何世紀にもわたり、海の秘密は静かに積み重なってきた。サンゴの幾何学、マングローブの根系、イカの回遊パターンの中に。これらは解決を待つ問題ではなかった。すでに解決策だったのだ。人類が問いかけようとしてこなかったのは、それが何に対する解決策なのかということだった。
レオニー・ウィーラクーンは、この10年近く、まさにその問いを投げかけ続けてきた。
世界経済の中心にある盲点
世界経済フォーラムによれば、生物学的プロセス、素材、知識を基盤とする商業エコシステムである世界のバイオエコノミーは、現在4兆ドル(約637兆円)規模と評価され、2050年までに30兆ドル(約4780兆円)に達すると予測されている。世界GDP全体のおよそ半分を支えているにもかかわらず、それ自体がシグナルとして扱われるのではなく、背景雑音として扱われてきた。
ウィーラクーンは人間生態学者としての訓練を受けている。自然システムと人間行動の交差領域に位置する学問だ。それにより、純粋科学者にも従来型の投資家にもない視座を得た。彼女は、双方が見落としていたものを見ていた。世界で最も生物多様性に富む地域に埋め込まれた知性は、生態学的に価値があるだけではない。経済的にも決定的な意味を持つということだ。そして、そのほとんどは把握も保護もされず、現代の戦略へと翻訳されてもいなかった。
そこで彼女は、それを実現するために、リサーチとインテリジェンスのプラットフォームであるKinetic Venturesを立ち上げた。彼女が構築したフレームワークは「グリーン・ルネサンス」と呼ばれる。生態系の知性と現代テクノロジーの収束であり、環境上の要請にとどまらず、経済上の要請でもある。
「38億年かけて進化してきた自然の知性を取り入れ、それを私たちが手元に持つ最高度のコンピューティングやテクノロジー、そして資本と融合させれば、価値を抽出して崩壊するのではなく、時間とともに複利的に発展する経済システムを本当に築くことができる」
世界はこれまで、収奪的なオペレーティングシステムで動いてきた。グリーン・ルネサンスは、それとはまったく異なるモデルの提案である。
生きた実験室としての島々
Kineticのリサーチエンジンは、島嶼部と沿岸システムを中心に構築されている。多くの機関が見過ごす場所であり、ウィーラクーンが最も価値ある生態学的データが存在すると考える場所そのものだ。島国はバイオエコノミーの周縁ではない。彼女の捉え方では、地球上のほかのどこにも存在しない固有種が集中する、生きた実験室である。
そうした場所に埋め込まれた知性は驚くべきものだ。マングローブの根系は力を分散する仕組みを持ち、現在では沿岸インフラ設計に示唆を与えている。イカの動きは医療機器に着想を与えた。サンゴの幾何学は新素材や建築へと翻訳されつつある。スリランカの歴史記録で袋の製造に使われていた海藻は、バイオベースの顔料や代替素材の基盤として再浮上している。
「自然の知性の多くは、地質学的な時間軸に耐えられることに関わっている。自然は、性能だけでなく耐久性を設計する方法を本当に教えてくれる」
これは、美的な志向としてのバイオフィリックデザインではない。数十億年にわたってストレステストされてきたシステムから抽出された、運用上の論理である。
誰も語っていない投資の論拠
Kineticのリサーチを通じて関与した一部の企業は、関与開始以降、すでに20倍の成長を遂げている。その理由は運ではなく、インテリジェンスだ。Kineticは有望な素材を特定するだけではない。それらを生み出した文化的・生態学的システムを理解しており、従来型のデューデリジェンスでは到底再現できない文脈の深さを投資家にもたらす。
それでも投資コミュニティの動きは鈍い。再生型の取り組みはインパクト投資に分類される。多くの機関投資家の間で、市場平均を下回るリターンを暗黙に想定するカテゴリーである。ウィーラクーンは、これを経済的に無理解だと見る。
「再生型の取り組みへの投資には、いまだに慈善的なものだという偏見がある。特に、それが単に環境と結びつけられているからだ。しかし、バイオエコノミー自体は現在、約4兆〜7兆ドル(約1110兆円)規模と評価されており、今後20〜30年で増加する一方だ」
こうしたコミュニティは歴史的に、新興市場向け資本の1%未満しか受け取ってこなかった。彼らが持つ知識は、世界金融の誰もが現在理解している以上の価値を持つ可能性がある。
AIが代替できないもの
KineticはAIを加速装置として使っている。数十年分のパターン認識を、機関が行動に移せる洞察へと圧縮する手段である。しかしウィーラクーンは、AIに何ができないかについて明確だ。
「AIはパターン認識を加速するが、生態学的記憶を置き換えるものではない。私たちはAIを使って、長期的な知性を意思決定に耐える洞察へと翻訳している」
この違いは重要だ。自然の知性はデータセットではない。地質学的な時間をかけて蓄積された生きたアーカイブであり、それを保持するコミュニティは採掘されるべき情報源ではなく、その知識に対する主権が交渉不可能なパートナーである。
だからこそ、Kineticが構築している最も重要なアーキテクチャは、技術的なものではなく倫理的なものだ。「パラシュート・サイエンス」、すなわち機関が脆弱なコミュニティに入り込み、先住民の知識を抽出し、外部経済に利益をもたらす発見を持ち帰る行為は、ウィーラクーンによれば蔓延している。科学者や起業家は、統治構造を迂回してコミュニティへ直接アクセスし、何世代にもわたり単一の家族の中に存在してきた可能性のある知識を、説明責任も源への還元もないまま持ち去っている。
「こうしたコミュニティは容易に搾取されかねず、実際にすでに起きている。私たちがやろうとしているのは、こうした研究がすべて安全に行われ、加速されるための非常に安全なプラットフォームを提供することだ」
Kineticの答えは、基礎となる知識を保持するコミュニティと政府から明示的な許可がない限り、何も共有されないデータ主権プラットフォームである。その知識から価値が生まれるとき、恩恵を受けるのは何世紀にもわたってそれを保持してきた人々である。
知性への賭け
「その意図は、まさに人間の意識を高める手助けをすることにある。歴史が示してきたように、知識の搾取は、私たちの環境を含め、文化を大きく劣化させてきたからだ。バイオエコノミーは、本当に数少ない前進の道の1つである。これは非常に収益性の高い領域であり、単なる1つの業種ではない。AIと同じように、1つのレイヤーなのだ」
グリーン・ルネサンスは利他主義への賭けではない。知性への賭けである。数十億年にわたり、深いところで静かに働き続け、ようやく誰かが耳を傾けるのを待っていた、そうした知性への賭けだ。



