中国やアジア太平洋地域の専門家の間では、台湾公共テレビが運営する英語放送「台湾プラス」の存在はよく知られている。だが、専門家以外にはあまり知られていない。
そうあってはならない。同局は近年、歴史や政治に関する台湾独自の見解を国際的に放送する主要な手段となっている。一方、中国政府はこれらの問題を自国の利益のために操作しようとしている。
中国の情報操作能力が範囲と洗練度の両面で拡大するにつれ、台湾プラスの重要性が増している。中国は情報操作能力を単独で開発したわけではない。戦略的な友好国であるロシアの情報工作から教訓を得て、さまざまな政治問題に関して、同国やイランと連携しながら情報を発信している。その結果、3カ国が互いのメッセージを増幅させ、共通の戦略目標を強化し、西側諸国の信頼を損なうために共同で活動する、新たな権威主義的な情報の生態系が形成されつつあるのだ。
台湾はその戦略の主な実験場となっている。昨秋、台北を訪問した際、政府高官は筆者に対し、台湾で世論を形成するため、中国は従来のプロパガンダより巧妙な作戦を仕掛けるようになりつつあり、情報環境が敵対的になっていると説明した。
そこから得られる教訓は明白だ。中国の台湾に対する攻勢は、もはや軍事的な威嚇や経済的な圧力にとどまらない。それは「物語を巡る争い」に発展しているのだ。
まさにそこに台湾プラスが果たすべき役割がある。中国共産党が世界中で展開する放送網(年間推定予算は100億ドル(約2兆6000億円)以上)に比べれば、台湾プラスの予算規模ははるかに小さいものの、同放送局は、中国側の視点にしか触れる機会のない視聴者に対し、台湾独自の見方を伝えることのできる信頼性のある国際的なメディアとしての地位を確立している。
だが、同局の能力は現在、危機に瀕している。台湾の国会に当たる立法院では先週、野党が台湾プラスを運営する台湾公共テレビの予算を大幅に削減する案を提出した。この案が可決されれば、台湾公共テレビの予算は最大30%削減され、台湾プラスの運営費がほぼ失われることになり、同局は機能不全に陥る恐れがある。



