LLM(大規模言語モデル)に途方もない価値があることは疑いようがない。その一方で、かつてインターネットなど普及するはずがないと言っていたたぐいの人たちが、今度はAIをこき下ろしている。生産性は急上昇しうるし、AIを活かせるように業務プロセスを組み替えられる新しい世代の企業では、実際に急上昇するだろう。それができずに後れを取った企業は淘汰される。
AIには堀がなく、だからビジネスモデルが破綻していると考える人たちは、あることを見落としている。
アクセスは、間もなく万人に開かれたものではなくなる。
利用の機会を失う人は、これから増えていく。私たちは、ネット上のサービスに無料でアクセスできることに慣れきっている。その無料アクセスが少しずつ取り上げられていることには誰もが気づいているが、AIではこの流れが極端に加速する。
最初のうち、その機会を奪うのは、有料の上位サービスと、あっという間に極めて高額な価格設定だ。ほどなく、特定のモデルを使うにはKYC(Know Your Customer。金融機関などが行う顧客の本人確認手続き)が必要になる。そして最終的には、一定以上の性能を持つAIモデルを使うこと自体に、免許と認定が要るようになる。
免許がなければ飛行機は操縦できないし、車も運転できない。それなら、政府機関に侵入できるほどのAIを、政府発行の顔写真付き身分証明書もなしに使えてよいはずがないだろう。
最先端のモデルは、これからも必ず大きくなり、性能が上がり、強力になり、価値が高まり、そして危険になっていく。したたかな相手にそれを丸ごと盗まれるのを防ぐいちばん簡単な方法は、顧客を行列に並ばせ、自社が決めた条件のもとで独自の付加価値を提供することだ。
そう、ここでまたロレックスに戻ってくる。
機能は段階ごとに切り分けられ、アクセスは管理され、知的財産は守られる。見よ、そこに堀がある。
もちろんAIは武器でもある。どんな武器でも一定の威力を超えれば同じことだが、最も強力なモデルを使う特権は、おそらく政府だけに与えられることになるだろう。
私たちが運転できるのは自動車であって、戦車ではない。
これはAIのビジネスモデルを窮屈にしたり、制約したりするだろうか。
しない。
AnthropicやOpenAIは1兆ドル(約159兆円)の価値になるだろうか。
なる。
AIの世界に、あなたや、あなたの会社や、あなたの国が収まる二番手の座はあるだろうか。
ない。
需要に限りはあるだろうか。
ない。
供給に限りはあるだろうか。
ある。
こうしたイエスかノーかの命題を積み上げて結論を導くよりも、AIの未来の規模を測る、もっと簡単な方法がある。形まではわからないにせよ、規模なら測れる。
世界で最も成功している億万長者の起業家たちが、そろってAIに全額を賭けているのなら、それは今後の展開について、ただの示唆以上のものを語っている。
ロレックスがあれほど深く広い堀をつくり上げられるのなら、AIにできないはずがない。


