サイエンス

2026.08.17 17:00

毒ヘビもハチの巣も食べてしまう、小さな猛獣ラーテルの秘密

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2010年代前半、インターネット上の誰もが、ある小さくみすぼらしい肉食獣のとりこになった──その動物の名前は、ラーテル(日本での別名はミツアナグマ、学名:Mellivora capensis)。

爆発的にバズった「Honey Badger Don't Care(ラーテルは気にしない)」という動画で、ラーテルは、制御不能な無敵のモンスターのように描かれていた。ライオンに向かって突進し、ハチの巣を破壊し、コブラに噛まれても、まるで蚊に刺されただけのように平然としている。

珍しいことに、現実のラーテルは、このミーム動画と同じくらい常識外れの動物だ。もちろん、ラーテルといえども無敵ではない。コブラの毒はラーテルにとっても有害で、場合によっては、噛まれて死ぬこともある。だが、生物学者たちの研究により、ラーテルが驚くべき進化的適応の数々を獲得し、ヘビの毒に高い耐性を備えるようになったことがわかっている。彼らはとりわけ、コブラおよびその他のコブラ科のヘビが用いる、神経毒に対して耐性を持っている。

こうした適応は、単なる偶然ではない。ラーテルは、ほとんどの哺乳類が賢明にも避けて通る危険な獲物を、日常的に捕食する。毒ヘビは、ラーテルにとって定番の夕食だが、ラーテルが進化の歴史のなかで繰り返し直面してきた生態学的試練でもある。こうした現実がラーテルを、進化が生んだなかでも、最も特殊化した小型肉食獣の一つへと変えたのだ。

毒ヘビに対する分子レベルの防御

コブラは、ヘビ亜目のなかのコブラ科(Elapidae)と呼ばれる分類群に属し、獲物と捕食者を無力化させる神経毒を主な武器とする(神経毒は、組織そのものを破壊するのではなく、神経系を攻撃する)。獲物や捕食者の体内に放出された神経毒は、筋細胞の表面にある直接の標的、ニコチン性アセチルコリン受容体に精密に作用する。

この受容体は通常、分子レベルの配電盤のような機能を担っている。神経細胞が放出する神経伝達物質の1種アセチルコリンが、この受容体と結合することで、筋肉が収縮するのだ。呼吸も、運動も、嚥下も、すべてはこのコミュニケーションが円滑に進むかどうかにかかっている。そして、コブラの毒がシステムに侵入すると、すべてが異常をきたす。

具体的な作用機序として、αニューロトキシンと呼ばれる神経毒の多くは、アセチルコリンが結合する前に、この受容体と結合する。こうしてブロックされた受容体の数があまりに多くなると、筋細胞は、神経細胞からのシグナルに一切応答しなくなり、やがて麻痺を発症する。遅かれ早かれ、呼吸をつかさどる筋肉が完全に機能を停止する。噛まれたのがヒトであれば、短時間で死に至ることもある。

ところが、ラーテルは部分的ながら、神経毒に対抗する生化学的な回避手段を進化させた。2015年に学術誌『Toxicon』に掲載された論文で、研究チームは、毒ヘビとの相互作用が知られる複数の種の哺乳類に関して、毒への耐性を詳細に調べた。するとラーテルでは、毒ヘビの神経毒の標的である受容体に変異が見られることが明らかになった。つまりラーテルは、進化の過程で、神経毒という「鍵」がフィットするはずの「錠前」に、細工を施すことに成功したのだ。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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