成功の古い定義を引きずる背景
ほとんどの人は両親や教師、上司、同僚、あるいは業界の文化そのものから得た情報を基に、成功したキャリアとはどのようなものかという考えを何年もかけて積み重ねていく。どういった肩書きが立派なのか、どのような機会を望むべきなのか、次に進むべき論理的なステップは何なのかを学び、そうした考えはあまりにも身近なものとなり、やがて意識しなくなる。
20年間かけて専門性を築き、上級職にまで到達したと想像してみてほしい。その後、業界が変化したり会社が組織再編を行ったり、あるいは別の方向へ進むことを決心したりする。あなたはうまく適応する。必要なことを学び、新たな機会を見つける。それでもその新しい機会を以前の地位や影響力、収入、評価と比較し続ける。その尺度で測ればあらゆる新しいものは後退したように感じられてしまう。
キャリアチェンジが自分で選択したものだった場合、問題はさらに複雑になる。自ら進んで追求したものなのに、なぜ不満を感じるのかと疑問に思うかもしれない。実際の問題はすでに下した決断を評価する際に用いている基準にある可能性があるのに、また別の変化を求めてしまうことがある。
方向性がなくても前進できる理由
適応力の高い人は物事をうまくこなすことに長けていることが多い。新しいシステムを与えられたり、不慣れな環境に置かれたり、期待されることが変わっても順応する。その能力のおかげで、自分が今なお望んでいるものに向かって進んでいるのかどうかを自問することなく長い間前進し続けることができる。
次の課題に対応することがあまりに得意になると、その都度うまく適応できたことが、さらに前進すべきという根拠になっていくかもしれない。昇進を受け入れたり、より大きな役割を引き受けたりする。別の業界が有望に見えれば、そちらに飛び込むこともある。それぞれの決断は理にかなっているものの、数年後、自分が築き上げたキャリアを振り返ったとき、なぜ期待していたような感覚が得られないのかと不思議に思うこともある。
適応力のある人が今、仕事に求めているもの
キャリアを変えることが混乱を招く理由は、1つには仕事に意味を与えるものが時間とともに変化しうることが挙げられる。30歳のときに活力を与えてくれた仕事が50歳や60歳では全く違って感じられることもある。数年という短い期間であっても、人生の大きな出来事や新たな責任、経済状況の変化、あるいは職場での経験によって自分が大切にするものは変わり得る。
もっと探究し、学ぶ機会を求めるようになるかもしれない。別の人はつながりや緊密な協働をより重視するかもしれない。何か新しいものを生み出すことに最もやりがいを感じる人もいれば、より大きな影響力や社会にインパクトを与えることを求める人もいる。こうした動機は互いに重なり合うこともあり、人生の変化とともに変わっていくこともある。
他人の「成功したキャリア」のパターンをそのまま真似しても、長期的にはうまくいかないことが多いのはこのためだ。2人が同じように昇進してもその経験は全く異なるものになり得る。1人は影響力が増したと感じ、活力を得る。もう1人は会議が増え、創造性を発揮する機会が減り、本当に好きな仕事をする時間が少なくなったと感じる。適応力が非常に高ければどちらの状況でもうまく成果を出せるかもしれない。しかしより重要な問いは「あなたがそれを望んでいるのか」だ。


