がんサバイバーである私のプロフェッショナルとしての現在の使命は、末永く存続するレガシーとブランドを築くことだ。しかし、若い起業家向けのアドバイスを見聞きすると、その多くは彼らが会社の立ち上げだけにほぼ専念できることを前提としている。一部の起業家志望者には、潤沢な資金調達期間(ランウェイ)や時間的・精神的な余裕という贅沢があるかもしれないが、大半の人々の起業プロセスはそうではない。
古い格言にあるではないか。「必要は発明の母」だと。
私が自ら創設し、事業収益7400万ドル(約117億円)規模にまで育て上げた非営利団体を辞任したとき、私はがんと診断されたばかりだった。それはまた、私が最初の営利目的の社会的企業を立ち上げようとしていた時期でもあった。それから12年以上が経過した現在も、私はがんと闘い続けているが、最近になって新たな社会的企業を立ち上げた。がんの宣告を受け、タイミングとしては最悪だったが、私は行動を起こすことを決意した。いつだってそうなのだ。
「差し迫った状況」は事業開発戦略である
私は長年、社会的起業家として活動してきた。そのなかで気づいたのは、ビジネスやブランドの創出は、「野心」のペースで進むこともあれば、「必要性」のペースで進むこともあるということだ。前者の場合、起業家は資金の確保、勢い、そして有利な条件が整っていることを確認しなければならない。後者は、「今やらなければ、二度とできない」という理由で前進することだ。私は常に、後者のカテゴリーに属する起業家だった。私にとって、無駄にできる時間などない。完璧な瞬間とは、常に「今」なのだ。
私が最初の会社を設立したのは、市場の非効率性を目の当たりにしたからだ。何億足もの靴が廃棄され、埋立地に送られている一方で、発展途上国の何百万人もの人々は、それらの靴にまだ価値があるため利用できる状態にあった。要するに、何百万もの人々の暮らしがリユース経済や中古市場にかかっており、もたもたしている時間はなかったのだ。
過酷に思えるかもしれないが、がんは私に目的の明確さをもたらしてくれた。がんは、私のエネルギーを病気の診断結果以外のもの、すなわち社会の利益に不可欠だと信じるものへと向けさせてくれたのだ。周囲の目には最悪のタイミングに映ったかもしれないが、現実には、人生の多くの出来事は完璧なタイミングで訪れるわけではない。
私は、豊富なリソースを持ちながらも、同じ決定を堂々巡りさせてあまりにも多くの時間を無駄にしている起業家を何人も見てきた。彼らは資金力があるがゆえに、意思決定を保留できるという贅沢を享受しているのだと私は思う。しかし、誰もがそのような贅沢を享受できるわけではない。耐え難いほど過酷な日々であっても、創り、築き上げなければならない人々もいる。
逆境から学んだ事業開発における3つのこと
私は、会社やブランドを立ち上げて成功するために、逆境が必須条件だと言っているわけではない。しかし、逆境は集中力とレジリエンス(回復力)を研ぎ澄ます契機になり得る。起業家向けのアドバイスの多くは、「強みがある状態で事業を構築せよ」と説く。だが私の経験上、強みやタイミングだけが成功をもたらす要因ではない。もし過去の若い自分に学んだことを伝えられるなら、私は以下の3つの重要な点に焦点を当てるだろう。
1. 見栄えではなく、成長とレガシーのために構築する。私はすべての船を押し上げ、コミュニティを創り出すことを信条としている。私は洗練されたピッチ資料や記者会見、マーケティング用語などには感銘を受けない。重要なのは、実行最優先の原則によってシステムを最適化し、強固な基盤、信頼性の高いオペレーション、そしてスケール可能な勢いを確保することだ。
2. 「定着性(スティッキネス)」を意識して創る。私や私のチームが、提携を期待して組織にアプローチするとき、重視するのはコミュニティだ。私たちは1回限りの提携を求めているのではない。長期的に意味のある関係を望んでいる。そのような関係は、単に優れたインセンティブ制度だけで築かれた関係よりも長続きするものだ。
3. 個人の哲学がビジネスのバックボーンとなる。ビジネスに自分の個性を反映させずにはいられないものだ。私は「黄金律」を座右の銘として生きており、私の会社の文化もその理想に焦点を当てている。したがって、起業を考えているのであれば、自社の企業文化の手本としたい価値観や理想を選択することだ。
タイミングについて覚えておくべきこと
人生や仕事において、もっと資金が増え、健康状態が良くなり、あるいは見通しがクリアになるような「適切なタイミング」を待つのは容易なことだ。そのようにして設立される会社もたくさんある一方で、すべてが整っていない状況で誕生する会社も数多くある。こうした会社が現実のものとなるのは、リーダーたちに「機が熟す」のを待つ余裕がなかったからだ。適切なタイミングがいつまでも訪れないこともある。だからこそ、どんな状況であっても構築を始めるのだ。



