多くの消費者にとって、エクスペディア(Expedia)は航空券やホテル、パッケージツアーを予約する場所として最もよく知られている。しかし、その消費者向けビジネスの裏側で、エクスペディア・グループは、他社の旅行販売を支援するための大規模で、かつ重要性を増しつつあるB2B事業を築き上げてきた。
エクスペディア・グループの幹部であるアルフォンソ・パレデスは、その狙いを簡潔にこう説明する。ほぼすべての企業が旅行販売業者になれるよう、テクノロジー、インベントリ(在庫)、サービス機能を提供することだ。
「旅行を販売したいあらゆる企業にとっての、ワンストップショップになりたいと考えている」とパレデスは最近のインタビューで語った。「自社の名前とブランドを掲げてもらえば、私たちがテクノロジーとサプライ(旅行商品)を提供する」
旅行が従来のオンライン旅行代理店(OTA)の枠組みを超えて広がるなか、この戦略の重要性は高まっている。航空会社、金融機関、小売業者、ロイヤルティプログラム、消費者向けプラットフォームなどは、自社のエコシステムに旅行を組み込むことをますます望むようになっている。エクスペディア・グループにとってのチャンスは、消費者向けブランドの規模と専門性の恩恵を受けながら、そうした体験を支えることにある。
エクスペディア・グループの規模をB2B成長エンジンに変える
エクスペディア・グループのB2B事業は、満たされていないニーズを起点にした比較的小さな部門として始まった。多くの企業が旅行サービスを提供したいと考えていたものの、それを適切に行うために必要なインベントリ、テクノロジー、サービスインフラを持っていなかったのだ。
エクスペディア・グループB2Bは、Expedia.comやHotels.com、Vrbo(バーボ)、さらにはグループ全体の広範なエコシステムで培われた機能へのアクセスを提供することで、そのギャップを埋められた。時が経つにつれ、この関係はより互恵的なものへと進化している。消費者向けブランドがB2B事業にインベントリと専門知識を提供する一方で、数千ものパートナーから得られた知見が、エクスペディアの消費者向け体験の向上に役立っている。
パレデスはこれを、B2B事業と消費者向け事業が互いに補強し合う「フライホイール(弾み車)」と呼んでいる。
そのフライホイールを支える規模は極めて大きい。パレデスによると、エクスペディア・グループB2Bは約7万5000社のパートナー、20万人の旅行アドバイザーと提携しており、約300万軒の宿泊施設と500社の航空会社にアクセスできるという。
次の成長ステージは、宿泊施設以外の領域への拡大だ。エクスペディア・グループB2Bは、航空券、レンタカー、アクティビティ、各種チケットをB2Bプラットフォームに追加し、パートナー企業がつながりのある旅を創造するために必要な要素をより多く提供しようとしている。
Uberとの提携が重要な理由
同社とUber(ウーバー)との関係は、旅行と日常的な消費者向けプラットフォームとの境界線が次第に曖昧になりつつあることを示している。
この提携は双方向に機能する。エクスペディアの顧客は旅の一部としてUberによる移動手段を利用でき、Uberは自社のエコシステム内で宿泊施設を提供するために、エクスペディア・グループのテクノロジーとホテルインベントリを活用できる。
Uberにとってホテルは、配車、フードデリバリー、日用品配送などとすでに結びついているアプリ内で、提供できるサービスの幅を広げるものだ。エクスペディア・グループB2Bにとっては、Uberが新たな販売チャネルとなり、地上交通と旅の残りの部分をつなぐ役割を果たすことになる。
Uberを通じてホテルを予約した消費者は「Uber One」の特典を獲得することもできるため、旅行の枠を超えたロイヤルティプログラムの価値が生まれる。ホテル滞在で得た特典は、配車やデリバリー、その他のUberサービスにおける将来的な支出に影響を与える可能性がある。
「顧客に提供したい要素を追加するアプリがますます増えている」とパレデスは述べた。「今では当社のテクノロジーをUberと組み合わせることで、Uberのアプリ内でホテルを予約できるようになっている」
ここから得られるより大きな教訓は、旅行が必ずしもOTAや航空会社のウェブサイトから始まる必要はないということだ。すでに消費者が関係を構築し、決済情報を登録し、ロイヤルティプログラムを利用している場所であれば、どこからでも旅行を始めることができる。エクスペディア・グループB2Bの役割は、そうした体験の背後にあるインフラを提供することだ。
AIが旅行の発見をより迅速、パーソナルにする
生成AIもまた、消費者が旅行を計画する方法を変えつつある。目的地を迅速に比較し、複雑な旅程を整理し、従来の検索プロセスでは旅行者が発見できなかったようなアイデアを提示することができる。
