ソフトウェア業界では、従業員にAIを使うよう求めることは容易だ。それは業界のDNAの一部だからである。私たちは新しいテクノロジーに適応し、ソフトウェアをコーディングし、新機能を開発し、エージェントを構築する。多くの人は、おそらくそれが好きでこの業界に入ったのだろう。
しかし、私のクライアントが属するトラック輸送のような業界では話が異なる。AIは彼らにとって当たり前の存在ではないにもかかわらず、サプライチェーン全体を急速に変革しつつある。トラック輸送会社や貨物ブローカーは、荷物と輸送力のマッチング、車両管理、そして請求プロセスの自動化による回収の迅速化のために、AIの活用を始めつつある。
テクノロジーはすでに用意されているが、現場のチームはまだ追いついていないかもしれない。
AIを導入するトラック輸送会社が成功を収めるためには、経営幹部から配車担当者、そしてドライバーに至るまで、全員がAIを使いこなすスキルを身につけ、それを実際に使おうという意欲を持つ必要がある。最終的に、テクノロジーの価値はそれを操作する人間によって決まるからだ。
語り方を変える
トラック輸送会社が市場で最高のテクノロジーに投資したとしても、配車担当者が「アルゴリズムに仕事を奪われるのではないか」と怯えていたり、ドライバーが「会社が自分たちを監視するための新たな手段にすぎない」と感じていたりすれば、そのソフトウェアは埃をかぶるだけになる。
特にトラックドライバーの平均年齢が47歳であるトラック輸送業界において、労働者はAIに対して慎重になりがちだ。彼らはスマートフォン、ましてやAIチャットボットを当たり前のように使って育った世代ではない。そのため、AIの導入が話題にのぼると、自分の仕事がどうなるのかという不安を抱きやすい。そして、その懸念には一理あるかもしれない。前年のマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究では、100万人以上のフルタイムの運輸セクターの従業員がAIの影響を受ける可能性があり、なかでも貨物取扱人やフォワーダーが最も脆弱な立場にあると推計されている。
物流企業はこの不安の根本原因に対処し、語り方(ナラティブ)を変えなければならない。人員削減のためにAIを使ったり、会社の強制命令として押し付けたりするのではなく、AIを代替品ではなく「役立つ相棒」として位置づける必要がある。このように位置づけることで、従業員の理解を得やすくなり、消極的な反発や積極的な抵抗を和らげることができる。
配車担当者はアルゴリズムには関心がないかもしれないが、AIが確実なルート計画を提示してくれることには関心がある。それによって、悪天候や渋滞、休息を必要とするドライバーへの対応といった、例外的な状況の管理に集中できるようになるからだ。
トラックドライバーにとって、AIの価値は日々の仕事をいかに楽にしてくれるかにある。ハンズフリーでの乗務記録や音声認識による更新、さらにはトラックを停車させてメールや書類を探さなくても、次の荷物をどこに降ろせばよいかを正確に指示してくれる機能などがそれにあたる。
AIがどのように企業の利益や株主価値を高めるか、あるいは人員をいかに削減できるかではなく、現場の痛み(不満や課題)をどのように和らげるかを示すことが重要だ。
チームのスキルを高める方法
現場の従業員が日々の業務におけるAIの有用性を理解したら、彼らのスキルを高め、AIを最大限に活用できるようにするためのいくつかのステップがある。
1. 従業員にツールと支援を提供する
私が勤めるPortProでは、従業員に対してAIスキルの習得とAIエージェントの構築を最優先事項として伝えた。しかし、彼らをいきなり厳しい環境に突き落として自力で泳がせるようなことはしなかった。代わりに、毎日のトレーニングセッションをスケジュールに組み込み、従業員がエージェントの作成方法を学べるようにした。その後、別の会議で、自分たちが構築したものを発表する機会を設けた。
トラック輸送会社における具体的なスキルアップの方法は、これとは異なるかもしれない。ドライバーがカスタムAIエージェントを構築することはまずないだろう(あるいは、そうしているかもしれないが)。しかし、大きな考え方は同じだ。従業員に使いやすいツールを提供し、それを学ぶ時間と余裕を与え、日々の業務で最も不満を感じている部分にそのテクノロジーを自由に適用できるようにすることだ。
動きの速いトラック輸送業界では、タイミングも重要となる。多忙なスケジュールで道路を走るドライバーにとって、1時間のトレーニングに参加するのは困難だが、短時間の動画や簡単な解説書であれば、隙間時間に確認しやすい。
2. AI推進役を見つける
どの車両基地にも、誰よりも早く新しいソフトウェアのアップデートを理解する配車担当者や、最新のアプリをいち早く試したがるテクノロジーに強いドライバーが1人はいるものだ。そうした人物を見つけ出し、権限を与えよう。彼らにAIのメリットを周囲に広めてもらい、同僚の指導役(メンター)になってもらうのだ。
ドライバーにとって、尊敬する同僚ドライバーからコツや活用法を聞くことは、本社からトップダウンで送られてくる社内通達を読むのとは、まったく異なる説得力を持つ。
3. 率先して手本を示す
経営幹部自身がAIを使っていないのであれば、従業員が関心を持つはずがない。PortProの経営陣である私たちは、自分たち自身が積極的に学び、構築していなければ、従業員が熱意を持ってAIを受け入れることを期待できないという意見で一致した。そのため、新入社員から上級役員に至るまで、全員が実際にAIに触れ、言語モデルを使用し、エージェントを構築するようにした。
同じ考え方はトラック輸送業界にも当てはまる。役員や運行管理者が、自らの業務を大量の紙の束や旧式のスプレッドシートで管理している一方で、現場の一般社員には高度なAIツールの使用を求めているようでは、その取り組みは失敗に終わる。リーダー自身が有言実行しなければならない。



