ユネスコ(国連教育科学文化機関)は毎年、「顕著な普遍的価値」があると認められる景観、都市、考古遺跡、文化的ランドマークを世界遺産リストに新たに追加している。その中には、すでに誰もが知っているような有名な場所もあれば、旅慣れた人でさえ耳にしたことがないような場所もある。
2026年に新たに追加された世界遺産には、その両方に該当するものが揃っている。
先ごろ開催された世界遺産委員会において、ユネスコは19件の文化遺産、5件の自然遺産、1件の複合遺産の計25件をリストに追加した。その中には、フランス・ノルマンディー地方の「1944年のノルマンディー上陸作戦の海岸群」や、ギリシャの「 オリンポス山周辺地域」、青と白の街並みが美しいチュニジアの「シディ・ブ・サイドの村」など、何十年もの間、旅行者が訪れてきた場所が含まれている。一方で、あまり馴染みのない場所も数多くある。モンゴルの「匈奴(きょうど)の貴族の墓地遺跡群」、ブラジルのゴムブーム時代に建てられた壮麗な「アマゾニアの劇場群」、そして世界の磁器交易の発展を支えた窯(かま)を擁する中国の「景徳鎮(けいとくちん)の手工芸磁器産業遺産群」などだ。
また、今年は3カ国が初めて世界遺産リストに名を連ねた。コモロは、インド洋を行き交う多様な文化によって形成された、数百年前の交易都市群である「コモロの歴史的スルタン領のメディナ」で初の登録を獲得した。サントメ・プリンシペは、プランテーション農業と強制移住という困難な歴史を伝える植民地時代の農園跡「サントメとプリンシペのロサ(農園)群:植民地農業システムと強制移住」で登録を果たした。そして、南スーダン初の世界遺産となった「ボマとバディンギロにおける動物の渡りの景観」は、陸生哺乳類の移動としては世界最大規模の舞台となる、広大なサバンナ、湿地、氾濫原(はんらんげん)を保護している。
米国でも、ジョージア州の「オケフェノキー国立野生生物保護区」が、新たな自然遺産として登録された。
旅行者にとって、今回の新規登録は地図を広げて旅行の計画を立てる十分な理由になる。イランにある中世の「アラムート城と関連要塞群」を探索するのも、カザフスタンの「マンギスタウの岩窟モスク群と関連する聖地群」を訪ねるのも、ヨルダンの「アカバ海洋保護区」でサンゴ礁の海に潜るのもいいだろう。ここでは、新しく登録された世界遺産のなかから、特に魅力的なスポットを紹介する。
オケフェノキー国立野生生物保護区(米国)
ジョージア州オケフェノキーの40万エーカー(約16万2000ヘクタール)を超える広大な保護区では、お茶のような褐色を帯びた水路が、イトスギの木々や浮き島の間を縫うように流れている。ここには、アリゲーターやアメリカグマ、カナダヅルなど、何百種もの鳥類や野生動物が生息している。この湿地帯は、北米最大級のブラックウォーター(腐植質に富んだ酸性の水)湿地エコシステムの一つであり、ユネスコはその生物多様性と、泥炭地、森林、湖、湿地を絶えず変化させる自然の力(特に水と火)を評価して世界遺産に登録した。



