これまで筆者は東京を中心に、この10年で急速に増殖した「ガチ中華」の店を訪ね歩いてきた。
その後、SNSを通じて情報を共有してくれた関西在住の人たちが「ディープチャイナ関西支部(仮称)」を結成したことから、彼らの案内で大阪や京都、神戸を歩き、関西のガチ中華事情を少しずつ理解するようになった。
そして、7月下旬、ついに名古屋在住の人たちが始めた「名古屋栄ガチ中華の会」に招待され、首都圏、関西圏に次ぐ第3のガチ中華出現エリアを、会員の人たちと一緒に街歩きすることになった。今回はそのときの話を紹介したい。
名古屋でもガチ中華を盛り上げたい
まず名古屋の歓楽街として知られる中区新栄にある中国の延辺朝鮮料理店「延辺館」に午後4時集合。その日の名古屋市中心部は灼熱の暑さでヒートアイランド化していたが、同店の周辺に密集している20数軒のガチ中華の世界を、みなさんと一緒に汗をぬぐいながら訪ね歩いた。
筆者は名古屋のガチ中華エリアを訪ねるのは初めてだった。実際にそれらの店の多くを訪ねていたのが名古屋栄ガチ中華の会の代表幹事のSさんで、彼女に具体的な店を紹介していただきながらの、楽しい街歩きとなった。
名古屋出身のSさんは、上海万博が開催された2010年から7年間、上海の日系飲食店で働いていた。それは中国のデジタル経済が急速に発展した時期で、筆者がこれまで何度も書いたように、日本に先んじてフードデリバリー が普及し、とりわけ上海には中国で最も先進的な飲食シーンが次々に生まれていた。
今日、日本に出現しているガチ中華のバラエティ豊かなシーンの数々は、この時期の上海のビジネスモデルがそのまま持ち込まれていることが多い。
Sさんは名古屋栄ガチ中華の会を始めた経緯についてこう話す。
「上海にいた当時、私はマーラータンが大好きで、よく出かけました。串焼きなど、ローカルな店もそうですし、鶏鍋や四川料理、湖南料理のレストランにもよく行ったものです。
帰国してから、同じ名古屋出身で、上海万博の頃から知っている友人たちと、ガチ中華の魅力を伝える会をつくりたい、その頃すでに東京ディープチャイナ研究会の存在を知っていたので名古屋でもガチ中華を盛り上げたいと話しました。
なぜなら私たちが中国で食べたおいしい料理を多くの人に知ってもらいたいと思ったからです。中国人経営の店に行くのはハードルが高いと考える人もいるので、まず一歩踏み出し、それを知るという体験を一緒に共有できたら、そういう思いで会を発足しました。2023年のことです」
筆者は名古屋訪問の前に、あらかじめGoogle Mapで栄周辺のガチ中華を下調べしていた。そこにはいくつかの店が点在していたが、今回初めて訪ねて知ったのは、密集しているのは、栄と新栄を東西に分ける空港線(国道41号)沿いとその通りの東側にある歓楽街の周縁エリアだった。
こうした出店状況は、大阪でもともと出店数の多かった難波よりも、コロナ禍以降、この大阪随一の繁華街から少し外れた堺筋の東側の島之内に店が増えているのと似ている印象があった。
前述のSさんは、名古屋のガチ中華の現状についてこう説明する。
「名古屋のガチ中華は、東北料理を掲げている店が多く、オーナーも東北出身の方が多いです。だからと言って、東北料理とは限らない、中国のさまざまな地方料理のメニューもあります。特に四川料理のメニューがある店が多いです。
関東や関西に比べたら店舗は少ないですが、珍しい地方料理の店がもっと増えてほしい。個人的には、中国各地のご当地麺の店が増えたらいいと思っています」



