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2026.08.26 11:00

美しさは、循環から生まれる ukaとJTが挑む「リジェネラティブ・ビューティ」の産業化

トータルビューティカンパニー「uka」が、日本たばこ産業のコーポレートR&D組織「D-LAB」と「循環研究所」を始動した。

美容は、人と地球の循環を再生できるのか。日本各地に眠る植物原料の価値を見つめ直す、新しい美のかたちを探る。


「発端のすべてはサロンでした」と話すのは、uka代表取締役CEOの渡邉弘幸(写真。以下、渡邉)。

トップネイリストとして活躍する妻・渡邉季穂の祖父が創業した美容室(現・uka)に高校時代から通い、ファッション誌の現場にも触れてきた彼にとって、「美容に携わる人は、見た目だけでなく人を明るくし、場を温める存在」だった。

その後、大手広告代理店・博報堂で約20年間ブランディングを学び、2009年に同美容室をトータルビューティカンパニーukaへとリブランディング。長年培ってきた知見と、現場で紡いできた数々の縁という宝物を、この新たな生命体に注ぎ込んだ。

美しさのための原料探しが日本の地域資源へとつながった

顧客のライフステージの変化に寄り添うなかで見えてきたのが、ケミカルな成分による身体への負担だった。ヘアカラーを長年繰り返すことでジアミンアレルギーを発症するサロン技術者や顧客が増えていたのだ。

「サロンとしてどのようなオルタナティブを提供できるか」。ここからukaの原料探しは始まった。当初、オーガニックコスメの世界では、ブルガリアンローズやアルガンオイルなど海外の名産原料が高い価値をもっていた。ukaもまた、そうした流れに学んできたが、コロナ禍で海外の現場を見ることができない。そして、渡邉の視線は日本国内へ向かう。

「日本列島には、親潮と黒潮という二大潮流が入り混じることで、特異で多様な生態系がもたらされる。この水循環が織りなすワイルドハーベスト(野生採取)の力やメイド・イン・ジャパンと誇れるものに向き合う必要があると直感しました」

原料の向こうに見えた、人と地球の循環

日本固有の地域資源を巡るなかで、渡邉は美容の枠を超えた壮大な「Regenerative Beauty(リジェネラティブ・ビューティ)」という思想に行き当たる。鍵となったのは、渡邉自身が何より大切にしてきた人との出会いだった。

ケミカルな染髪剤の代替となる原料を探し求めてたどり着いたのが、沖縄・石垣島にある玉城享子の自社農園「うたきの杜」である。隆起サンゴ礁由来のミネラル豊富な土壌で丁寧に育てられるヘナは、高齢化が進むサトウキビ農家の負担を減らす新たな産業としての可能性も秘めていた。

一方、静岡県・伊豆下田で出会ったクロモジの生産者は、サーファー仲間であり、元東海大学海洋学部准教授の佐藤延男だった。

クロモジがもつ抗菌作用の可能性には以前から着目していたが、佐藤との対話から、それが海の生態系と深く結びついている事実を知る。高度経済成長期に植林されたヒノキやスギの人工林が放置されたことで土壌が痩せ、海藻を枯らす「磯焼け」の一因になっていたのだ。

「私たちが仲間とともに森に入り間伐を始めると、木漏れ日が入り、落葉樹が戻ってきました。落ち葉によって腐葉土ができ、ミネラル豊富な雨水が海へと流れ込んで再び海藻が育つ。その循環のなかでクスノキ科のクロモジが生え、今度はその成分が、人間の頭皮環境を整えてくれるのです」

これこそが、トータルビューティカンパニーukaが提唱するリジェネラティブ・ビューティの神髄である。森を再生することで多様性が戻り、製品がつくられることでクロモジに対価が支払われ、その対価が新たな森の再生につながっていく。

