第二次世界大戦中には、装甲の改良が進むごとに、対抗して対戦車兵器も改良されていった。それに対してウクライナでの戦争では、競争は一方的なものになっている。FPVドローンに搭載されている弾頭は基本的に4年前と変わっておらず、多くはRPG弾を転用したものだ。ドローン自体は改良されてきたものの、対戦車性能を向上させなくてはならないという切迫した必要性は生じてこなかった。操縦士は一貫して、ドローンを何機が追加投入すれば新たな脅威に対処できてきたからだ。
ほかの新技術の場合と同じように、アリーナ-Mも、相手側が何を予想すべきかわかっていない時点での最初の使用が最大の好機になる。裏を返せば、これまでの防護手段と同様に、FPVドローンの操縦士はこのAPSに関しても、すぐに弱点を見つけ出す可能性があるということだ。
もし、第二次世界大戦時の装甲が小口径砲から戦車を防護したのと同じように、APSがFPVドローンへの耐性を戦車に付与するようになったとしても、FPVドローンの開発者たちは迅速にドローンを適応させると見込まれる。APSを突破するには、デコイ(おとり)機の活用やレーダー妨害、ステルス化など、低コストの方策がいくつか簡単に思い浮かぶ。FPVドローンについてわたしたちが知っていることのひとつは、それが新たな形態にすぐに進化し得るということだ。光ファイバードローンや水陸両用ドローンはほんの一例だ。APSと違い、FPVドローンは巨額の研究開発費を必要とせず、新たな技術の開発から前線への配備まで数週間しかかからないこともある。
アリーナ-Mはと言えば、開発に何年もかかり、「ドローン耐性」を備えたバージョンを戦場に投入するまでにさらに4年を要した。アリーナ-Mの価格は明らかになっていないものの、比較対象となるイスラエル製トロフィーは、車両1両に搭載するのに約50万~100万ドル(約8000万〜1億6000万円)かかるとされる。数千ドル相当のFPVドローンを追加で何機が制止するためのコストとしてはかなり高い。
一方、ドローン側は新たなシステムによって、操縦士1人が複数のドローンを連続して運用できるようになってきている。たんに一回に1機のFPVドローンを操縦するのではなく、ドローンを次から次に送り込むことができるのだ。たとえば、ウクライナの「パシカ」(ウクライナ語で「ミツバチの巣箱」の意)や「Swarmer(スウォーマー)」といったシステムはすでに運用されており、米国で開発された「Nemyx(ネミックス)」も近くウクライナで実戦デビューを果たす可能性がある。防御側が対処できる以上の戦車を攻撃側が投入し、防御を圧倒するという可能性は、1~2年後には永遠に失われているかもしれない。
これまでのところ、わたしたちが目にしたのは、FPVドローンとアクティブ防護システムの対決の第1ラウンドだけだ。ロシア側は今回の結果から学び、システムを改良し、よりうまく機能するシステムを生み出すかもしれない。あるいは、熱烈な支持者の目には戦車に残された最後にして最大の希望に映っているのかもしれないAPSも、結局、軍事博物館で亀戦車やヤマアラシ戦車の隣に飾られる運命をたどる可能性もある。


