はたから見れば、多くのハイパフォーマーは万事うまくいっているように思える。肩書を手に入れ、輝かしいキャリアを築き、信頼を獲得し、どんな時でも頼れる人という評判を確立している。ところが、その見事な経歴の裏側では、疲れ果て、不安を抱え、感情が麻痺してしまい、仕事のせいで健康や人間関係が損なわれるとわかっていながら、働くことを止められない人もいる。
輝かしい経歴の裏で、人知れず崩壊するハイパフォーマー
私はこれまで、ハイパフォーマーと、そうでない人を分けるキャリア習慣や、成功を加速させる働き方について書いてきた。しかし、留意すべき点がある。優れた実績や過剰労働には、燃え尽きを超えた危険が潜んでいることを認識しなくてはならない。
臨床心理士のアンジェリカ・ペレス=リトウィン博士によれば、この問題は、従来からよく話題にされる「仕事による燃え尽き」を超えるものかもしれないという。同氏は、著書『The Great Unraveling: The Silent Crisis of High Achievers and the Path to Career Harmony(大きなほころび:ハイアチーバーの静かな危機と、キャリアの調和へ向けた道のり:未邦訳)』のなかで、燃え尽きよりも深刻なパターンを「キャリアの苦痛反応(Career Distress Response)」と呼んでいる。
ペレス=リトウィン博士は本書のなかで、「燃え尽きは、仕事で消耗した状態だ。一方、キャリアの苦痛反応は、アイデンティティが仕事と融合した状態だ」と説明している。燃え尽きと、キャリアの苦痛反応を区別することが重要だ。そうすることで、休暇や、境界線の設定、ウェルネスの実践、業務負担の削減といったおなじみの解決策では、一時的な効果しか得られない場合がある理由が見えてくるからだ。
キャリアの成功に心理的に依存してしまうと、仕事はもはや、単なる「やること」ではない。自分は価値があり、有能で、立派で、必要とされる人間であることをひたすら証明しようとする場となる。
仕事の実績がアイデンティティになる時
仕事で実績を積むと、人から認められ、評価され、一時的に感情的な安心感が得られる。昇進したり、何かを受賞したり、プロジェクトを成功させたりすると、自分は仕事をうまくこなしており、重要な人物なのだという安心感を、ほんのつかの間、感じられる──とはいえ、そうした安心感はすぐに消えてしまう。
そこで、別の目標が掲げられ、別の納期が設定される。別の業績を上げなければ、「自分には十分な能力がある」という感覚を維持できないからだ。充実感は長続きせず、成功することで自分の力を証明し、成果を上げ、達成し続けるという、終わりなきサイクルが生まれてしまう。
ペレス=リトウィン博士によれば、実績とはある種の「鎧」だ。野心や責任感、規律、卓越性といった資質は、強みとして始まる。しかし、それらは徐々に、不安や罪悪感、恐怖や空虚さを解消するための生存戦略へと姿を変えていく。
その時はもはや、自らの意思で実績を上げようと望んでいるわけではない。実績は、自尊心を保つための第一の手段となっている。その結果、はたから見ればキャリアで大成功を収めているようでも、内心では崩れ落ちていくような感覚を覚えている場合がある。



