気候・環境

2026.08.13 08:00

世界の石炭消費量、25年に過去最大に 石炭火力発電は減少しているのになぜ?

Adobe Stock

Adobe Stock

世界の石炭消費量は2025年、過去最高値を更新した。これは、化石燃料を段階的に廃止すべきだという近年の議論とは一見矛盾しているように見える。だが、この数字だけでは全体像は把握できない。

英業界団体エネルギー研究所(EI)が発行した「世界エネルギー統計レビュー」によると、25年の世界の石炭消費量は前年比0.7%増加し、166エクサジュール(エクサは10の18乗)となった。他方で、石炭による発電量は減少している。25年の世界の石炭火力発電量は前年比0.3%減の1万511テラワット時だった。

これら2つの傾向は必ずしも矛盾するものではない。石炭は発電だけでなく、製鉄やセメント製造などにも利用されているからだ。また、先進国では石炭消費が減少している一方で、工業化が進むアジア諸国では依然として石炭が深く根付いているという背景もある。

石炭消費量、絶対量では過去最高だが

石炭消費量は絶対量では過去最高を記録したが、エネルギー需要全体の伸びには追いつかなかった。世界の総エネルギー供給量は、24年の592.2エクサジュールから約1.4%伸び、25年には600.3エクサジュールへと増加した。石炭の伸びはこれより緩やかだったため、世界のエネルギー構成に占める石炭の割合は27.9%から27.7%へと低下した。つまり、石炭の消費量は過去最高値を更新したものの、エネルギー消費全体に占める割合はわずかに減少したことになる。

エネルギー全体に占める割合が低下しても、絶対量では増加し続けるという現象は、エネルギー転換期によく見られる現象だ。世界のエネルギー需要は増加傾向にあるため、市場全体に占める割合が低下したからといって、必ずしも消費量が減少するわけではない。

適切な比較対象として、再生可能エネルギーを見てみよう。25年の再生可能エネルギーの供給量は前年比10%近く増加し、石炭の伸びを大きく上回った。しかし、世界のエネルギー需要は、再生可能エネルギーの成長と過去最高を記録した石炭消費を同時に支えるほど大きかった。

石炭は「アジアの燃料」へ

石炭市場の最大の特徴は、地理的な集中だ。25年のアジア太平洋地域の石炭消費量は138.1エクサジュールに達し、世界全体の83.2%を占めた。中国単独での石炭消費量は92.2エクサジュールで、世界全体の55.6%に相当する。インドは23.1エクサジュールを消費し、世界全体の13.9%を占めた。中国とインドを合わせると、世界の石炭消費量の7割近くを占める。インドネシアを加えると、これら3カ国で世界全体の73%近くを消費したことになる。

だからこそ、石炭の段階的廃止に関する大まかな主張は誤解を招きかねないのだ。欧米では石炭の利用が着実に減少しているが、アジアはそうではない。

25年の世界の石炭消費量の85.2%を非経済協力開発機構(OECD)諸国が占めた。これらの国々の石炭消費量は、過去10年で年平均1.9%のペースで増加している。対照的に、OECD諸国の消費量は年率4.8%のペースで減少している。

25年の欧州の石炭消費量は世界全体の4.4%にとどまった。欧州連合(EU)加盟国に限ると、石炭消費量は前年比3.2%減少し、世界全体に占める割合はわずか2.8%となった。

このように、世界の石炭消費量を見ると、全く異なる2つの傾向が浮かび上がってくる。1つは、先進国の大部分で石炭利用が長期的に縮小していること。もう1つは、巨大な人口を抱えるアジアの成長著しい国々では、石炭が依然として重要な役割を果たしていることだ。

次ページ > 石炭火力発電は減少傾向に

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事