生態系の能動的な再生と、地域経済の発展というエコシステムが組み込まれているのだ。

「人間が、人間の業によって壊してきたものを元に戻してあげることで自然は確実に回復し、そこから恵みが生まれる。人も自然の一部なので回復していくのですね」

実際にこの思想をかたちにしたIZUシリーズのヘアケア製品は、「消費者の理解を得られるのか」という不安をぬぐい去るように共感を呼んでいる。

渡邉の言葉からは、経済活動と自然の循環が同期する確かな手応えがにじむ。

循環研究所が目指す、美容の新しい研究基盤

美と自然に親しむクリエイターは、数々の出会いを宝物に変えながらリジェネラティブ・ビューティの扉を開いた。そしてこの取り組みをグローバルに通用する産業モデルへと昇華させるために始動したのが、JT「D-LAB」と共同で26年5月に設立した「循環研究所(Regenerative Lab)」だ。

ではなぜ、JTだったのか。渡邉は「植物を価値化する能力」が重要だと語る。

「体験と思想だけでは世界へは出ていけません。植物の恵みを経済として成立させ、地域へ豊かさを還元するには、植物を『価値化』し、消費者が納得できる環境構築が必要です。JTさんは植物の観察から生産者の育成、商品化に至るまで圧倒的な能力をおもちです。これまで美容の世界で感覚的に語られがちだった心地よさや有用性を、科学的に可視化するため、その知見から多くを学びたかったのです。また、『D-LAB』が探究する人々の暮らしや文化に根ざした新しい価値を探求しようとする姿勢にも共感しました。短期的な成果だけでなく、これからの時代の豊かさを共に考えられるパートナーだと感じました」

ヘナとインディゴを使用したuka石垣シリーズのヘナカラ ー、クロモジ・フノリなどを配合したuka IZUシリーズの ヘアケア商品。石垣島の自社農園で育つ植物を用いた スキンケア商品も揃う。
ヘナとインディゴを使用したuka石垣シリーズのヘナカラ ー、クロモジ・フノリなどを配合したuka IZUシリーズの ヘアケア商品。石垣島の自社農園で育つ植物を用いた スキンケア商品も揃う。

現在、美容市場では「どんな成分が、どのような効果をもたらすか」を競う成分ドリブンが主流となっている。

しかし、循環研究所が見据えるのはその先だ。伊豆のクロモジと石垣島のヘナを起点に、その土地の土壌や気候、文化といった「テロワール」を含めた一次原料そのものの価値を証明していくという。科学的に証明できれば、日本固有の地域資源が世界で存在感を示す日も遠くはないだろう。

美しくなることが、地域や地球を豊かにする未来へ

循環の輪は、すでに地域で回り始めている。石垣島では市と協力してヘナの農業組合を設立し、ヘナ農家を増やす取り組みが進む。

南伊豆では森林組合とともに、間伐とクロモジの植生回復を計画的に進めている。

「私たちの取り組みに賛同し、ともに汗を流す現地の仲間たちが、地元のヒーローになりつつあるのは本当にうれしいことですね」と渡邉は感慨深げに話す。

美しくなることが、地域や地球の豊かさにもつながっていく。そう聞くと、理想論のように思えるかもしれない。

だがukaの強みは、サロン現場で生まれた顧客の切実な課題を出発点とし、生産者との信頼関係を築き上げた先にある、極めて実践的なものづくりにある。

「短期的なビフォーアフターを追い求めるのではなく、自分自身を整え続けていく。その美しくなるための習慣が地域や地球の豊かさへと循環していくことが、これからのウェルネスの中心になるでしょう。そうしたものづくりこそが価値あるものだということをJTさんと共に追求し、日本の一次産業や自然環境のポテンシャルを社会に示していきたい。ものづくりの工程で、ケアしなければならないアングルは今までより2つや3つは増えるでしょう。ただ、リジェネラティブにはそういった気配りこそが重要だということを、より多くの人々と共有したいと思っています」

より自然な方法で、人も地球も心地よく循環する方へ。ukaとJT D-LABの共創は、そのウェルネスの価値を科学の言葉でひもとき、世界へと開こうとしている。

D-LAB
https://www.jti.co.jp/dlab/index.html


わたなべ・ひろゆき◎uka代表取締役CEO。博報堂を経て2009年に入社し、トータルビューティカンパニーukaへのリブランディングを推進。教育機関やR&D、ukafeの立ち上げにも携わる。一般社団法人アジアビューティアカデミー(ABA)理事長、一般社団法人BEAUDOUBLE理事。

promoted by D-LAB | text by Sei Igarashi | photographs by Masahi ro Miki | edited by Akio Takashi ro