28年前には存在すらしていなかった企業が、2126年に返済期限を迎える資金を借り入れた。この100年債(センチュリーボンド)は珍しい存在であると同時に、投資家がハイパースケーラー(超大手IT企業)を「テクノロジー」ではなく「インフラ」として扱うようになった変容ぶりを如実に物語っている。
テクノロジー企業が投資家に100年間の資金調達を求めたのは、1997年のモトローラが最後だった。当時、モトローラは投資適格の格付けを得ており、市場を支配していた。その後20年足らずのうちに、破壊的技術によって同社の中核事業は形骸化し、会社は分割された(ただし、債券自体がデフォルトに陥ることはなかった)。
この歴史は心に留めておく必要がある。というのも、2026年2月にアルファベットが、それ以来初となるテクノロジー企業による100年債を発行したからだ。アルファベットが米証券取引委員会(SEC)に提出した価格決定条件書によると、55億ポンド(約1兆1800億円)の英ポンド建て債券発行の一部を構成する10億ポンド(約2150億円)のトランシェ(部分)は、表面利率が6.125%で、償還日は2126年2月13日となっている。
この債券を単なる珍事以上のものにしているのは、その価格だ。100年債の価格は関連する英国債(ギルト)に対して120ベーシスポイント上乗せで決定され、アルファベットの格付けはムーディーズが「Aa2」、S&Pグローバルが「AA+」と、最上位格付けの1段階下である。発行済みの最長期英国債が30年にとどまるなか、多くの政府でも得られない条件で、民間企業が2126年まで市場から資金を借り入れることに成功したのだ。買い手は、検索・広告事業の永続性と、同社が現在多額の資金を投じて構築しているAIインフラに賭けたのである。
なぜ100年債なのか、そしてなぜ今なのか
その仕組みは、この市場のあらゆる領域を形づくっているのと同じ圧力へと帰着する。アルファベットは巨額の拡張投資を進めており、2026年の設備投資額は1800億ドル(約28兆7000億円)から1900億ドル(約30兆3000億円)の間になる見通しで、その資金を賄うために米国市場をはるかに超えて手を広げてきた。
英国の年金・投資専門誌『Pensions Expert』の報道によると、今回のポンド建て起債により、アルファベットは実績ゼロの状態から一躍、英国における投資適格社債の最大級の発行体の一つとなった。100年という償還期間は、この取り組みにおいて特別な役割を果たす。同社が必要と想定し得る限りの長期間、固定コストで資金を確定させることができ、市場に対して、また市場について、自信を発信することにもなる。



