、こうした状況は無能さや防衛企業の怠慢によるものではないということだ。これは単純に数字の問題である。


