数論の研究者たちは、37年をかけても1つの数値を1ポイント未満しか動かせなかった。その数値とは、リーマン・ゼータ関数が持つ零点のうち、「臨界線」の上にあると証明された割合を指す。零点はすべてこの線上にあるはずだ、と数学で最も有名な未解決問題の1つは主張している。人間の手による数十年の改良で、この割合は41.6%まで来ていた。米国時間8月10日、Claudeを開発する米アンソロピックは、未公開の研究版Claudeがこの数値を約1日半で67.2%まで引き上げたという結果を公表した。
その未解決問題であるリーマン予想は1859年以来解かれておらず、素数の分布に潜む構造を予言する。クレイ数学研究所は100万ドル(約1億5900万円)の懸賞金を懸けている。予想そのものは依然として未解決だ。Claudeが確定させたのは、零点の少なくとも3分の2が予想の通りに振る舞うという事実である。単独の結果としては、この記録の歴史で最大の前進となった。
投資の物語として重要なのは、その仕組みである。Claudeは、人間がすでに発表していた数学だけから証明を組み立てた。人間の専門家は文献の一部しか読めないが、Claudeは関連する文献を丸ごと読める。記録を動かしたのは、この違いだった。
650回の失敗を経て、約1日半で新記録を証明
アンソロピックは、エージェント型コーディングツールのClaude Code内で動く研究版Claudeにこの問題を与え、作業を任せた。実行の規模は、それ自体が1つの物語になっている。
・2回のセッションで計3100万の出力トークンを生成した
・モデルは約60のサブエージェントを展開し、シェルコマンドを2400回実行した
・最初のセッションでは候補となるアイデアが650件生まれたが、その全部が行き止まりだった
・新しい割合を証明したセッションは約1日半走り続け、数千個の既知のゼータ零点を使った数値計算で自らの主張を検算し続けた
最初のセッションは650回失敗した。2回目が記録を破った。失敗のコストがトークン代で済むなら、研究とはこういう姿になる。
別々に発展していた2系統の先行研究を、1つに束ねた
今回の証明は、既存研究の2つの系統を組み合わせている。1つはバルヨット、ゴールドストン、スリアジャヤ、ターネイジ=バターボーによる一連の論文で、モンゴメリーの古典的な手法をリーマン予想の仮定なしで使えるように改良した。もう1つは、ボンビエリが2000年に発表した論文である。材料は文献の中にそろっていた。Claudeの貢献は、先行研究が別々の断片として扱ってきたものを一括して扱った点にある。



