リーダーシップ

2026.08.13 14:56

AIは企業研修をどう変革しているのか

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企業が人工知能(AI)への投資を加速させるなか、多くの企業が社員研修(コーポレート・ラーニング)を根本から再構築しなければならないと気づき始めている。従来の学習・人材開発モデルは、もはや十分ではない。これからの組織にはキャリア開発のプロセスにAIを組み込み、それぞれの職務に即したパーソナライズされた学習を提供することが求められる。

この変化は、最近の調査にも現れている。フェニックス大学が2026年にCスイートリーダー150人を対象に実施した調査によると、経営幹部の10人中9人が、AIが価値を生み出せる最も重要な人事機能として学習・人材開発を挙げた。これは2025年の74%から上昇している。

企業における研修への総支出額が2024年の980億ドル(約15兆6000億円)から2025年には1028億ドル(約16兆4000億円)へと増加した一方で、外部の学習製品やサービスへの投資はそれをはるかに上回るペースで成長し、124億ドル(約1兆9700億円)から160億ドル(約2兆5500億円)へと29%増加した。この急激な伸びは、AIを搭載した学習プラットフォームやパーソナライズされた学習体験、そして従業員のリスキリングを加速させる専門的な学習パートナーに対する企業の需要が高まっていることを示している。

学習プロバイダーもこの変化に対応している。たとえば、フェニックス大学は最近、学生の学習体験にAIを統合するため、OpenAIとの協業を発表した。AIを活用し、よりパーソナライズされ、魅力的で効果的な学習を大規模に提供することを目指している。

企業がAIを活用した学習への投資を増やすにつれ、研修部門のリーダーの役割は、単にコンテンツを作成することから、測定可能なビジネス成果をもたらすパーソナライズされた学習体験をキュレーションすることへと進化している。

この変革は、単にAIツールを導入するだけにとどまらない。学習機能の目的そのものを、コースを設計することから、業務をしながらパーソナライズされた学習を可能にすることへと再定義するものだ。

マース、GEヘルスケア、マッキンゼーの事例は、管理職育成、インターンシップ、新入社員のオンボーディング(受け入れ)研修にAIを統合するこの変革が、実践においてどのようなものかを示している。

マース:新任管理職研修にAI搭載の実践トレーニングを導入

マース大学(Mars University)は、マース インコーポレイテッドの企業内研修部門であり、従来のコンテンツ配信モデルから、AIを活用したモデルへと能力開発機能を再定義する取り組みを進めてきた。同部門は、約1500人の新任管理職を対象とした研修プログラムを刷新した。従来は、自主的なオンライン学習に、講師によるバーチャルおよび対面のセッション、そして実務経験(OJT)を組み合わせたブレンディッド・ラーニング方式をとっていた。このプログラムの修了には16カ月を要し、20人のインストラクショナル・デザイナーや専門家からなるチームが多大な労力を費やし、世界中の管理職向けに教材の設計、更新、翻訳、展開を行うために約100万ドル(約1億5900万円)のコストがかかっていた。

現在、この新任管理職向けプログラムは、講師主導のセッションと、受講者の職務や機能に合わせてパーソナライズされたAIコーチング、AIシミュレーション、ロールプレイングを組み合わせたハイブリッドな体験へと生まれ変わっている。

マース大学のラーニング担当バイスプレジデントであり、この新しい新任管理職プログラムの設計者であるコーリー・ムニョスは、「学習の本当の尺度は、コンテンツの消費ではなく実践にある。意図的な実践は、応用、内省、反復を通じて、初めて管理職に就く人が職場で実践する前に新たなスキルと自信を身につけることを助ける」と考えている。

この変革の初期の成果として、製造部門の受講者の100%がAIを活用した実践セッションに参加しており、研修チームは9週間のプログラム全体を通じて受講者がどのように進歩しているかを可視化できている。重要なのは、この体験が受講者一人ひとりにパーソナライズされており、社内での役割に応じて異なるロールプレイングのシナリオやコーチングの指示が提供される点だ。ムニョスは「ポケットの中に自分だけのAI家庭教師がいるようなものだ」と語る。

GEヘルスケア:インターンシップにAIを活用しスキルギャップを埋める

毎年、GEヘルスケアの「コマーシャル・リーダーシップ・インターン・プログラム」では、大学新卒者を選抜して12週間のインターンシップを行い、製品の上市やセールスキャンペーンなどのプロジェクトに携わらせている。インターン終了後、彼らはGEヘルスケアのフルタイムの「コマーシャル・リーダーシップ・プログラム(CLP)」への採用に向けて評価される。

