自動運転開発のウェイモ(Waymo)の車両が、ダラスで歩行者を巻き込む死亡事故に遭遇した。警察とウェイモの発表によると、歩行者がダラスのメイプル・アベニューの横断歩道のない場所を横断していたという。歩行者はSUV(制限速度時速30マイルの区域を時速35マイルで走行しており、テキサス州では珍しくない速度超過だった)にはねられ、その体は30フィート以上飛ばされて対向車線に落下した。そこを、乗客を乗せていないウェイモのロボタクシーが走行していた。
ウェイモの説明によると、同社の車両は時速24マイルで走行しており、約150フィート離れた場所で、道路の反対側に歩行者が進入したことを検知した。そして、その歩行者がウェイモの車線に向けて道路を横断しようとする可能性を予測したという。車両は横断を予測して即座に減速した。防犯カメラの映像によると、被害者の男性と同伴者は店を出たばかりで、男性が車道に足を踏み入れた直後、背後からはねられた。
歩行者は推定30フィート飛ばされ、時速5マイルまで減速していたウェイモの車両(ジャガー「I-PACE」)の左後部に衝突した。その後、ウェイモは即座に停車した(SUVも停車し、現場にとどまった)。
歩行者は路上に倒れ、通行人や救急隊による手当てを受けたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
これらの状況説明から判断すると、通常の道路交通法の基準に照らし合わせれば、ウェイモ側に過失はないとみられる。さらに、時速35マイルの車両にはねられて30フィートも飛ばされたのであれば、時速5マイルの車両との側面接触が致命傷の原因となった可能性は極めて低く、少なくとも主たる原因でないことは確かだ。
この事故は、クルーズ(Cruise)のロボタクシー事業を終焉に追い込んだ、あの悪名高い事故を即座に連想させる。当時の事故では、赤信号を無視して横断していた歩行者が人間が運転する車両にはねられ、クルーズの車両の進路に投げ出された。しかし、その後の展開は異なる。クルーズの車両は歩行者の上で停車し、その後、急いで路肩に寄せようとした際に歩行者を引きずった。しかもクルーズは、控えめに言っても不適切なコミュニケーションに終始し、報道機関や規制当局に対してその引きずりの事実を隠蔽した。これが引き金となり、カリフォルニア州自動車局(DMV)から公道走行許可を取り消され、最終的には企業としての事業停止に追い込まれた。
自車の前方に投げ出された歩行者と接触したこと自体について、クルーズに過失はなかった。今回のウェイモも同様に過失はない。しかし、その後の対応がクルーズの破滅を招いた。今回の状況において、ウェイモが何か過ちを犯した、あるいは何らかのミスを隠しているという兆候はない。もちろん、隠蔽は発覚するまで兆候が現れないのが常ではあるが、ウェイモはほとんどの質問に対して率直に応じている。路上でも、そしてコミュニケーションの面でも、クルーズの二の舞を演じたい者は誰もいない。
この事故はウェイモの車両が「関与した」3件目の死亡事故となる。事故統計を研究する人々は通常、過失の有無よりも事故への「関与」をカウントするが、ロボタクシーにおいては過失の有無に目を向ける必要がある。ロボタクシーは、過失の測定が困難であり、かつその必要性も薄い人間とは異なるからだ。
人間を超える事故回避能力
現段階において、初期のロボタクシーに対して、過失の観点から人間のドライバーよりもはるかに厳しい基準を課すのは愚かなことだろう。しかし、この分野が進化するにつれ、人間には不可能な事故回避を、ロボタクシーがその超人的なセンサーや計算能力を駆使して実現できるかどうかに注目すべきである。
FORBES | By Brad Templeton
ウェイモの調査、自社車両は他車が原因の事故回避に非常に有効と指摘
