もしブースターとシップをともにタワーキャッチする場合、ブースターは打ち上げから約6分50秒後に発射台タワーに戻り、数時間のうちに撤去されるだろう。地球低軌道に投入されたシップは、高度200km超のパーキング軌道でスターリンクV3を軌道上に放出し、V3はイオンエンジンでさらに高度を350km前後まで上げ、実運用体制に入ると予想される。ブースターの撤去作業を待つ間、シップは初めての地球周回軌道を航行し続けるが、太陽電池パネルが展開されないことや、推進剤のボイルオフ(蒸発)などを考慮すれば、その運用は48時間以内である可能性が高い。
スターベースからのスターシップの打ち上げは、飛行コリドー(飛行経路)が限定されることから、その軌道傾斜角は26.5度前後に設定されると思われる。であれば、スターシップが地球を周回する間に地球も自転することから、スターベース上空を通過する機会は24時間に2度訪れることになる。
ただし、打ち上げから12時間後に訪れる南西から北東に抜けるルート(北上コース、昇交点側)は、着陸直前にメキシコの主要都市モンテレイなどの上空を低高度でパスするため、FAAから認可されない可能性が高い。そのため、スターベースへのアプローチは、北西から南東に抜けるルート(南下コース、降交点側)に限られ、シップが着陸できるチャンスは24時間に1回となる。おそらく予備として48時間後も設定されるのではないか。
着陸が24時間後であればシップは地球を16周する。その最終周回で実行されるラプター3エンジンの軌道離脱燃焼が正常に行われなければ、シップは制御されない状態で大気圏に再突入することになり、場合によっては地上に被害を及ぼす可能性もあるだろう。同時に、スペースXとNASAの後続計画に多大な影響を与えることになる。
スターシップの「海上発射台」構想
2023年4月、スターシップの初の飛行テスト(IFT 1)の直前にマスク氏が、「発射台を破壊せず、そこを通過(クリア)さえしてくれれば成功」と発言したように、地上施設への着陸が本格化する今後の飛行テストでは、タワーへの干渉が大きな懸念事項となる。
スペースXでは現在、スターシップの発射台としてスターベース(テキサス州)のパッド2(B)を使用している。その百数十メートル先には、11回目のテストまで使用されたパッド1(B)があるが、現在はスターシップV3仕様に合わせて改修作業が続いている。