GEヘルスケアの研修部門の目標は、コンテンツの作成、配信、管理、定着にAIを統合し、パーソナライズされた学習体験を構築することだ。これは、AIを活用してインターンが顧客エンゲージメントやビジネスコミュニケーションにおける重要スキルを実践し、応用できるようにすることで実現されている。

GEヘルスケアのラーニング・テクノロジー&AI担当ディレクター、アダム・ロースナーによると、このプログラムの主な目的の1つは、インターンを実際のビジネス課題に直面させ、単に疑問への答えを得るのではなく、問題の解決策を見つける方法を学ばせることだという。

ロースナーは、受講者がAIを相手にロールプレイングを行う最大のメリットの1つとして、心理的安全性が確保されることを挙げる。これにより、受講者は難しい会話の練習をしたり、新しいスキルを学んだりすることができ、自信とスキルが身についたと実感できるまで、同じシナリオを何度でも繰り返すことができる。

その成果は顕著だ。GEヘルスケアでは、プログラム修了後に正規採用の内定を得るインターンの割合が増加した。同時に、受講者がAI搭載のロールプレイング・シナリオに取り組む時間を設けることで、従来のコンテンツ開発にかかる費用も節約できた。

マッキンゼー:新入社員研修にAIを統合

新入社員のオンボーディングは、多くの企業にとって依然として課題である。多額の投資を行っているにもかかわらず、多くのオンボーディング・プログラムは従業員の意欲を引き出すことができず、新たなテクノロジーを活用できていないか、測定可能なビジネス成果を示せていない。マッキンゼー・アンド・カンパニーは、毎年何千人もの新入社員をサポートするグローバル・オンボーディング・プログラム「Embark」で、この状況を変えようとした。このプログラムは、スキル開発をより迅速に行うと同時に、組織全体でのスキル向上の測定可能な証拠を示すように設計されている。

マッキンゼーのラーニング・イノベーション部門グローバル・ヘッドであるリサ・クリステンセンは、講師主導の学習とAIを活用したスキル実践を組み合わせることで、Embarkを刷新した。このハイブリッドなアプローチによりオンボーディングがパーソナライズされ、新入社員はコンサルティングの重要なスキルを実践し、即座にフィードバックを受け、問題解決やコミュニケーションの習熟度を高める機会を得られるようになった。

Embarkで教えられる核心的なスキルの1つが、MECE(相互に排他的で、全体として網羅的)の原則に基づくマッキンゼーのコミュニケーション手法である「ストーリーライニング」だ。ストーリーライニングは、コンサルタントが複雑なビジネス課題を、明確で論理的、かつ包括的な提言として整理するのに役立つ。新入社員のコンサルタントはストーリーライニングを学ぶことで、複雑なビジネス上のアイデアを、重複のない明確な議論として構築できるようになり、クライアントから「この点については検討しましたか?」と尋ねられるのを防ぐことができる。

クリステンセンは次のように語る。「AIを活用したスキル実践を導入したことで、新入社員のコミュニケーションスキルは約20%向上し、プログラムの提供、コンテンツ開発、講師の拘束時間において10〜20%の効率化が達成された」

刷新されたEmbarkプログラムは、AIが学習における人間同士のつながりを置き換えるのではなく、強化できることを証明している。マッキンゼーは、AIによる実践と、講師主導のセッションおよび同僚との交流を組み合わせることで、コンサルティングの核となるコラボレーションやコーチングを維持しながら、スキル開発を加速する、よりパーソナライズされたオンボーディング体験を構築した。

企業研修の変革:コンテンツ開発から「学習のキュレーション」へ

企業研修を再定義するためには、AIツールを配備するだけでは不十分だ。重要なビジネスや人材の課題に即して学習体験を再設計し、仕事と学習がシームレスに融合する方法を再考する必要がある。企業研修においてAIがもたらす最大の機会は、よりコンテンツを増やすことではなく、学習をパーソナライズし、従業員にスキルを実践して向上させる機会を提供することにある。

マース、GEヘルスケア、マッキンゼーの経験は、重要な教訓を示している。企業内学習の未来を形づくるのは、AIを導入する組織というより、AIを軸に学習を再設計する組織である。

forbes.com 原文

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