質の高さで広くアプローチし、
どうやって価値を高めるか
戦略の名前は「ラグジュアリー・アット・スケール」。希少性に頼らず、幅広い価格帯で、より多くの人に届ける。CEOアレクシ・ナザールの方針だ。
ここでひとつ、ややこしい問いが立ち上がる。ラグジュアリーは伝統的に、希少だから価値があるとされてきた。規模の拡大とは、本来あまり仲が良くない。
「私たちが提供できる喜びは、カッティング技術や色彩、素材の組み合わせによる、輝きの質の高さです。これは唯一無二だと思っています。ラグジュアリーだと思っていただけるのは、その質が担保しているからそこに立ち返ったんです」
希少さで守るのではなく、質で支える。Swarovskiファミリーが経営権をもつ非上場企業ゆえ、売上順位も新ラインの目標数値も非公開。3年続く2桁成長は国内顧客が主因で、2025年の日本の売り上げはスワロフスキー・ジャパン社史上、過去最高だったと鈴木は明かす。
この戦略を推進するメインの舞台に、日本が選ばれている。ナザールは、ヨーロッパと米国に加え、韓国、ブラジル、メキシコ、そして日本を、重点的な成長市場に挙げる。グローバルのマネジメントは毎年来日し、市場を見るという。
「日本には1週間いるんです。競合が何をやっているのか、ジュエリー以外のラグジュアリーがどうしているのかをもちろんチェックしますが、それ以上に彼らは日本の価値観を深く理解しようとしています。日本の文化そのものに触れていただく機会も多くつくっています。日本のお客様に支持されれば、世界にも通用する。彼らはそう思っているので、しっかり見ています」
その日本市場での難所のひとつが、ラボラトリー・グロウン・ダイヤモンドだ。「ダイヤは採掘されるもの」という固定観念が根強い。だから対面で時間をかけ、事実をデータで伝える。若い世代ほど受け取りが速いという。本質を見極める力が強く、すぐに受け入れてくれる。
創業時のスケッチを入り口に飾りながら、奥ではポップアイコンを踊らせる。匠の技を手放さず、価値観の変化に合わせて解釈をかけ直す。Swarovskiが試しているのは、その回し方そのものだ。規模を広げながら、ラグジュアリーの質は手放さない。両立の難しいふたつを、このブランドは一本の線で結ぼうとしている。

SWAROVSKI GINZA
東京都中央区銀座8-9-15 JEWEL BOX GINZA 1・2F
TEL 03-3289-3700
営業時間11:00〜20:00
定休 年末年始
すずき・まさき◎スワロフスキー・ジャパン代表取締役社長。日本市場におけるブランドの進化と事業成長を統括。店舗体験の刷新と接客の再設計を軸に、クリスタル・ジュエリーからラボラトリー・グロウン・ダイヤモンドまでを展開する。


