オーストラリアのシンクタンク、ローウィー研究所が発行するニュースレターに寄稿したピアソンは、銅市場の歪み、とりわけ製錬工程を経て金属に変えられる銅精鉱の市場の歪みが、地政学上のチョークポイントへと一気に発展しかねないと指摘した。
「かつてない高値がついているにもかかわらず、(銅の)サプライチェーンのうち製錬・精錬の部分は締め上げられています」とピアソンは言う。
「製錬所が銅を処理する対価として受け取る加工賃、いわゆる製錬・精錬費(TC/RC)は過去最低の水準にあり、マイナスにさえなっています。製錬所のほうが処理するためにお金を払っている状態です」
起きているのは、他の産業で見られた事態の再現だ。中国は銅の製錬能力を極端に過剰なまでに増強し、価格を押し下げて、他国の競合を事実上つぶしてきた。レアアースで起きたこととほぼ同じであり、EVでも同じことが進行している。
「中国の製錬所は大半が国有で、手厚い補助金を受けています。それが世界の競合を追い詰めているのです」とピアソンは指摘する。
「2005年以降、銅の製錬生産量の伸びの90%以上を中国が占めてきました」
中国の銅製錬所の稼働率は85%とされる一方、西側諸国の製錬所は70%を下回るまで落ち込んでいる。
閉鎖に追い込まれる西側の製錬所
「中国以外の製錬所は、減産にとどまらず、閉鎖にまで至っています」とピアソンは言う。
オーストラリアをはじめ、操業を続けるために政府の救済を必要とした国もある。
「重要なのは、西側の鉱山会社と製錬所が緊密に手を組み、多様な銅製錬市場をより長く生き延びさせられるかどうかです、そのためには鉱山会社の利益率をいくらか削ることになるかもしれません。しかし、世界の銅精鉱取引を事実上独占しようとする中国政府の歩みを遅らせるには、その代償を払う必要があるのかもしれません」


