従業員の「自己犠牲」を賞賛するリーダー
ペレス=リトウィン博士によれば、組織は、最も頼りにしている従業員に悪影響を与えかねない行動であっても、むしろそうした行動を高く評価し、報いる傾向があるという。例えば、どんな時でも「イエス」と応じ、夜遅くでもメールに返信し、週末を犠牲にして働き、本当の意味での休暇を決して取らない従業員は、会社に忠実で、責任を果たし、不可欠な存在として称賛されがちだ。
過重労働は、表面的には献身的な行いに見える、とペレス=リトウィン博士は指摘する。しかし、働きすぎの従業員は内心で、強迫観念にとらわれているのかもしれない。リーダーは、どんな時でも常に対応してくれる従業員を賞賛し、自分を犠牲にしてまで過剰に働く「英雄的な」姿勢に褒賞を与え、「信頼できるから」という理由で同じ従業員に何度も追加業務を与えることで、こうしたパターンを意図せず強化しているおそれがある。
従業員の優秀さを賞賛しているつもりかもしれないが、実際には、従業員の感情的な消耗や、健康の悪化、人間関係の破綻、パフォーマンスの低下へとつながるサイクルを強化させている可能性がある。特定のチームメンバーが常に追加業務を引き受けている場合は、そうした行いによって、その人自身と組織がどれだけの悪影響を被っているかを検証すべきだと、ペレス=リトウィン博士は助言している。
「キャリアの苦痛」から「キャリアの調和」へ
休暇を取ったり、境界線を引いたり、ウェルネス習慣を取り入れたりすることが有効な時もあるが、根本的な問題が、仕事量というよりもアイデンティティにある場合には、効果が得られない可能性がある。仕事での実績を心のよりどころにするような自尊心の持ち主であれば、休暇を取ること自体を脅威ととらえてしまいかねない。仕事から離れると罪悪感を覚え、責務を減らすと不安にかられるかもしれない。休暇ですら、「正しくこなすべきタスク」の一つになってしまうことがあるのだ。