ウェイモはこの点について研究を重ね、2021年に同社の運行エリアであるアリゾナ州チャンドラーで発生した、既知のすべての死亡事故を対象としたシミュレーション結果を公表した。これらの事故には当然、人間のドライバーが関与しており、通常は少なくとも2台の車両が絡んでいた。ウェイモは、自社の自動運転システム「ウェイモ・ドライバー(Waymo Driver)」が過失のある車両を運転していた場合、また被害に遭った他方の車両を運転していた場合にどうなっていたかをシミュレートした。その結果、ウェイモが過失側の車両を運転していた場合は事故を100%回避でき、衝突された側の車両を運転していた場合でも82%の事故を回避できたという。前者は明快だ。ウェイモの車両は、人間が犯したようなミスを犯さなかった。後者は、より防衛的な運転を行い、衝突を積極的に回避したことを示している。例えば、多くのシナリオにおいて、過失のある車両が赤信号を無視して突っ込んできた場合、シミュレーション上のウェイモはこれを察知して、青信号になっても発進を控え、衝突を免れた。
いくつかの重大な事故について検証すると、車両側が事故を防止または軽減できたのではないかという疑問が生じる。これが事後になって初めて明らかになることもあれば、優れた一般的な慣行が窮地を救うように思えることもある。
今回のダラスでの死亡事故
ダラスの死亡事故の全容はまだ明らかになっていないが、ウェイモが異変を察知してブレーキをかけ始めたため、歩行者との接触は低速で行われた。理論上、優れた物理モデルがあれば、車両はブレーキをかけるべきではない、あるいは加速すべきだと判断できたかもしれない。結局のところ、時速5マイルまで減速したウェイモの車両の後部に歩行者が衝突したのだから、もし車両がもっと速い速度で走行していれば(ブレーキを全くかけないか、電気自動車の加速力で急加速していれば)、歩行者が到達する前に現場を通り過ぎていた可能性がある。対向車線に他の車両が走っていたため、ウェイモに車線を変更して避ける選択肢はなかったが、そうでなければそうした回避行動もあり得ただろう。
ただし、そのような判断を確実に行うための十分な情報がなかった可能性や、一般的にはブレーキをかけることが最も賢明な策であり、加速することはリスクが高く、それが正しい行動であるという強い確信が必要とされることは指摘しておくべきだ。しかし興味深いのは、超人的な物理予測能力を持つ車両であれば、人間には不可能な手段を講じることができる状況が存在するということだ(今回のケースに必ずしも当てはまるとは限らないが)。
例えば、ウェイモは150フィート前方で道路を横断しようとする歩行者に最初に気づいた。時速24マイルであれば、全力でブレーキをかければ、ブレーキを作動させてからわずか28フィートで停車でき、乗客も乗っていなかった。しかし、ウェイモの横や後ろには他の車両が走っており、急停車は(法的義務は満たしていても)危険を伴う可能性があった。それでも、車両が事前に深刻な危険を予測できていれば、停車することも可能だった。だが現実には、歩行者が横断歩道以外の場所を横断することは日常茶飯事である。テキサス州(および他のすべての州)では、このような状況では車両側に優先権があるが、ドライバーは「適切な配慮(due care)」を怠らず、歩行者との衝突を避けるために最善を尽くさなければならない。結果として、車両と歩行者の間でお互いの出方を探り合うような状況が生じるが、歩行者が道路の反対側に進入したからといって車両が単に急停車することや、今回のように歩行者がはねられて飛ばされてくるような事態に備えることまでは想定されていない。
衝突が非常に突発的であったため、ウェイモには時間がほとんどなく、これから起こることに関する情報も極めて限られていたとみられる。歩行者がSUVに背を向けていることを認識していれば、超人的なコンピューターは衝突を予測できたかもしれないが、特に夜間にそれを判断するのは容易ではない(歩行者が車道に一歩踏み出したものの、近づいてくる車に気づいて引き返すことはよくあるが、今回の被害者のように、歩行者が重大な誤判断をしてしまうこともある)。
したがって、私の初期の結論としては、最初のSUVによる衝突をかなり前に高い信頼性で予測する能力が抜群に優れていない限り、このウェイモと歩行者の接触を回避するために、ウェイモが確実に実行できた対策はほとんど存在しないということになる。歩行者がウェイモの車線に放り出された後では、加速するという決断は安全でも効果的でもなかっただろう。
