だが、アリーナは実際にはロシア軍の戦車に装備されなかった。おそらく、コストの高さが理由だろう。他方、APSの開発を積極的に進めたのがイスラエルであり、ラファエル社が製造する「Trophy(トロフィー)」システムは「世界で唯一、実戦で運用されているアクティブ防護システム」とうたわれている。トロフィーはイスラエル国防軍(IDF)のさまざまな戦車に採用されており、RPG弾(対戦車擲弾)や誘導ミサイルの迎撃で効果をあげている。
アリーナ-Mは2024年に、小型で低速のドローンも探知できるように改良された。したがって、このシステムがウクライナの戦場に登場することはかねて広く予想されていた。
アリーナの戦闘デビューとその評価
「残念ながら、これは機能している」。ウクライナの退役軍人でドローン戦の専門家であるドミトロ・プチャタ(編集注:以前は「Kriegsforscher」のユーザー名で、海兵隊員として参加したクルスクの戦いなどについて現地から情報を発信していた)は、マヤクでの戦闘についてX(旧ツイッター)に投稿し、そう結論づけている。
あるアリーナ-Mは、攻撃してきたFPVドローン7機を連続して撃墜してしていた。また、APSを搭載した車両群は、通常の戦車よりも撃破するのが難しかったという。
「全体として、戦車1両を破壊するにはFPVドローンが15~20機必要だった」とプチャタは書いている。
一般に、FPVドローンで戦車を撃破するには何機必要か。推計にはかなりばらつきがあるが、ドイツ国防戦略研究所(GIDS)は2024年の研究で、3~6機あれば撃破を達成できるとの見解を示している。ウクライナ国家親衛隊のドローン部隊「タイフーン」の指揮官である「マイクル」も以前、筆者の取材に、通常はFPVドローン「数機」の命中が必要だと説明していた。最初の1~2機で車両を動けなくし、残りで撃破するという。
スウェーデン国防研究所(FOI)が2025年に発表した研究では、装甲車両1両を撃破するのに必要なFPVドローン数は平均4~5機と推定された。ただし、操縦士の技量が低ければ必要な機数は大幅に増える可能性があり、逆に熟練した操縦士であれば少なくなる可能性があるとFOIは指摘している。より強気の見方では、ウクライナの作戦任務部隊「スヒード(東)」(東部方面の部隊集団)のフリホリー・シャポバル報道官が2026年5月、装甲車両を破壊するには普通、「2~3機」のFPVドローンで十分だと述べている。
米シンクタンク、外交政策研究所(FPRI)のシニアフェローであるロブ・リーは、この強襲は、相手がウクライナ防衛軍の最も強力な部隊のひとつだったこともあって失敗したと解説する一方、アリーナ-Mについては成功したとの見方を示す。


