インターネットは、無限の選択肢という約束を果たした。しかし、その豊かさは「いかに埋もれずに目立つか」という新たな課題を生み出している。
何十年もの間、小売業における成功とは、中間層にアピールすることを意味することが多かった。小売業者は最安値である必要はなかった。最も個性的である必要もなかった。成功は、価格、品揃え、サービスの適度なバランスを消費者に提供することからもたらされていた。だが、その方程式は、維持するのが難しくなりつつある。
小売業界は二極化の時代に入りつつある。一方の極には世界最大手の小売企業が存在し、規模のメリット、サプライチェーンの強み、デジタル能力を駆使して自らの優位性を拡大している。ユーロモニター・インターナショナルのデータによると、現在、上位10社の小売企業が世界の小売売上高の19%を占めており、2016年の11%から上昇している。
もう一方の極を構成するのはDTC(消費者直接取引)ブランドであり、根本的に異なるアプローチ、すなわち顧客との関係を自ら所有することによって成長を遂げている。消費者データ、メッセージング、購買体験を自社で管理することで、DTCブランドはより深いつながりと、パーソナライズされたエンゲージメントを生み出している。ユーロモニターは、このモデルが2030年までに世界のEC売上高の10%を占めるようになると予測している。
これら両極の間に位置する小売業者への圧力は強まっている。
百貨店やアパレル専門店などの中間層のプレーヤーは、巨大小売業者のような規模の優位性を欠くことが多く、同時にDTCブランドが培ってきた直接的な消費者関係にも太刀打ちできずに苦しんでいる。買い物客が「効率性」か「パーソナライズ」のいずれかに引き寄せられるにつれ、中間層を守ることはますます困難になっている。ユーロモニターは、百貨店とアパレル専門店の今後5年間の成長率が横ばいになると予測しており、多くの中間層小売業者が直面する課題を浮き彫りにしている。この変化は、単なる業界再編の物語ではない。消費者が商品を発見し、評価し、購入する方法における、より本質的な変化を反映しているのだ。
両極の経済学
電子商取引(EC)は、この二極化の両端を同時に加速させてきた。
大手小売業者は規模のメリットを享受している。膨大な顧客基盤を対象に、物流、テクノロジー、データ、フルフィルメントへの投資を分散させることができるからだ。その規模によって、低コスト化、品揃えの拡充、配送の迅速化が可能になる。
同時に、デジタルチャネルは新興ブランドの参入障壁を下げた。DTCブランドは、ターゲット顧客にリーチするために、もはや全国的な店舗の棚を必要としない。ソーシャルプラットフォームを通じて認知度を高め、デジタルチャネルを通じて顧客を獲得し、パーソナライズされたエンゲージメントを通じてロイヤルティを育むことができる。
この変化は、消費者がパーソナライズを重視し、繰り返し購入する、購入頻度とエンゲージメントの高いカテゴリーにおいて特に顕著だ。ペットフード分野では、ユーロモニター・インターナショナルのデータによると、The Farmer's Dogが2025年に米国でトップのオンライン・ペットフード・ブランドとなり、売上高は20億ドル(約3180億円)を超え、Hill'sやPurina Pro Planといった市場リーダーを追い抜いた。
多くの意味で、インターネットは2つの強力な競争優位性を生み出した。小売業者はかつてないほど巨大化するか、あるいはかつてないほど消費者に近づくことができるようになった。その結果、中間層はその存在意義を失った。
そのため、小売業者とブランドの双方がデュアルチャネル戦略を採用しつつある。ウォルマートは依然として「低価格」の代名詞だが、よりプレミアムな店舗デザインや品揃えを通じて、高所得層の消費者へのターゲット化を続けている。同時に、コンシューマーブランドはファーストパーティ関係、サブスクリプション、コミュニティ、自社所有チャネルに多大な投資を行い、顧客エンゲージメントを深めている。双方が、まったく異なる方法ではあるものの、買い物客との結びつきを強めている。
その結果、小売業界の構図は、一方の極にある「規模」と、もう一方の極にある「直接的な関係」によって定義される傾向がますます強まっている。
なぜAIがこの分断を加速させるのか
現在、AIは小売業のあり方を再定義しつつあり、小売競争の基盤を「アクセスのしやすさ」から「視認性(見つけられやすさ)」へと変化させる可能性が高い。
長年、ブランドは店舗の棚スペースを争ってきた。その後、検索順位やソーシャルメディアでの視認性を競い合うようになった。そして今日、消費者はおすすめ、商品比較、レビュー要約、購入の意思決定のために、生成AIプラットフォームを頼る機会をますます増やしている。
ユーロモニターの消費者調査によると、インターネットに接続している消費者の約4分の1が、すでに生成AIを買い物情報の情報源として利用している。その利用率はわずか1年で8パーセントポイント上昇し、買い物における「インスピレーションの源」として、生成AIはソーシャルメディアのインフルエンサーを追い抜くまでに至った。ユーロモニターによる別の消費者調査は、その魅力が実用的なものであることを示唆している。消費者は、より明確な説明、より的確な商品の推奨、要約されたレビューなどを通じて、買い物の意思決定を容易にするために生成AIを利用していると回答している。
買い物のプロセスにAIが介在する割合が高まるにつれ、視認性はマーケティングメッセージへの依存度を低め、データの質、関連性、そして消費者シグナルに左右されるようになる。この変化は――またしても――両極端のセグメントに優位性をもたらす。
大手小売業者は、奥深い商品カタログ、広範な消費者エンゲージメント、そして強固なデータエコシステムを有している。一方でDTCブランドは、多くの場合、極めて明確なポジショニングを持ち、顧客のインサイトに直接アクセスできる。どちらも、AIによるおすすめとして表示されやすくなる特性を兼ね備えている。
その中間に挟まれた小売業者は、より困難な課題に直面する。彼らは、より強大な規模を持つ大手プレーヤーや、より強力なブランドポジショニングを持つDTCブランドを相手に、視認性をめぐる競争を繰り広げなければならないからだ。
小売業界の「中間層」が直面する新たなリスク
ECは小売の「棚」を拡張し、消費者にこれまで以上の選択肢を与えた。しかしAIがもたらす変化はそれとは異なり、最初に表示される選択肢への経路を「狭める」ことになるかもしれない。このことは、中間に位置する小売業者にとって最も大きな影響を与える。
中間層の小売業者は、長い間、「比較検討の対象になること」に依存してきた。適切なショッピングモールに出店し、検索結果に表示され、買い物客の選択肢に入り続ける程度のなじみ深さを持つことだ。しかし、AIを介した発見プロセスにおいては、こうした受動的な検討に頼ることは難しくなる。買い物客が「最良の選択肢」「最安の選択肢」あるいは「最も自分に合った選択肢」を求めた場合、ポジショニングが曖昧な小売業者は、いとも簡単にスキップされてしまう可能性がある。
これは中間層が消滅することを意味するわけではない。しかし、中間層の小売業者が選ばれるためには、より明確な理由が必要になることを意味している。規模は引き続き重要であり、顧客との距離の近さ(近接性)も重要だ。どちらの優位性も持たない企業にとって、視認性を確保できるかどうかは、より明確なカテゴリーリーダーシップ、より強固なファーストパーティ関係、そしてより際立った価値提案(バリュープロポジション)にかかっている。
インターネットは豊かさを生み出した。AIは、その中から誰を浮上させるかを決定するかもしれない。そしてそのことは、小売業界の中間層が生き残ることをさらに困難にするだろう。