ウェイモはおそらく、この状況を自社のシミュレーションシナリオに追加し、何かできることがあったか、あるいはこのような状況を改善する他の方法がないかを検証するだろう。ウェイモはまだこれを行っていないが、事故からわずか2日しか経っていない。ロボタクシーが関与するあらゆる事故は、それが悲劇的なものであっても、改善への好機となる。
クルーズの引きずり事故
クルーズは、最初の衝突については過失がなかった。過失は信号を無視して横断していた歩行者にあり、さらに言えば当て逃げをした人間のドライバーにあった。しかし、クルーズは横断歩道上で不審な動きをしていた歩行者に気づくことができた可能性がある。報道によると、その女性はクルーズの車線と日産の車線を横切り、対向車線に入ろうとしたが、対向車を恐れて引き返したという。これは「乱横断(jaywalking)」の際によくある行動だ。歩行者が規則に違反して道路を横断しようとするたびに車両がブレーキをかけるわけにはいかないが、システムが前方に危険な状況が発生していることを察知していれば賢明だっただろう。青信号になったからといって、停止線から急加速する必要はなかった。特に、その車両には乗客がおらず、信号待ちで後ろに他の車両もいなかったのだから、通常よりも慎重に対応できたはずだ。
もしそうしていれば、日産車は依然として歩行者をはねてクルーズの車線に投げ出していただろうが、クルーズは彼女に衝突する前に停車できたはずであり、当然ながら彼女を引きずることもなかった。彼女の怪我のうち、どこまでが日産車によるもので、どこからがクルーズの車両およびその後の引きずりによるものだったのかは明らかにされていない。彼女の名前や詳細は公表されず、クルーズは巨額と報じられる和解金を支払った。
ウェイモとモーターサイクルの追突事故
あるウェイモの車両が、私道に右折して進入するために減速していた。私道に歩行者がいたため、さらに大幅に減速せざるを得なかった。後方のモーターサイクル(オートバイ)が時間内に停車できず(公式には車間距離の不保持)、ウェイモに追突した。その後、ライダーは隣の車線に投げ出され、そこでまたしても当て逃げ車両にはねられて死亡した。このケースでも、ウェイモに法的な過失はない。
その一方で、この状況でのウェイモには明白な選択肢があった。後方のモーターサイクルが車間距離を十分に空けずに追従しており、停車しようとしていないことを察知した時点で、私道への右折を中止し、電気自動車の加速力を活かして加速すればよかったのだ。そうしていれば、おそらく事故全体が未然に防がれ、ウェイモは乗客を乗せるために駐車場に入るべく、遠回りをするだけで済んだはずだ。人間は常に後方に目を配り、後ろを走る道路利用者の行動を予測しているわけではないが、ロボットならそれが可能である。
これらの事故のすべてにおいて、車両に乗客が乗っていなかった(空車だった)点は注目に値する。これは好機を生むと同時に、課題をもたらす。空車の車両であれば、乗客を不快にさせたり怪我をさせたりする心配がないため、急ブレーキ、急加速、急ハンドルを自由に行うことができる。また、周囲に他の車がいない車両にも、より多くの自由度がある。しかし、乗客の存在やその他の状況のために車両がこうした回避行動をとれない場合に、疑問が生じる。車両が空車である場合、あるいは後方に車がいない場合に、より慎重な運転をさせることは常に可能だった。だが、その結果として、例えば配車を待つ乗客へのサービス提供が容認できないほど遅くなる可能性がある。また、「なぜ前方の危険な状況に対して徐行しなかったのか」という問いに対し、「後続車の邪魔をしたくなかったからだ」と答えるわけにはいかない。どこで線を引くかは難しく、法廷ではその線を誤って引いたケースのみが考慮される。こうした懸念が、開発者たちに状況をシンプルに保たせ、これらの要因に基づいて行動を変更しないようにさせる原因になるかもしれない。



