しかし、脳に理解できるのは、「この神経が、手からの情報を伝えている」ということだけだ。したがって脳はその信号を、それが手から生じた感覚であるかのように解釈する。生物学者や医師はこれを「関連感覚(referred sensation)」と呼ぶ。オンラインの医学データベース「StatPearls」が提供する臨床的な参照情報によれば、神経が障害された場合、その感覚は通常、障害が起きた部位ではなく、その神経が支配する領域で感じられる。だからこそ、肘をぶつけただけでそれが、どこにも触れていない指に「ショック」として感じられるのだ。
「ファニーボーン」は古くから脊椎動物の体に組み込まれていた
ここまでは、明快な生理学上の説明だ。より興味深い疑問は、なぜ自然選択が、脊椎動物の四肢の進化において、これほど明らかに露出した設計を、何百万年にもわたって許容し続けてきたのかということだ。
この問いへの率直な答えは、発生的な制約にある。四肢を持つ動物における前肢の基本的な神経マップ(すなわち、カエルの肢からコウモリの翼、そしてヒトの腕に至るまで、あらゆる四肢動物に共通するボディプラン)は、哺乳類や霊長類、さらにはヒトが存在するはるか以前に、脊椎動物の歴史の奥深くで確立されていた。
2018年に学術誌『Zoological Letters』に発表されたレビュー論文は、四肢動物の前肢における、より広範な解剖学的設計図(筋肉と、その中を走る神経)について説明している。そして、その設計図を土台にした上で、前肢が多様化し、翼やヒレ、手になっても、それがいかに驚くほど変わらずに保存されてきたかも説明している。いったんその経路が確立されると、進化が神経の経路を、下流にあるすべてのものを乱すことなく作り替えることは難しいのだ。
また、肘関節という部位そのものが、この問題をさらに複雑にしている。肘関節は、広い可動域にわたって曲がる必要がある。また、可動関節をまたぐ神経は、組織にがっちりと固定されて動かせない状態ではなく、関節の動きに合わせて、滑ったり曲がったりできる必要がある。保護と柔軟性は相反する要求であり、肘関節においては、柔軟性の方がおおむね優勢となったというわけだ。


