ウェルネステクノロジー分野は急速に成長している。世界のウェルネスアプリ市場は2024年に113億ドル(約1兆8000億円)と評価され、2030年までにその収益は262億ドル(約4兆1700億円)に達すると予測されている。しかし、主流となっているプロダクトの設計思想(アーキテクチャ)はこの10年間、ほとんど変化していない。多くのプラットフォームは依然として、体重計の数値という単一の指標を中心に構築されている。
デジタルヘルスが新しく、カロリー追跡が画期的なものに感じられた時代には、体重減少を基本原則とすることに意味があった。しかし私の考えでは、体重減少だけに焦点を当てるのでは、もはや不十分である。業界は、誤った問題に対して精密な手段を構築してしまったのだ。
2024年にはヘルスケア・ウェルネスアプリが36億回ダウンロードされたが、そうしたユーザーの大半はいずれ関与を失い、停滞し、離脱する。この解約はリテンションの問題ではない。私は、設計思想の問題だと考えている。それを解決するには、ウェルネスアプリは何のためにあるのかを根本から考え直す必要がある。
減量パラダイムの限界
長年にわたり、ウェルネス業界はシンプルな行動ループ(摂取量を記録し、結果を表示し、減少を褒め称える)に基づいて運営されてきた。それによって膨大なユーザーベースが築かれ、個人の三大栄養素(マクロ栄養素)については細かく把握しているものの、本人の精神状態や睡眠の質、食との関係性、あるいは夜11時に冷蔵庫に向かわせるストレスの原因についてはほとんど何も知らないアプリが生み出された。
データはこの事実を明確に反映している。研究によると、生活習慣やメンタルヘルスに関するアプリの利用者は、中央値で全体の70%が最初の100日間で利用をやめている。これはエンゲージメントの問題ではない。私はこれを、「体重を減らし、カロリーを記録する」という中核的な価値提案が、長期的な行動変容を維持するのに十分な持続性を必ずしも持っていないことの証拠であると捉えている。
私は体重を一つの「症状」と捉えている。体重は、睡眠の質、コルチゾール値、感情調節、社会的つながりなどの要因に影響される。アプリが症状だけに焦点を当てるなら、ユーザーが原因に対処する助けには決してならない。
ホリスティックなアプローチとは実際に何を意味するのか
「ホリスティック」は、ヘルステックで最も使い古された言葉の一つになっている。あらゆる企業がそう主張しているように見える。だが、それを実践している企業は少ない。そこで、私がそれに実際に必要だと考えることを具体的に述べたい。
1. メンタルヘルスと感情面の健康は、後付けではなく、第一級の要素として扱わなければならない。
ストレス、不安、エモーショナルイーティング(感情的摂食)は、些末な問題ではない。2025年の系統的レビューでは、体重が増加した人、過体重、あるいは肥満の人の約45%にエモーショナルイーティングが蔓延していることが明らかになった。また、すべての食事の最大75%が感情によって引き起こされているとする指摘もある。
カロリーは記録するものの、そのカロリーがどのような感情的な状況で摂取されたかを無視するアプリは、不完全なデータしか扱っていないことになる。私たちのウェルネスアプリ「Lasta」で採用しているアプローチであり、他のアプリにも構築を推奨したいのは、持続可能な行動変容には行動そのものだけでなく、その行動を引き起こす心理的要因(ドライバー)に対処する必要があるという理解だ。
2. ホリスティックなアプローチを取るとは、そもそも「運動」とは何かを考え直すことを意味する。
この業界の多くは長らく、身体活動を高強度トレーニングと同一視してきた。その過程で、そのアプローチにアクセスできない人、不快に感じる人、あるいは単に自分の体に合わない人々を何百万人も排除してきた。アプリは、消耗させるのではなく回復をもたらす動きに、どうすればより適切に投資できるかを考えるべきである。
たとえば、太極拳ウォーキングは、ジャンプもバーベルも使わずにバランスを改善し、マインドフルネスを育む助けになる。あるいはLastaでは、可動性に制限のある人や、取り組みを始めたばかりの人にも実践の門戸を開くためにチェアヨガを用いている。これらは妥協した形式でも、「より簡単なバージョン」でもない。運動を、消耗ではなく、回復、神経系の調整、そして静けさを通じて身体へ至る道として扱う、根本的に異なるモデルを示している。
3. パーソナライゼーションは、属性情報(デモグラフィックス)より深く踏み込まなければならない。
年齢、身長、体重は出発点であって、到達点ではない。真のパーソナライゼーションには、ユーザーのクロノタイプ(体内時計のタイプ)、食の履歴、現在のストレス負荷、生活上の制約を理解することが必要だ。初日には正確でも90日目にはますます無関係になる静的なプロフィールではなく、その人の変化に合わせて進化するモデルを構築する必要がある。
これを実現するうえでのAIの役割
AIは、これを大規模に実現しやすくする助けになり得る。この業界では、すでにテクノロジーの向かう先が示されている。WHOOP Coachは継続的な生体データを分析し、リアルタイムでパーソナライズされた応答を生成する。Woebotは自然言語処理と認知行動療法の技法を通じてメンタルヘルス支援を提供するよう設計されている。Noomは行動科学を取り入れ、よりパーソナライズされた推奨を提供するためにAI搭載機能を使っている。これらに共通するのは、データとAIを用いて、各個人に最も有効である可能性が高いと見込まれる内容に基づき、アプローチや推奨を洗練させている点である。
より広いデジタルヘルス・ウェルネス市場は、2025年の6070億ドル(約96兆6000億円)から2034年には3兆5000億ドル(約557兆円)へ成長すると予測されている。
だが、AIの質は、そこに組み込まれた価値観に左右される。連続利用日数やアプリ内滞在時間だけを最適化すれば、心理的に操作的なシステムを作るリスクがある。ウェルネス業界は一線を守らなければならない。短期的なリテンション指標ではなく、長期的な健康成果を最適化すべきである。
行動管理ではなく、行動変容
この取り組みにおいて最も重要な区別は、行動管理と行動変容の違いである。
行動管理は、人々をアプリに依存させ続ける。たとえば、途切れると不安を生む連続記録の仕組みや、恥の儀式になり得る毎日の体重測定などが含まれる。こうした機能はリテンションを高めるかもしれないが、変容を促すことはほとんどない。
行動変容は異なる。新しい習慣が意識的な努力を必要としなくなるまで、徐々に内面化されていくことだ。ユーザーはアプリのことを考えなくなり、ただ違う生き方を始める。優れたウェルネスアプリの目標は、時間の経過とともに自らの必要性を低くしていくことである。
これからの10年
次の10年を捉える可能性が高いアプリは、人間の複雑さのすべてに対して真に有用であり、メンタルヘルス、睡眠科学、行動心理学をプロダクトのあらゆる層に統合し、かつては高額な専門家チームを必要としたパーソナライズされた指導をAIによって提供するものになると私は考えている。
最も重要なのは、成功の定義を変えることである。「ユーザーは10ポンド減量したか」ではなく、「この人は6カ月前より健康になり、自分自身をケアする力を高めているか」と問うべきだ。
それは解くのがより難しい課題である。同時に、はるかに意味のある課題でもある。



