映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公マーティ・マクフライは、まだ世に出ていない曲「ジョニー・B.グッド」を演奏し終えたあと、戸惑い、いまひとつピンとこない様子のプロム参加者たちを見渡してこう言う。「きみたちにはまだ早かったみたいだね。でも、きみたちの子どもは気に入るはずさ」。彼は、正しい曲が、間違った聴衆に届いてしまったことを理解していた。
タイムトラベル可能なデロリアンを持たなくとも、多くのテクノロジー企業は同じような論理で動いている。優れた製品はいずれ市場に受け入れられると信じているのだ。実際にそうなることもある。しかし多くの場合、市場は目の前にある製品を認識できるようになる前に、下準備を必要とする。
エンタープライズソフトウェア営業に長年携わり、現在は無人航空機(UAV)業界に身を置くなかで、私は技術的により優れた製品が、単に顧客の理解度で勝る競合に敗れる場面を数多く目にしてきた。勝った企業は、エンジニアリングで他社を上回っていたわけではない。むしろ、そのカテゴリーが実際に何を意味するのかを何年もかけて説明してきたため、買い手がついに準備を整えたとき、その企業の言葉で会話するようになっていたのである。
市場を教育するリーダーが、ベンチマークを設定できる
新興市場においてイノベーションが不足していることはめったにない。一貫して欠けているのは、買い手側の理解である。顧客は現状のやり方に完全に満足していながら、新しいやり方を採用するとは具体的に何を意味するのか、まったく明確なイメージを持っていないこともある。多くの企業は教育をマーケティングの間接費、つまり製品出荷後に対応すべきものとして扱う。しかしとりわけ複雑なソリューションでは、教育こそが販売を可能にする条件を作り出すことが少なくない。あるプログラムを2文でCFOに説明できないオペレーション責任者は、スペックがどれほど印象的でも、それを購入することはない。
市場を教育する企業は、何が「良いもの」であるかを定義することができる。そうなれば、競合他社は自らが設定したのではない基準で評価されることになる。物事の仕組みを、その失敗する場面も含めて説明すれば、買い手はあなたを単なるサプライヤーではなく、信頼できる情報源として扱い始める。そのような地位は、後発参入者が資金力だけで手に入れようとしても、極めて困難である。
たとえば、商用ドローン飛行はかつて操縦者の目視範囲内に制限されており、それを超える運航には個別の免除が必要だった。現在、カナダは低リスクの目視外飛行(BVLOS)の定常運航を可能にする規則を導入しており、米国もBVLOSの枠組みを整備しつつある。BVLOS飛行が日常的に可能になれば、これまで空撮業務を臨時の外注サービスとして扱ってきた電力・ガスなどのインフラ企業、鉄道会社、鉱山会社、緊急サービス各社にとって、社内ドローンプログラムが経済的に理にかなうものとなる。
これらの新規ユーザーは、どのドローンが最も革新的かを尋ねているわけではない。彼らの質問はもっと基本的だ。何が、どこで合法になったのか。コンプライアンスに則った運航とは実際どのようなものか。誰がスタッフを訓練し、どのような基準で行うのか。取得したデータは、既存システムにどう取り込むのか。どのベンダーも顧客の最初の質問には答えられる。しかし先行するベンダーは、その後の質問にもすでに答えを用意している。新たな規制環境に初めて向き合う買い手にとって、ルールの明快な説明は、性能向上以上の価値を持つ。
市場を教育するための原則
製品やサービスについて顧客をうまく教育するには、いくつかの重要な原則がある。
まず自社の従業員に知識を身につけさせる
自社の人間が実務経験を持っていなければ、市場を教育するのは難しい。私たちの会社では、実際のドローンミッションを計画し、使えるデータを持ち帰った経験のある従業員は、台本には落とし込めないレベルの具体性で運航について語ることができる。そうした経験は、実際のユースケースへの理解を深め、営業担当者が技術を顧客のビジネス目標にはるかに真正性をもって結びつけることを可能にし、企業自体をも強くする。
顧客側の能力を構築する
プログラムを自ら運用し、社内で擁護できるチームを持つ顧客は、そのプログラムを拡大する可能性が高い。一方、あらゆる回答をベンダーに依存する顧客は、多くの場合パイロット段階で足踏みする。顧客の自立は収益への脅威に見えるかもしれないが、実際に成長しているアカウントを見れば、そうではないことがわかる。
これを実現するには、教育を運用機能として位置づける必要がある。上級職の誰かがオーナーシップを持ち、その成果は公開された資料の量ではなく、顧客がどれだけ前進したかで測るべきである。私の経験では、最も有用な形式は実践的なもの、たとえば顧客が自社スタッフを受講させられるトレーニングカリキュラムや、恒常的な運用への拡大基準を明確に定めた構造化されたパイロットプロジェクトである。こうしたものはキャンペーンよりも構築に時間がかかるが、それゆえに模倣されにくい。
タイミングに注意を払う
BVLOSドローン運航をめぐって今生まれつつあるような機会は、いつまでも開かれ続けるわけではない。規制枠組みが成熟すれば、最も早期に立ち上がったプログラムが、市場全体の参照事例となる。多くの場合、業界の教育を支援したベンダーがそれらの事例と関連づけられる。市場を教育するのに理想的なタイミングは、買い手がまだ質問を形作っている最中である。
もちろん、市場を教育することはイノベーションの必要性に取って代わるものではない。強力な教育を伴う弱い製品は、依然として弱い製品にすぎない。しかし新興カテゴリーでは、順序が重要だ。最終的にリードする企業は、最も多くのものを発明した企業であることは稀である。他社がまだ製品を磨き上げているあいだに、テクノロジーを理解可能なものにし、顧客の最初のプログラム構築を支援した企業こそがリーダーとなるのだ。



