「クルマの中に入っている」TDKが描く未来図
ここで最も注目したいのは、TDKが描く先の未来図だ。
「TDK=モビリティの中身を作っている会社」という表現の是非を問われた執行役員は、「意外と『クルマの中に入っている』という事実を知られていません。まだカセットテープのイメージが残っているから、コンシューマー製品をやっている会社だと思われがちです。しかし今は、スマートフォンはもちろん、EVなどの中身にしっかり入っているんです」と強調した。
そのうえで「現在EVの分野で大きく貢献していますが、今後はそれが自動運転、さらにフィジカルAIやモビリティへと進化していきます。AIが進歩し自動運転が普及していくと、フィジカルAIとして今度はロボットへと広がっていきますが、そうした様々な最先端の領域に『エブリウェア(Everywhere=どこにでも)』入っている、というのが我々の目指す姿です」と語った。
ロボット本体そのものを手掛けるのかという問いには、「ロボット本体を作るのではなく、ロボット向けのビジネス、ロボットの中身を展開しています。我々はそれを『ボディ・オブ・AI(Body of AI)』という言葉で表現したいと思っています。これまでのAIはサイバースペース、2次元のデジタル空間の話でしたが、今後AIが賢くなりロボットの中に入ってボディ(肉体)を持つと、自律的に動き出します。そういう時代が来た時には、パワーマネジメントやバッテリー、センサーはもちろん、ロボットが動くためのモーターやアクチュエーターなどの部品が不可欠になります」と展望を語った。
「我々はそれらの部品を全部持っていますから、ロボットの時代が来るときは大チャンスだと捉えています」という言葉は、同社の長期戦略の核心を端的に示している。
カセットテープの記憶を持つ世代にとっても、TDKという社名から次に想起すべきは、日本初の公道ナイトレースを疾走する320キロのフォーミュラ・マシンであり、公道を走るポルシェである。そして、やがて日常で見かけるAIロボットとなる近未来さえやって来るのかもしれない。
実際にレースを目にすると、電動フォーミュラカーの甲高いモーター音に、むしろ魅了される。フォーミュラEは8月15日のロンドン大会をもって2025-26シーズンが閉幕。現行マシンGen 3の見納めとなる。
そして2026-27シーズンには、第4世代となる新マシンGen 4が導入され、TDK、日産、ヤマハに加え、ブリヂストンも参入。またドッズCEOによれば、日本企業がもう一社、参戦を検討しているという。そのためか、次シーズンのクライマックス最終戦は27年7月25日の東京開催ナイトレースが予定されている。
そろそろ「電気自動車」への偏見を捨て、フォーミュラEを新たな視点で見るべきだろう。


