サイエンス

2026.08.15 18:00

肘をぶつけると電気が走る理由、進化が放置した人体の設計ミス

stock.adobe.com

stock.adobe.com

膝や脛(すね)をぶつけた時は、通常は打撲の痛みを感じる(鈍く広がるような痛みだ)。しかし、肘(ひじ)の内側、英語で「ファニーボーン(funny bone)」と呼ばれる箇所をぶつけると、明らかに異なる感覚が生じる。瞬時に、鋭い電気のようなショックが、薬指と小指まで走り、時にその後1分ほどしびれが残ることもあるのだ。

この「ショック」は、感覚の強さだけでなく、質も異なる点が特徴だ。骨をぶつけても、電気ショックのような感覚は生じない。肘のその部分では、何か別の現象が起きているのだ。

骨ではなく、神経がもたらすショック

その「何か」を引き起こしているのは、腕を通る3本の主要な神経の一つ、尺骨神経だ。長く伸びたその神経の大半は深いところを通り、筋肉や脂肪に守られている。しかし肘の部分では、肘関節の内側にある骨の溝(解剖学では「肘部管」と呼ばれる通り道)を通過しなければならず、そこでは神経を保護するものがほとんど何もない。 

人体の主要な神経の一つが、数cmにわたって、皮膚のすぐ下を、骨に押し当てられるようにして走っている。このむき出しの状態が、当該部分を直接ぶつけた際に、通常の打撲のような痛みではなく、鋭い一過性のショックのような強い感覚を引き起こす理由だ。

またそれが、「funny bone(おかしな骨)」という名前の由来でもある。尺骨神経が通る上腕骨(humerus)と、「humorous(ユーモラスな)」という単語が、同じ発音であることに掛けた言葉遊びだ。 

なぜ電気が走るような感覚が生じるのかを理解するには、神経が実際にどのように機能するのかについて、手短に触れておく必要がある。感覚ニューロンは、活動電位と呼ばれる「電荷の移動する波」として情報を運ぶ。それは、神経線維に沿って伝わっていく、短時間かつ自己伝播する電圧の急激な変化だ。

尺骨神経の活動電位は通常、薬指や小指にある受容器が、圧力や温度、痛みなどを感知することで発生し、そのメッセージは脳へと伝達される。しかし神経線維は、それが伸びている範囲のどの位置で刺激を受けたかをさほど気にしない。肘のあたりで神経が圧迫されたり(例えば、上腕骨の硬い縁に押し付けられるような形で圧迫されたり)、引き伸ばされたりすると、指に刺激を受けたのと同じ信号を、指を介さずに、直接発生させることができる。

次ページ > 「ファニーボーン」は古くから脊椎動物の体に組み込まれていた

翻訳=高橋朋子/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事