人工知能(AI)は、いずれ何百万人もの労働者が職を失うのではないかという不安をかき立ててきた。だが、MITスローン経営大学院のポール・オスターマン名誉教授は、AIがどれだけの雇用を奪うかだけに注目すると、すでに進行しており、AIによって悪化し得るもう1つの大きな労働力の変化を見落とすことになると指摘する。
オスターマンは近著『Disposable Workers: The Transformation of Employment』で、雇用主がすでに労働者へのコミットメントを弱めつつあることを示している。彼が6000人超の労働者を対象に実施した全国調査(米国)によれば、現在働いている従業員の35%が、彼の言う「使い捨て」にあたるカテゴリーに分類される。
この言葉は、オスターマンの定義では、請負労働者、フリーランサー、周縁的従業員の3つのグループを指す。請負労働者には、清掃員から派遣看護師(トラベルナース)、請負会社や人材派遣会社で働く人まで幅広く含まれる。フリーランサーには、Uberの運転手のようなギグワーカーから、副業でコンピュータープログラミングをする人までが含まれる。一方、周縁的従業員とは、組織の正式な従業員ではあるものの、キャリアの階段を上る機会が限られている人々を指す。
「例えば、非常勤講師や、法律事務所で実務を担当するスタッフ弁護士がそれにあたる。彼らがパートナー候補として検討されることは決してない」とオスターマンは語る。「こうした仕事は離職率が高く、組織内での将来性がない。全体として重要なのは、これら3つのカテゴリーの人々は組織の仕事を遂行しているにもかかわらず、組織は彼らに何のコミットメントもしていないという点だ。彼らは使い捨てなのだ」
この現象が生じている理由
オスターマンによれば、多くの雇用主にとって、使い捨て労働者の利用拡大は、姿勢の問題であると同時に経済的な問題でもある。彼は著書の中で、マッキンゼー・アンド・カンパニーの報告書『The State of Organizations 2023』を引用している。同報告書は、組織の価値の95%は従業員の5%によって生み出されているとしている。
「では、残りの人々について彼らは何を言っているのか。実のところ重要ではないと言っているのだ。そうした見方はかなり多く見られる」とオスターマンは述べ、この問題における姿勢の側面を説明する。
象徴的な例として、米国最大の会計事務所であるデロイトは今年、一部の管理、財務、ITサポート部門の従業員を対象に、新たに親になった従業員への休暇制度や家族形成手当の削減を発表したが、他の従業員には適用しなかった。記事が指摘しているように、これらの職種が、デロイトの顧客対応を担う会計・コンサルティング業務の中核ではなく、AIによって最も削減されやすい職務であることは、偶然ではないのかもしれない。



