──生成AIの台頭で、お絵描きアプリの市場環境はどう変化していくと見ているか。
神谷:AIは、私がプログラムを書き始めて以来、最大のインパクトだと感じている。この先どうなるか、正直読み切れないところもある。ただユーザーは仕事ではなく趣味で絵を描く方がほとんどで、絵を描くこと自体が楽しい、上達したいという動機が強い。仕事で早く作業を終わらせたい人と動機が違うので、AIで自動生成されたものでいい、とはなりにくいと見ている。実際、仕事目的での利用が中心の画像編集・加工ソフトウェアはいち早く生成AIを取り入れているが、業界によって受ける影響の出方は異なるはずだ。
一方で我々自身もAIを活用して開発速度が大幅に上がっており、ユーザーが驚くようなAI機能をコンスタントに追加している。変化のときにしかチャンスは生まれない。象徴的なのがiPhone登場直後の数年間で、まさにカンブリア紀のように玉石混交のアプリが爆発的に生まれた時期があった。ibisPaintもその波に乗って生まれたアプリのひとつだ。今、同じような新規アプリを企画しても新鮮味を出すのは難しいが、AIの登場によって「あれもできる、これもできる」とネタが尽きない状況が生まれている。スマホが登場したタイミングでibisPaintをつくったように、この変化もいち早くつかみにいくつもりだ。
──VCに頼らないオーガニック成長を続けてきた。背景にある哲学は。
神谷:はじめからVC非出資を貫こうと決めていたわけではなく、05年ごろに一度、外部資本を受け入れていたこともある。ただibisPaintの広告収益が急拡大し、外部からの出資がなくても事業を回せるだけのキャッシュが自然と積み上がっていった。わざわざ株式を渡して資金を調達する必要がなくなり、自然と創業メンバーだけの資本構成に戻った。
──グロースからプライム市場への移行を目指しているが、まだ上場基準を満たしていない。今後の展望は。
神谷:現在の時価総額は140億円規模で、流通株式数を考慮すると、プライムの基準を満たすにはおよそ3倍の規模が必要だ。シンプルに言えば、利益を3倍にしなければいけない状況だ。ibisPaint事業もソリューション事業も足元では20%超の成長が続いているが、これを25%成長に引気あげていけば、4~5年後には射程内に入ってくるのではないかと見ている。足元の進捗は計画を上回っており、手応えは感じている。次世代プラットフォームの実現に向けて、ブレずに事業価値を高めていきたい。

アイビス◎2000年設立。モバイル分野の製品・サービス開発に加え、大手企業向けに受託開発を展開するソリューション事業も手 がける。11年 に「ibisPaint」をリリースし、23年3月に東証グロース市場へ上場。25年にはAI音声合成のテクノスピーチ、ノーコード開発のゼロイチスタートを子会社化。25年12月期の連結売上高は50億円、純利益は8億円。ibisPaintは同年9月、全世界累計ダウンロード数が5億を突破、MAUは約4000万人。
かみや・えいじ◎1973年生まれ、愛知県出身。名古屋工業大学卒業。2000年有限会社アイビス設立、01年株式会社へ組織変更。幼少期からコンピューターに親しみ、学生時代には国内初の日本語FTPソフトを開発した。趣味でロボット開発も手がける。