パレデス自身、息子とともにスポーツ観戦を中心とした旅行を計画するなかで、その効果を身をもって体験した。7つの都市を巡り、複数の試合を観戦し、約14本のフライトを利用し、天候も変化するという過密な旅程だったが、AIが情報を集約し、確認メールを管理し、旅の整理をサポートしてくれたという。
「AIが私にもたらしてくれるのはスピードだ」と彼は語る。「これまで到達できると思わなかった領域に到達させてくれるし、旅行計画において非常に役立つ」
だからといって、AIがすぐにOTAに取って代わるわけではない。旅行の実行・履行プロセス(フルフィルメント)は、単に目的地やおすすめのホテルをリストアップするよりも複雑だ。プラットフォームは、決済、スケジュールの変更、キャンセル、カスタマーサービス、および相互に関連する複数の予約を処理しなければならない。
エクスペディア・グループにとってのチャンスは、AIの対話力や予測力と、実績ある旅行プラットフォームが持つ信頼性や運用能力を組み合わせる点にある。AIは発見をより直感的なものにし、旅程作成にかかる時間を短縮し、旅行者が詳細を管理するのを支援する。そしてエクスペディア・グループが、ひらめきを実際の旅へと変えるために必要なインベントリ、予約、およびサービスインフラを提供するのだ。
「人々は今後もエクスペディアで予約を続けると思う」とパレデスは言う。「AIがより多くの知識とスピードをもたらすため、検索方法は変わりつつある。しかし、単に予約を取るだけではない。その後のサービス提供も重要なのだ」
エクスペディア・グループは、B2BツールにもAIを取り入れている。パレデスによると、同社はパートナーがより迅速に旅行販売を開始できるよう、モジュール化されたAIコンポーネントを開発している。同社のRapid APIフレームワークは、ホテル、航空券、レンタカー、アクティビティへと拡張されており、企業は自社の顧客体験に最適な機能を選択できるようになっている。
スポーツツーリズムが高付加価値な旅行需要を生む
スポーツツーリズムは、これらすべての要素をつなぐことがなぜ重要なのかを明確に示している。
ファンはしばしば、まずイベントを決定し、それを軸に旅の残りの部分を組み立てる。チケットを確保すれば、フライト、ホテル、レンタカー、アクティビティ、現地での移動手段が必要になる。参加したいという感情的なコミットメントは、裁量的なレジャー旅行を検討する消費者に比べて、彼らを粘り強い旅行者にする可能性もある。
パレデスによれば、スポーツ関連の旅行は世界の旅行市場の約10%を占める。また、エクスペディア・グループのスポーツツーリズムに関する調査では、スポーツファンは1回の旅行で最低でも約1500ドル(約23万円)を支出する、高付加価値な需要層であることがわかっている。
「自分の応援するチームが勝ったからといって、そのまま家に帰るわけではない」とパレデスは語る。「彼らは何度もリピートするのだ」
経済的インパクトはスタジアムの枠を越えて広がる。主要なイベントは、ファンに対して、そうでなければ訪れることのなかった地域、レストラン、ホテル、目的地を知るきっかけを与える。パレデスは、自身がワールドカップ観戦のために旅行したことで、息子にアトランタやボストン、ケープコッドなどの都市を見せることができたと振り返る。
旅行プラットフォームにとって、イベントのチケットは利益の主たる源泉というよりも、起爆剤と言える。より大きなチャンスは、イベントに宿泊施設、航空券、レンタカー、現地体験を付帯させることから生まれる。パレデスが認めるように、航空券を単体で販売するだけでは大きな利益は生まれないかもしれない。そこに旅の他の要素が結びつくことで、ビジネスモデルとして格段に魅力的なものになるのだ。
未来のOTAはあらゆる場所に存在する
エクスペディア・グループが提示する新たなモデルは、未来のOTAが「すべての旅行者を一つのウェブサイトに呼び込むこと」ではなく、「旅行の動機が生まれるあらゆる場所に自社の機能を提供すること」へと移行していくことを示唆している。
それは、Uberの顧客がホテルを予約することかもしれないし、スポーツファンが複数の都市を巡るワールドカップの旅程を組むことかもしれない。あるいは、ロイヤルティプログラムの会員が特典を旅行に交換することかもしれない。AIが発見と計画を簡素化し、エクスペディア・グループのテクノロジーがインベントリ、フルフィルメント、およびサービスを提供することで、一連の体験を完結させる。
勝者となる旅行プラットフォームは、単に消費者がフライトや部屋を見つけるのを手助けするだけではない。旅の断片化された多くの要素を互いにつなぎ合わせ、その接続の背後にある複雑さを、ほとんど目に見えないものにするだろう。



