カルチャー

2026.08.15 13:30

伝統を未来へ渡すには?祇園祭が示す新しい「支え方」:マクアケ中山亮太郎

人気があるだけでは、祭りは続かない。祇園祭の取り組みから、文化を支える仕組みの進化について考える。マクアケ創業者による連載第66回。

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京都の夏を象徴する祇園祭は、単なる観光イベントではない。1150年を超えて続いてきた、疫病退散を祈る営みであり、京都の町衆が受け継いできた誇りそのものでもある。山鉾が都大路を進む華やかな姿に目を奪われる一方で、その裏側にある準備や安全管理、資金面の努力は、外からはなかなか見えにくい。

ありがたいことに新商品や新サービスの応援購入プラットフォーム「Makuake」では、今年で10年連続となる祇園祭への支援プロジェクトが実施されているのだが、日本を代表する祭りであっても維持・発展させていくことは容易ではない。変えてはいけない核を大切にしながら、その時代に合わせて支え方を進化させる知恵が必要だ。

近年の京都には以前にも増して国内外から多くの観光客が訪れるようになっている。宵山や山鉾巡行の期間中には特に大勢の人が集まり、万が一の事故を防ぐための警備、保険、暑さ対策、ごみ対策など、見えないところで必要になる経費も年々増加している。今年の支援集めプロジェクトでも、警備費用や保険料の確保が大きな目的として掲げられている。昨年は733人から1390万円の支援が集まり、その思いは祭りの安全・安心を支える力として活用された。特別に寄附金控除の対象となる仕組みを取り入れたり、ここだけの厄除け粽や観覧体験を返礼として用意したりといった工夫も含め、京都に住む人も遠方に住む人も祭りとの関係をもつことができる設計になっている点が印象的だ。

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これは祇園祭だけの話ではない。全国で行われている祭りや花火大会でも、警備員の確保、仮設トイレ、ごみ処理、交通誘導、資材費や人件費などの上昇によって、開催の継続が難しくなる例が増えている。多くの人を楽しませ、地域に経済効果を生む行事であっても、その運営を地域の事業者や保存会、実行委員会の善意と負担だけに頼り続けることには限界がある。人気があるから自然に続くのではない。人気があるからこそ、支える仕組みをより開かれたものにしていく必要がある。

新しい「参加の仕組み」を考え続ける

もちろん、行政の補助金や支援制度が整っていくことは重要だ。ただ、税金だけに頼る仕組みではなく、そこに訪れる人、離れた場所から応援する人、企業や地域金融機関など、さまざまな人が少しずつかかわることができる構造をつくることも大切だ。我々Makuakeが担ってきたのは、まさにその接点づくりでもある。このプロジェクトは単なる資金集めではなく、祭りの背景や課題を知ってもらう場にもなっている。参加者に自分も文化を未来へ渡すひとりなのだと感じてもらう。このプロジェクトがそうした参加の入口になれば、我々もうれしい限りだ。

伝統とは、決して変化を拒むものではない。例えば歌舞伎も、明治期には劇場の照明としてガス灯を取り入れ、近年ではマンガ原作の演目やプロジェクションマッピングなども取り込みながら、それでもなお日本を代表する伝統芸能であり続けている。新しさは、伝統を壊すものではなく、次の時代へ届けるための味方にもなりうる。

祇園祭を支える方々の努力には、本当に頭が下がる。宵山や山鉾巡行の裏で来訪者の安全までを考え抜く。その積み重ねの先に、私たちが目にする一日の華やかさがある。祭りを楽しむ側もまた、その美しさが多くの人々の支えと工夫によって成り立っていることを知るだけで、少しずつかかわり方は変わる。伝統を未来へ渡すとは、過去を静かに保存することではなく、今を生きる人たちが新しい参加の仕組みをつくり続けることなのだと思う。


なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズ(現グロース)に上場した。

文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

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