無敵バイアスの職場での表れ方
フォレスター・リサーチもB2Bマーケティングの分野で同様の傾向を確認している。回答者の82%は現在人間が行っているマーケティング業務がAIによって自動化されると考えていた一方で、自分の仕事の大部分がAIに取って代わられると考えていた人の割合は15%にとどまった。業界全体として変革の到来を予見しているにもかかわらず、その業界に属するほぼすべての人が自分の仕事だけはなぜかその影響をさほど受けないと思い込んでいる。
この矛盾が社内で指摘されることはほぼない。経営陣はAI戦略を策定して取締役会で提示し、予算をつけることができる一方で、実際にその戦略を実行する従業員の大半は内心、その戦略は他の人の役割に関わることだと思っているからだ。
この点を見落としやすいのは部分的に多くの仕事が一気に変わるわけではないからだ。AIが月曜の朝からあなたの役割全体を変えることはほぼない。まずは業務の一部を引き受ける。以前よりも速く報告書の下書きができたり、以前は何時間もかかっていた調査が数分で終わったりすることに気づくかもしれない。それぞれの変化は些細なものに見えるため、自分の仕事は基本的に変わっていないと結論づけがちだ。だがやがてそうした小さな変化が積み重なり、はるかに大きな変化になることがある。
また、AIについては、個々の仕事ではなく数百万単位の雇用や業界全体という観点から語られる傾向にある。そのため、一般的に変化は巨大なものに感じられ、自分から奇妙なほど遠いところで起こっているものに感じられる。統計を完全に信じていても、自分の席に座って自分の仕事をこなしている時には、自分だけは統計が本来想定していなかった例外のように感じられる。
無敵バイアスと好奇心の関係
私はこれを自信の問題であると同時に好奇心の問題でもあると考えている。本当の好奇心とは自分が答えを知らない問いを投げかけ、どのような答えが返ってきても受け入れる姿勢を保つことだ。無敵バイアスはその段階を飛ばしてしまう。無敵バイアスがあると、自身に問いを向けることなくリスクについて理解しているような錯覚に陥ってしまう。そのため、自分がどれほど影響を受けるかを検討しなくても「AIについて考えた」という安心感を得られる。
真に好奇心のある人は、自分の雇用の安定性についても検証する価値のある他の主張と同様に、安易な推測で済ませるのではなく証拠を探そうとする。大半の人がこの点において同じ基準を適用することはめったにない。おそらく、この問題については、仕事上の他の決定に適用するのと同じ厳格さで検討するには、あまりにも個人的な問題だと感じられるからだろう。


